2020年8月22日 午後12時40分―
「歩夢が引退する時、我が家もマリナーズを卒業や」
応援に来てくれた喬博さんが私に会うなり、そう言ってくれた。
「明日はまっちゃんも応援にいくでな」
前日の夕方、典子さんが自宅まで激励に駆けつけてくれた。
公子さんも典子さんも喬博さんもまっちゃんもみんなスタンドから見守ってくれていた。
また、森さんや富田さんもいつもながら遠くから応援してくれていた。
歩夢は、年中組の頃からマリナーズの試合に連れ廻した。
「コーホーさん(広報係さん)」
上級生の保護者からそう呼ばれていた時期である。
今でこそ生意気だが、当時は麻衣ちゃんや美紀ちゃん、そして奈尾美さんからも随分と可愛がってもらっていたものだ。
この2日間、色んなチームの指導者や保護者から歩夢の事で話しかけられた。
「ありがとうございます。」
ただこの言葉だけを返すばかりだった。
蒼空の時もそうだったが、歩夢にも本当に幅広い人達との繋がりを持たせてもらった。
初日の大飯スリーアローズとの試合。
歩夢が打席に立つと、守備につく志優が合図を送っていた。
塁に出ると何やら喋っている風にも見えた。
また、青郷クラブとの試合では、急きょ登板してくれた弥満登が歩夢を相手に全力で投げ込んできてくれた。
結果はフォアボールだったが、試合後私を見るなり弥満登はこう言ってくれた。
「歩夢ときちんと勝負できなくてすみませんでした」
そんな事は何もない。
その様子を見ているだけで嬉かった。
高浜クラブの果也や優希とは、日頃から通信で会話していた。
「ひじは大丈夫か」
「歩夢の投げる球は打ちやすいで」
「ボーイズかそれとも野球部か」
この日、会場から出ていく際、歩夢を見つけるなり車内から手を振っているのが分かった。
マリナーズの試合は歩夢の走塁ミスで幕を閉じた。
この1年間の全てが最後の最後で出てしまったそんな試合だった。
同級生の柾樹と未夢と理奈。
野球から外れても良き理解者になってくれている。
礒辺さんや雄介、大作に松原に繁さん。
怒りたい事も山ほどあっただろうが、それでも私達夫婦に気を使って我慢させていた。
学童野球を通じて歩夢に関わってくれた全ての人に感謝する。
そして将来、こうした人たちに成長した姿を魅せる事で恩返しをしてほしいと願う。
おわり