高校と、自分の居場所 (その6)
昨日の文章を読み返してみましたが、
??ばかりで、なんだか分かりづらいので、
ストレートに「自分の答え」を書いてみます。
【Q1】
この人は、「教育の安全網」という言葉を使っています。
ところが、その「安全網」の「定員」があいているのに、
不合格にすることの問題に触れないのは、なぜでしょう?
【答】
定員内で不合格にされる子どもの苦しみに対する無感覚と、
「入試」「合否判定」という権威に対する従順のためです。
【Q2】
「定員超過」で不合格になった
「416人」という数字を問題にしながら、
どうしてこの人には、「定員内」で不合格にされた
「758人」が気にならないのでしょう?
【答】
定員内で不合格にされる子どもの苦しみに対する無感覚と、
「入試」という権威に対する従順のためです。
□ □ □
定員超えのケースなら、
その子なりに、「あきらめ」「折り合う」道もあります。
しかし、目の前で仲間がみんな順番に席に座り、
まだいくつも席があいているのに、
「あなたはここに座る資格はない」と言われるのです。
しかも、それを「宣告」するのは、子どもにとって
「絶大な権威」をもっている「学校」です。
14歳、15歳の子どもにとって、
「学校」とは、「社会」です。
まだ14歳、15歳の子どもにとって、
その社会(学校)から、
「お前の同級生はすべてここにある席に座ってもいいが、
お前の座る席はない。
義務教育は終わったのだから、
お前は、自分の好きな道を自分で選んでいいんだよ。
では、ごきげんよう。」
…そう宣告されるのです。
社会(学校)から、そう言われる14歳の子どもの心、
15歳の子どもの心。
自分の14歳、15歳だったころの揺れる心を
少しでも思い出してみれば、
この社会(学校)で一人だけ、
そんなふうに言われる子どもの恐さが、
少しは想像できるはずです。
「学校・先生・社会」という、
子どもにとって「すべての権威」から、
「お前はみんなと一緒にいる資格はない」
「お前はみんなの仲間ではない」
「お前は一人で生きていけ」
そんなふうに宣告されてしまうのです。
3月の終わり、定時制の追加募集で
定員内不合格にされた子どもには、
同じ立場の子どもは一人も見えないでしょう。
自分みたいな人間はどこにもいない、と思うしかありません。
本当にひとりです。
その子は、自分と同じ境遇の「仲間」の存在を知りません。
定員があいているのに不合格にされた友だちはいないでしょう。
中学校は、この国に、10915校あります。(平成20年度)
758人という数字の、一人一人の子どもが、
「同じ境遇の子ども」を探そうと思ったら、
中学校を10校以上回らないと出会えません。
中学校10校に一人足らずの立場。
繰り返します。
「学校」の「席」は空いているのです。
「社会」の「席」は空いているのです。
そこから「拒否」されるのです。
中学の担任が、卒業してからも気にかけてくれるでしょうか。
仕事は見つかったか?
いまどうしているのか?
これからどうするのか?
4月、5月に声をかけてくれる先生がいるでしょうか?
ふつうに考えれば、
そうした大人を一人も知らない子の方が多いでしょう。
この社会には、そうした15歳の子どもを
支援する制度はありません。
あるのは、子どもを選別し捨てることが認められている
入試制度です。
その子には、誰も助けてくれる人がみえません。
中学は送りだしたら終わり。
高校は定員があっても受け入れない。
中卒で就職できるところはほとんどない。
中卒者が「金の卵」といわれた時代とは、まったく違うのです。
それなのに、高校は義務教育じゃない、
勉強したい者だけが行くところだと、
その時代と同じことを言い続けているのが、今の大人たちです。
いま、校長になっている人たちの高校進学率は
いくつだったでしょう?
すぐに答えられる校長がどれだけいるでしょう。
私の15歳のときの高校進学率は85%でした。
同じクラスで、就職した子は6人はいました。
新聞記事にあった通り、
「最終試験で不合格になり、行き場をなくした生徒について
追跡調査を実施していたのは、新潟、徳島、宮崎の3県のみ。」
この社会は、彼らを「いないもの」として扱っているのです。
「お前は一人で生きていけ」
その「言い渡し」を受けてなお、
その社会のなかで「自分の居場所」を探して生きていくことが
どれほど困難なことか。
この記事を書いた記者は、「定員内不合格」にされた子どもに
一人でも出会ったことがあるでしょうか。
私はこの24年間、毎年、毎年、
その子どもたちに出会ってきました。
私にすれば、その子どもたちが「不合格」にされる理由は、
ひとつも思い当たりません。
私にとっては、この記事を書いた人が、
定員内で不合格にされる子どもの苦しみに対して
「無感覚」であるとしか感じられません。
そして、無感覚でいられるのは、
その子どもたちに出会ったことがないからであり、
「入試制度」という権威に対して、従順すぎるからです。
【Q3】
その子たちにとって、「教育の安全網」とは何でしょう?
その子たちにとって、「最後の砦」はどこにあるのでしょう?
【答】
3月の終わり、定時制の追加募集で
定員内不合格にされた子どもにとって、
「そんなものはない」が、唯一正しい答えです。
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