WaterMind PC Blog

PCとネットワークに関するニュースコラム.

フリーのファイル復元ソフト「PC INSPECTOR File Recovery」試用レポート

2005-08-30 22:52:53 | ソフト

 ハードディスクに余裕のないPCユーザーの場合,不要なファイルは,DELETEキー等の操作による「通常の削除(注:削除対象ファイルを「ゴミ箱」フォルダへの移動)」ではなく,Shiftキー+DELETEキー等の操作により「完全削除」を行うことが多いだろう.もちろん「完全削除」を行った場合,即座にファイルは削除され,その分ハードディスクの空き容量は増えるが,その削除したファイルを復元することはかなり難しくなる.完全削除作業には,常にこの種の危険が伴うわけだが,人的操作ミス,あるいは,PCのハード的ソフト的不具合により,必要なファイルが完全削除されてしまう可能性は0ではない.もちろんこのような,ファイル喪失のトラブルを避けるために,日頃から重要なファイルのバックアップを行うのは,PC運用の基本中の基本だ.しかしどうしても,完全削除した,あるいは,完全削除されてしまったファイルが必要になった場合は,いわゆる「ファイル復元ソフト」を使用することになるだろう.

 現在発売されているファイル復元ソフトの代表格としては…

の3つが上げられる.

 この3つには,それぞれ特徴があり,また復元対象に関しても,得手不得手があるようだ.例えば,FinalDataはフラグメンテーションの進んでしまったファイルの復元が得意であるとか,R-Studio データレスキュー完全復元 PROでは,フォルダのツリー構造の復元率が高い等だ.また,復元にかかる時間も,ソフトによって異なるようだ.

 このように,それぞれのファイル復元ソフトに個性があるため,復元対象ファイル・ドライブの削除状態・破損状態によって,ベストの復元ソフトが異なるのが実情だ.復元作業を行う者としては,できることなら複数種の復元ソフトを使用して,その中でも最も適した復元ソフトを選択し,その復元ソフトによって作業を行いたいところだろう.しかし,この手のソフトは定価が1万円以上する場合が多く,個人ユーザーの場合,複数種のファイル復元ソフトを常備しておくのは難しい.

 復元作業を行わなければならない場合,このような理由により,本来ならばどのファイル復元ソフトを購入すべきか迷うところだが,ありがたいことに,ファイル復元ソフトには「無料お試し版」が提供されている場合がある.これら「無料お試し版」は,復元能力自体はないものが多いが,復元可能なファイルのリストを表示してくれるため,購入前にそのソフトによる復元可能性について評価することができる.

 このため,復元作業を行う場合,復元ソフトの購入前に,まずいくつかの「無料お試し版」で復元可能性をチェックし,その中でベストの復元ソフトを購入するのが,「失敗のないファイル復元ソフト選び」と言うことになるだろう.ただし,場合によっては,このようなソフト選択作業を行い,さらに購入料金を支払わなくても,無料でファイル復元が可能な場合がある.なぜかと言えば,この世の中には,無料のファイル復元ソフトが存在するからだ.

 「PC INSPECTOR File Recovery4.0」は,無償ファイル復元ソフトの代表的存在だ.ダウンロードはこちら.日本語化パッチはこちら.ちなみに日本語化パッチを当てなくても,復元可能なファイル名リストやフォルダ名は日本語で表示される.今回の試用においては,日本語化パッチは使用していない.

 「PC INSPECTOR File Recovery4.0」の特徴の一つが,幅広いOS対応だ.Windows95からWindowsXPまで,ほとんどのWindows OSに対応しているため,かなり古いPCでも使用出来る可能性がある.復元対象のファイルシステムとしては,FAT12/16/32及びNTFSが含まれる.Linux系のファイルシステムは含まれていない.

 「PC INSPECTOR File Recovery4.0」による「完全削除したファイルの復元」は,簡単な操作で行うことができる.

  1. 「Logical Drives」から,復元対象ファイルの含まれるドライブをクリック
  2. れ点ボタンをクリック.簡易スキャンが始まる.
  3. 表示されたフォルダツリーの「Deleted」フォルダを「+」をクリックし,展開する
  4. 完全削除されたファイルの含まれるフォルダが表示されるので,復元したいファイルの含まれるフォルダをクリック
  5. 選択したフォルダ内で復元可能なファイルがリスト表示されるので,復元するファイルを選択する(複数選択可).
  6. 選択した項目を右クリックして,メニューを表示する.左側にある「保存」タブをクリックしてもよい.その場合は,8へ.
  7. 「Save to...(保存)」をクリックする
  8. 復元したファイルを保存するフォルダをクリックする(復元対象ファイルの含まれるドライブ以外を強く推奨).
  9. れ点ボタンをクリックし,復元ファイルを開始

と言った具合だ.難しい指定は何もないが,復元するファイルが巨大な場合は,復元したファイルを保存する場所として,空き容量の大きなドライブが別途必要になるかもしれない.

 なお上記の方法で発見できないファイルを検索・復元するために,いわゆる「クラスタ・スキャン(セクタ・スキャン)」も行える.この場合は,セクタ範囲(注:開始セクタ番号と終了セクタ番号)とファイル名(注:ワイルドカード可)を指定して,スキャンを行うことになる.今回の試用ではクラスタ・スキャン行わなかったが,当然の事ながら,上記の簡易スキャンよりも,かなりの時間がスキャンにかかるものと思われる.

 今回の試用では,1つのフォルダに存在した,完全削除された37個のビデオ・ファイルの復元(ファイルサイズ:平均1GB)を行ってみた.ファイルシステムはNTFS.ちなみにこのフォルダの含まれていたドライブは,ビデオ・ファイル保存専用となっており,プログラムファイル・ログファイル・設定ファイル,スワップファイルも存在しない.おそらくフラグメンテーションもそれほど進んでいなかったと思われる.また削除直後から,このドライブのファイルは,一切操作されていない.

 この37個のファイルに対して,上記の操作で復元を行った.結果的には,27個のファイルを完全に復元することができた.復元できなかった内,5個はスキャン時に既にファイルサイズ0となっていた.残りの4個は,ファイルサイズはオリジナルと一致していたようだが,復元時にはサイズ0のファイルが作成された.残りの1個は,ほぼ元通りのサイズのファイルが作成されたが,ファイルが崩れていて,使用出来なかった.なお,原因は不明だが,作業終了後,「閉じる」ボタンや「Exit」メニューによって,ソフトを終了させることができない場合があった.

 このように,「PC INSPECTOR File Recovery4.0」は,フリーソフトながらも,完全削除したファイルの復元については,まずまずの性能を発揮した.「ファイルの重要性は低いものの,できることなら無料で復元したい」というユーザーにとっては,まず試してみるべき復元ソフトと言えるだろう.ただし,今回はクラスタ・スキャンの実力については試していない.完全削除の場合は,FATMFTといったファイル管理情報に手がかりが残っているので,復元は比較的容易なはずだ.しかしそれらのファイル管理情報が破損している場合,ハードディスクを細かくスキャンして,元のファイル構造を調査し,復元する必要がある.いわゆるクラスタ・スキャンを行う必要があるわけだが,有料のファイル復元ソフトは,この部分にかなりの力を入れているようだ.今後,機会があれば,「PC INSPECTOR File Recovery4.0」のクラスタ・スキャンについても,レポートしてみたい.


参考リンク: