君知るやアートの島。 「瀬戸内国際芸術祭2010」 が、岡山県と香川県の島々で行われております。1992年、岡山よりの孤島に宿泊施設と美術館が一体となった、安藤忠雄設計のベネッセハウスミュージアムが建設されたことで、アートの島として海外でも注目を集めている今回のメイン会場とも言える「直島」と、会期中のみアート作品が展示される大小の島のひとつ、「男木島」に行ってきました。また、この芸術祭会期後も女木島、犬島、豊島などは現代美術を扱う美術館や施設は残され、瀬戸内全体がアートの島となる日も近いようです。
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いまや直島は、アートの竜宮城。アートファン、とりわけ安藤忠雄の建築物の愛好家なら一度は訪れてみたいところ・・・といっても私の郷里は瀬戸内で、毎日嫌でも眼に入る海に浮かぶ島々に今更何ができようと知ったことは無いのでした。
子供のころから、私は郷里を呪い、海を呪っていました。いや、呪われていたというほうが正しいのです。瀬戸内海はそれは恐ろしい場所でした。鉛色の海面を度々、海水汚染の赤潮に染める瀬戸内は、今でこそ瀬戸大橋が開通していますが、それ以前は本州へ行くのは連絡船のフェリーや高速艇のホバークラフトのみで、海難事故とは背中合わせでした。瀬戸大橋開通後も、本州とのアクセスは俄然便利になると思いきや、ひとたび風が吹けば橋は通行不可、ここでもまたかつての連絡線登場で、荒れ狂う海の中をタイタニック号やさながら船室の中を横滑りしつつ海を渡らねばならないなどと、海の猛威は海沿いに住まうわわれに度々襲い掛かります。その他にも、人食いザメの島、産業廃棄物の島、ハンセン病患者を隔離した島、(今は人権侵害的な隔離は行われていません。)土葬がいまだに行われている島、鬼が住まったといわれる島など、奇々怪々な島々は、打ち捨てられた網や魚貝の死骸がジリジリと焼け付く日差しによって放つ腐敗臭を海岸に漂わせ、地中海ブルーの海面を飛び交うカモメやオリーブの林が誘う楽園のような穏やかな瀬戸内のイメージという作られた虚像をあざ笑います。
でも、なんだか、周囲が「安藤忠雄の地中美術館ってとっても凄いのよ!」とか騒いでいると「なんがでっきょん、なんしよん(何か行われるのですか)」と、田舎者根性で覗き見したくなってしまって、帰省も兼ねてアート巡りに勤しんできました。
・・・とその前に、島へ行く方への三カ条、
その1、島は田舎者だらけです。
田舎のひとは基本的に無礼です。彼らが観光客へ向けての挨拶代わりに行う罵倒や悪態には深い意味もありません。洗練された物腰は期待せず、いかに無礼とはいえ、サルやコウモリしか居ない無人島でない事に感謝しましょう。
その2、水は井戸かため池で汲みましょう。蛇口をひねると出るのはウドンの出汁です。
瀬戸内、とりわけ香川県寄りは雨が降りません。喉を潤す水は井戸か、あらかじめ讃岐平野に点在するため池で汲みましょう。自販機には飲み物は無く、避妊具、乾電池が中心です。また蛇口を捻って出てくるのはウドン出汁です。ちなみに愛媛県ではミカンジュースが出ます。
その3、島へのアクセスは連絡船および高速艇で。
瀬戸内には芸術祭の会場を周遊する船がありません。島に行っては陸に引き返す、連絡船および高速艇をご利用ください。なおどうしても周遊したい方へはたらいウドンのたらいでどうぞ。快適な海の旅をお約束します。
いい加減分かっているつもりでも、毎回この三カ条を忘れるために、田舎では、難儀をする私です。それでは、香川で一泊後、アートの島、直島にいざと思いきや、香川県側の高松港で、連絡線か高速艇のアクセスどちらかで迷っているうちに、どちらも出航してしまうという味噌っかすぶりを発揮してしまい、次の出航を待っていると日が暮れるので、比較的アクセスの簡単な男木島へ行きました。「♪瀬戸は日暮れて夕凪小凪~ あなたの元へお嫁に行くの~」と、船内に流れる「瀬戸の花嫁」が旅情を誘います。同名の映画で主演した森なんとかさんも、歌を歌っていた小柳何とかさんも「♪愛があるから大丈夫なの~」と歌どおりにはいかないのは皮肉です。
男木島は地元では鬼が島と呼ばれていた女木島とセットの島で、泳ぎに自信のあるものは、陸地から泳いで渡るような場所です。たらいウドンのたらいが見当たらなかったので、男木島連絡船に乗ると40分の航行でした。出航を見守るのが、今は廃墟のかつての高松港管理事務所。芸術祭期間中は鏡でおめかししてます。大空襲を経験している高松市街地では唯一残る戦前の近代建物です。20年前は、栗林動物園の苔むした門、被災して黒こげのまま戦後も使われた琴平電鉄瓦町駅舎の十角堂など、古い建築物がチラホラ残っていました。
みじかい船旅の末に見えてきた男木島の町並み。尾道みたいな綺麗で味のある屋根の連なりに期待が高まります。
「瀬戸内海いうて馬鹿にしょったけど、こんなん知らなんだわ!」
白い建物は、男木島の総合案内所となるジャウメ・プレンサ作「男木島の魂」です。外堀を持つ建物で、貝を模した白い屋根はとても綺麗でした。しかし今年の夏は異常な暑さ。世界中の文字を透かし彫りにした屋根からは殺人紫外線が中の我々を照射!おまけに建物の中のうどん屋の店員が島のばーさま連中で、空腹に喘ぐ客を尻目に、ドリフのコントみたいな鈍さ具合はもうアートでした。ようやく出てきた腰の無いソフト麺みたいなウドンを食っていると、足元には船虫が熱でやられて転がってしました。
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男木島は急勾配の島で、アートの展示場となるのは海の航行を見守る山の中腹に立つ、安産の神様の豊玉姫神社の参道となります。海岸からも小さく山の鳥居が見えてとても神聖な感じがします。
鳥居を潜ってひたすら、石段をあがります。明治以降に作られたという石組みですが、所々崖だったり、石組みがずれていたりで、下駄やサンダルでは歩き回るのは無理です。すごい場所をアート会場にしたな、と呆れつつも、見た事の無い景色、町並みの連続で驚嘆しました。まさに海に浮かぶ迷宮!
