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自分の自分による自分のためのブログ。
だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

何の罪もない人々が虐殺される悲劇が痛ましい『アイダよ、何処へ?』

2021年10月03日 21時12分49秒 | 映画


【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:73/202
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ヒューマンドラマ
事実ベース
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争
スレブレニツァの虐殺

【あらすじ】
ボスニア紛争末期の1995年7月11日、
ボスニア東部の街スレブレニツァがセルビア人勢力の侵攻によって陥落。
避難場所を求める2万人の市民が、
町の外れにある国連施設に殺到した。

国連保護軍の通訳として働くアイダ(ヤスナ・ジュリチッチ)は、
夫と2人の息子を強引に施設内に招き入れるが、
町を支配したムラディッチ将軍(ボリス・イサコヴィッチ)率いるセルビア人勢力は、
国連軍との合意を一方的に破り、
避難民の“移送”とおぞましい処刑を開始する。

愛する家族と同胞たちの命を守るため、
アイダはあらゆる手を尽くそうと施設の内外を奔走するが――。

【感想】
これは辛い映画だった。。。
主人公がこれでもかってぐらい
絶望の底に陥れられるから。。。

第二次世界大戦後のヨーロッパにおいて
最悪の紛争とされているボスニア・ヘルツェゴビナ紛争。
セルビア人による武力行使により、
街を出ていかざるを得なくなった市民たち。
その数およそ2万人。
しかし、国連施設には4,000~5,000人ほどしか入れず、
それ以外はずっと外で待機。
その間、食料もトイレもない。
後ろでは、いつセルビア人が襲ってくるかもわからない。

そんな状況の中、
通訳者のアイダは事態を解決しようと奔走するが、
国連軍は大して役に立たず、
国連本部からの支援もなし。
絶体絶命に近い状況だった。
一時、交渉という名の一方的な決定事項を
セルビア人勢力から提示されるも、
その内容すらも破られ、
国連軍側もお手上げ状態だったのだ。

この映画では、とにかくアイダというキャラクターそのものが一番の注目ポイント。
自分の家族だけでも救おうと、
鬼気迫る表情となりふり構わない行動力で、
できることすべてを絞り出すようにやっていく姿は、
頼もしい反面、
ものすごく煙たがられそうだから。
それだけ家族を愛し、
自分の命よりも彼らを救いたい
という気持ちが強かったことの表れだけど。

結局、避難民の多くは
「セルビア軍が管轄する安全な場所へ移動」させられる。
身の安全を謳ってはいたものの、
実際にそこで待ち受けていたのは、
目も当てられないほどの悲劇だった。
アイダのあらゆる行動が一切報われない惨さは、
今年観た映画の中でも一番の衝撃だ。

ネットでざっと調べた程度だけど、
実際にこの紛争では"民族浄化"という行為が行われていたとのこと。
これは、多民族国家において特定の民族を排除することを指す。
対象を虐殺、強姦、強制収容などで、
その地域から退去せざるを得ない状況に追いやるようだ。

特に女性の扱いはひどく、
強姦を繰り返され、
妊娠中絶が不可能になってから
解放されることもあったそう。
特定の民族を"血"から根絶させたり、
異民族の子を妊娠・出産させることで
屈辱を与えたりっていう理由からだろうか。。。
今同じことが行われている地域もあるんだろう。
考えただけでも心が痛む。

このボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を扱った映画は、
ウィキペディアで調べたところ、
本作を含めて25作品もあった。
それだけ、映画化してこの紛争の惨さを伝えたい
と思う人が多かったということだろう。
機会があったらすべて観てみたい。

映画『アイダよ、何処へ?』公式サイト

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映画『アイダよ、何処へ?』公式サイト

 

スタントマンなしの三船敏郎のアクションに“世界のミフネ”を感じた『隠し砦の三悪人』

2021年10月03日 19時51分08秒 | 映画


【個人的な評価】
「午前十時の映画祭11」で面白かった順位:9/15
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
アクション
時代劇
黒澤明
三船敏郎

【あらすじ】
百姓の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)は、
褒賞目当てに戦に参加するが、
敵の捕虜になってしまう。

夜、暴動に紛れて脱走した2人は、
逃げ延びた谷で薪の中に隠された大量の金の延べ棒を発見する。
そこに現れたのは敗国・秋月家の侍大将、真壁六郎太(三船敏郎)。
金の延べ棒は秋月家再興のための軍用金だったのだ。

太平と又七は、
六郎太、そして世継ぎの雪姫(上原美佐)と共に、
敵国内を横断する同盟国への逃避行に加わるが―。

【感想】
「午前十時の映画祭11」にて。
1958年の日本映画。

黒澤明×三船敏郎のコンビによる11作目の作品。
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』
に影響を与えた映画でもあるそう。
C-3POとR2-D2は太平と又七をモデルにしたのだとか。

今から60年以上も前の映画だけど、
これは面白い!
逃避行というポピュラーな構図ではあるけど、
ストーリーのテンポのよさとキャラクターの濃さが、
時代を超越した面白さを感じさせてくれる。
設定が戦国時代ということもあるけど、
広大な大自然を駆けめぐるスケールの大きさに、
最近の邦画にはない"冒険感"を覚えるんだよね。

キャラクターもみんな記憶に残る存在感の強さがあってさ。
六郎太のおっかなくも人情味あふれる役どころは
"頼れるアニキ"って感じで憧れるし、
太平と又七のコミカルなコンビが笑えるんだよね。

2人ともこの上ないお調子者で、
金の延べ棒を見つけるや否や、
「これは俺のだ!」と取り合いになるも、
ピンチに陥ると「仲良くやっていこうな」
と肩を寄せ合うっていう(笑)
欲深いくせに弱っちいのに、
憎めないかわいらしさがあった。

六郎太が自分たちの逃避行のお供に
太平と又七を選んだのも、
彼ら自身ではなく、
彼らの持つ"強欲さ"に目をつけたからというのも、
とても人間を見ているなと思った。

そして、この映画のすごいところは三船敏郎のアクションだよ!
六郎太が馬で敵の騎馬武者を追いかけて斬り捨てるシーンは、
スタントマンなしで三船敏郎自身が演じたのだとか。
両手で刀を握って腕を上げていたから、
馬は脚のみで制御してるんだよね。

また、六郎太たちが鉄砲隊に狙撃されるシーンでは、
実弾を使っていたと。
火薬にすると煙が出てしまうので、
実弾を使うことにしたようだけど、
そのこだわりの強さがすごい。
さすがに、役者の身に危険が及ぶので、
役者たちが逃げるシーンと実弾が着弾するシーンは、
後からつなげたそうだけど。

今では安全上の理由からできないことが多いだろうけど、
やっぱり黒澤明と三船敏郎の作品は今観てもすごい。
特にアクションモノは、
今のどの邦画よりも面白く感じる。
そりゃ"世界のクロサワ"、"世界のミフネ"って呼ばれるよねって。
ハリウッドの大スターたちがこぞって尊敬する理由がわかる。

白黒映画や時代劇はこれまであまり観てこなかったけど、
「午前十時の映画祭」で観るようになってから、
時代を超える面白さに気づかされる。

午前十時の映画祭11 デジタルで甦る永遠の名作

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