石牟礼道子さん:
水俣病の苦しみにまなざしを…
最後の講演
毎日新聞 2013年04月22日
水俣病の教訓を後世に伝えようと全国で巡回展をする水俣フォーラム(東京都)は21日、福岡市博多区で記念講演会を開いた。
「苦海浄土」などの著作で水俣病被害者の苦しみを描いてきた作家の石牟礼道子さん(86)が「水俣はまだ解決していない。今苦しんでいる人たちにまなざしを」と語った。
石牟礼さんは今回で講演を最後にするという。
パーキンソン病と闘う石牟礼さんは車椅子で登壇し、ゆっくりと言葉を選び、絞り出すように約20分間話した。
石牟礼さんは、患者がいる家族には他にも患者がいるのに、地域社会に遠慮して声を上げられない状況があったと指摘し、「行政は察することができず、察しても知らないふりをしてきた」と批判。
水俣病に苦しむ患者の凄惨さについて「ベッドに足と手を縛り付けても、あまりの苦しさに天に向かって舞いなさる。縛ってあるひもやらがちぎれて下に落ちなさる」と語った。
その上で、「水俣病を抱えた一家がどのように苦しい思いをしてこられたか、行政は1分でも1秒でも考えれば分かると思うが、そういう方々の心の中を思いやってもらえない」と嘆き、「人と心の絆を持てるときに、人間は生きている喜びがある」と強調した。
石牟礼さんは「水俣のことを訴えてきて、お世話になった方にこの場を借りてお礼を申し上げたい」と話し、最後に「まぼろしのえにし」と題する自作の詩を朗読した。
【関東晋慈】
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