ワニなつノート

『障害をもつふつうの子ども』の成長(試案その4)



「受けとめられ体験」が苦手な子どもがいます。
「受けとめ合い体験」が苦手な子どもがいます。
とくに「自閉症…」といわれる子どもは、その両方が苦手です。

①≪受けとめられ体験が苦手な身体≫

身体に触られることが苦手。
抱っこされることが苦手。
目を合わせることが苦手。
甘えること、頼ることが苦手。
一人の世界で、何かに集中するのが好き。
一人の世界に集中することが得意。
その集中を、中断させられるのが苦手。

自閉症の子どもの特徴的なこととして、こうしたことが言われます。
これらは、その子どもが、相手に身を委ねること、
受身であることが苦手であるという一面です。
つまり、「受けとめられることが苦手な身体」と言えます。

②≪受けとめられ体験がうまく読み取れないこと≫

受けとめられ体験が苦手なもう一つの面は、
親の気持ちを読み取ること、受け取ることが苦手だということがあります。

手をつなぐこと、身体に触れること、抱きしめることで愛情を表現し
「あなたがだいすきだよ」という気持ちを表現している親の気持ちを、
感じる力が弱いという面があります。

相手の行動や言葉で、相手の気持ちや感情を、読み取ることが苦手なようです。

いわゆるコミュニケーションが苦手ということは、
「受けとめられている」ことを感じる体験をすることが
難しいということなのです。

③≪①②が、親や周囲の人に理解されにくいという問題≫

①②の問題は、とくに子どもが小さいころは、
その障害による苦手さと、子どもであるという苦手さが重なって、
親や周囲の人に理解されにくいという問題があります。

親が、ふつうに「受けとめている」のに、
子どもが「受けとめられている」ような反応を示さない、
あるいは、「受けとめること」を拒否されるように感じることもあります。

そうすると、親も「受けとめること」に自信が持てなくなります。
どうしていいのか、わからなくなります。

子どもの方は、「受けとめられている」のに、
「受けとめられた」ことが分からない。

親の方は、「受けとめている」のに、その実感が持てない。

そうすると、自然と「受けとめる」場面そのものも、
ぎこちなく、そして減っていくでしょう。
子どもは、「受けとめられ体験」を、繰り返し経験し、
徐々に感じ理解していく機会が減ることになります。

こうしてみると、「受けとめ合い体験」の難しさは、
子どもの側だけの問題でないことが分かります。

親の側もまた、自閉的と言われる子どもの扱いづらさを、
どう受けとめていいか、分からないからです。


でも、保育園や普通学級のふつうの子どもたちの中で、
受けとめ合う小さな子どもたちの群れの中にいることで、
障害をもつ子どもは、自分もまたふつうの子どもである部分を
感じることができます。

膨大な量の「受けとめ合う関係」を観察し、
自分もそこに巻き込まれるなかで、
十分な「受けとめ合い体験」を「了解」していくようになるのです。

それは、赤ちゃんのときから「よく分からなかった」ことを、
自分で意味づけていく作業でもあり、
それが「あのときは坂道が怖かったんだよ」
「2年生のとき学校いけなかったねー。お母さん、泣いてたね」と、
ふと昔のことを口にすることにもつながるのでしょう。

そのとき自分のなかで受けとめきれないことを、ずっと心に持ち続けていて、
ずいぶん後で、ふと自分の腑に落ちる瞬間が訪れるということは、
誰もが経験することでしょう。

7月6日に紹介した『自閉症者が語る人間関係と性』の、
30歳の自閉症の女性のように、
自分を自分で受けとめることはできるのです。

その人が、子どものころから苦手にしていること、
いわゆる「障害の特性」と言われるものは、
大人になっても変わらないでしょう。

ただ、自分が困ったときの対処の方法を、どれだけ持っているか、
どれだけ「受けとめられ」、どれだけ「体験」しているかが大事なのです。

「膨大な量の観察学習」と
「受けとめ合い体験」の積み重ねが必要なのです。

苦手な面を持ちながら、それはそれとして、
長い年月をかけて「受けとめ合う」日々を積み重ねることが、
言葉の発達とか、障害の克服以上に、
その人の「自己受けとめ」、自尊感情を育てることになっているのでしょう。
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