CTの画像を見ながら、先生が大学病院を紹介してくれた時、癌という言葉は言われませんでした。
でも、予約していた腸の内視鏡検査を「それはキャンセルして、すぐに手術した方がいいですね」と言われ、さすがに私でも状況は分かりました。
先生は、その場で「誰がいいかなー」と手術の担当医を選びながら電話をしてくれて、「じゃあ、明日、4時に予約取れましたから」と一言。
翌日、紹介された病院で、「癌ですね。すぐに手術しましょう」と言われたときも、「ああ、癌って言われるのはこんな感じなのかぁ」と他人事のように聞いていました。
先生はすぐに、今日病室は空いているか、と問い合わせていました。「え~今日、入院? 日曜日に就学相談会があるのに…」と思っていると、病室は空いてないという返事。
結局、うまい具合に1日の相談会と22日の相談会の間に手術ということになりました。
という訳で、今回の就学相談会の前後は、いつもと違うことを考えたり、感じたりしました。そのことを、少しだけ書いておきたいと思います。
入院して、手術までの間、なんとなく娘に手紙を書いておきたくなりました。
別に、余命だとか言われた訳ではないのだけれど、やっぱり家にひとり残してきてしまった娘に、なにか書いておきたくなりました。
一番頭に浮かんだのは、娘が学校に上がるまでの日々のことでした。
その頃は、定時制の講師だったので、毎日のように近所の公園で遊び、幼稚園の送り迎えもしていました。
二人で行った公園やプールや遊園地や動物園の映像が、次々と頭に浮かびました。
そして、「自分の中では、かなりいい人生だったと思う」と書いていました。
「自分の人生で一番うまくやれたのは、Niiと一緒にいることだったと思う」と書いて、ああ、自分はこんなふうに感じているんだと思いました。
…そして手術が終わって、次の就学相談会のことを考えているとき、あらためて「子どもの学校を選ぶ」というのは、何を選んでいるんだろうと思いました。
(メモ)
子どもに何をあげたいのか??
この子の、この子だけの、人生を。
そのためには、この子が何をどう感じているのか、感じていくのかを知りたいと思う。
それを知るためには、この子の声に、気持ちに、耳を傾けるしかない。
感じるしかない。
その上で、私は、この子に、どんな体験をしていってほしいのか。
どんなことを、感じていってほしいのか。
この子がその手に、何をつかもうとすることを、支えていきたいのか。
人への信頼。自分を信じる力。
ここに、生まれてきてよかったと感じること。
ここで、生きていていいんだと当たり前に感じること。
その意識するまでもないことを、ありったけの思いで遺してあげたい。
学校を選ぶとか、教育を選ぶとき、
私は、子どもの何を選んでいるのか?
何かを選ぶということは、他の何かを「選ばない」ということ。
何かを選ぶということは、他の何かを「切り捨てる」(あきらめる)ということ。
私たちが、学校を「選ばない」というとき、
「選ぶ」ことで「切り捨てるもの」(あきらめられるもの)など、ない、という思いがあるから。
この子が行く場所で、この子がどんなことを体験していくのか。
その時、私はどんな態度で、いたい、のか。
どんな態度の自分でありたいと願うのか。
この子のために、良かれと思う、私の「選択」とは何か?
その「良かれ」の基準を、私は何を基に、考えているのか。
この子が最も、自分の感情をありのままに表現できるために、そのために必要なものは、なにか。
この子が生きる場所、生きる仲間、生きあう関係、包まれるまなざし。
この子が、この子らしく、自分の人生を豊かに経験する能力を満たしていくために、必要なもの。
そのために、私はどんな態度をとりたいのか??
この子が、「ここにいる」ことを、世界の肯定的なまなざしに包まれること。
たとえ、誰がこの子を否定的にみようと、世界を敵にまわしても、私はこの子の見方になる。
無条件でこの子の側に立つ覚悟。
それは、私が人間を、世界を信頼しているから。
《ふ》
【ふつう学級は、「ここにいる私」への信頼を
育てるところ】
※「ここにいる私」をみない場所。
「ここにいる」ために足りないものを見て、支援してあげる場所。
それは、自己否定を学ぶ場所になってしまうことが、あります。
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