西沢利明の俳優ノート

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2009-03-13 11:55:55 | Weblog
凍えて死にそうになりながらも、

舌を抜かれた雀を探し歩くお爺さん。

胸中に眠っていた何かが

初めて頭をもたげたのだと、作者太宰は云う。

それが何であるかわからないと云う。

目には見えない、言葉で云い表せない何か。

僕の好きなオルビーの主人公も

胸中にある何かが、フウーッと頭をもたげて劇的な結末を迎える。

本人にもわからない、この“何か”。

しかし演じ手は、わからないことをわかっていなければならない。

『始めに言葉があった――この言葉に命があった――』

と、ヨハネによる福音書に記されているが

どうだろうか?

始めにあったのは言葉ではなく、言葉にならない何かだったのでは‥‥。

オルビーは主人公に云わせている。

誤解ばっかりしあっている人間が

なぜ、“愛 なんて言葉を発明してしまったのか?”と。

『舌切り雀』のお爺さんとお婆さんも、
誤解だらけの上にかろうじて成り立っている

危うい、きれ易い絆で結ばれてた夫婦なのだろう。