迷路を只管登っていくと、程なくしてパラパラ姿を現す、アート作品。屋外展示の雨の降らない島で井戸水が生活の糧だった頃を偲ばせるインスタレーシュンは面白かったです。景色にもなじんでいるし、穴があけられて、水が滴り落ちる容器も生活感があります。絵画や彫刻しか見た事の無い地元の親族などは理解に苦しんだようですが。
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昔の人は太鼓橋が大好き。意図的なのか、青い一輪車が置いてありました。猛暑でしたが、かすかな海風が複雑な家並みの間をソロリと駆け抜けていきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/61/e93a41fe10efdc9c3919569c1eb95453.jpg)
これといった案内も無い道を右往左往。有料の地図も心もとないもので、スタッフも居るだけで質疑応答は出来ない人が殆どでした。ですので、少し時間に余裕をもって、周囲の町並みを含めてブラブラ見るのがお勧め。
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山の中腹、豊玉姫神社の眺めと境内にあった椅子とゴーヤの蔓で木陰を作った展示。
こんなに暑くさえなければ楽園のような景色。
見晴の良い場所にある中西ひろむと中井岳夫合作「空の海と石垣の町」。景色の赤い屋根、小さな小人のお家、家並みの複雑さを視覚化したようでもあり、自由研究課題の巣箱のようであり・・・。作品上部の壁は古い船底の板で不思議な風合いです。
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男木島では誰でもきっと好きな光景に出会えると思います。(君知るやアートの島そのニへ続く)
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いまや直島は、アートの竜宮城。アートファン、とりわけ安藤忠雄の建築物の愛好家なら一度は訪れてみたいところ・・・といっても私の郷里は瀬戸内で、毎日嫌でも眼に入る海に浮かぶ島々に今更何ができようと知ったことは無いのでした。
子供のころから、私は郷里を呪い、海を呪っていました。いや、呪われていたというほうが正しいのです。瀬戸内海はそれは恐ろしい場所でした。鉛色の海面を度々、海水汚染の赤潮に染める瀬戸内は、今でこそ瀬戸大橋が開通していますが、それ以前は本州へ行くのは連絡船のフェリーや高速艇のホバークラフトのみで、海難事故とは背中合わせでした。瀬戸大橋開通後も、本州とのアクセスは俄然便利になると思いきや、ひとたび風が吹けば橋は通行不可、ここでもまたかつての連絡線登場で、荒れ狂う海の中をタイタニック号やさながら船室の中を横滑りしつつ海を渡らねばならないなどと、海の猛威は海沿いに住まうわわれに度々襲い掛かります。その他にも、人食いザメの島、産業廃棄物の島、ハンセン病患者を隔離した島、(今は人権侵害的な隔離は行われていません。)土葬がいまだに行われている島、鬼が住まったといわれる島など、奇々怪々な島々は、打ち捨てられた網や魚貝の死骸がジリジリと焼け付く日差しによって放つ腐敗臭を海岸に漂わせ、地中海ブルーの海面を飛び交うカモメやオリーブの林が誘う楽園のような穏やかな瀬戸内のイメージという作られた虚像をあざ笑います。
でも、なんだか、周囲が「安藤忠雄の地中美術館ってとっても凄いのよ!」とか騒いでいると「なんがでっきょん、なんしよん(何か行われるのですか)」と、田舎者根性で覗き見したくなってしまって、帰省も兼ねてアート巡りに勤しんできました。
・・・とその前に、島へ行く方への三カ条、
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田舎のひとは基本的に無礼です。彼らが観光客へ向けての挨拶代わりに行う罵倒や悪態には深い意味もありません。洗練された物腰は期待せず、いかに無礼とはいえ、サルやコウモリしか居ない無人島でない事に感謝しましょう。
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瀬戸内、とりわけ香川県寄りは雨が降りません。喉を潤す水は井戸か、あらかじめ讃岐平野に点在するため池で汲みましょう。自販機には飲み物は無く、避妊具、乾電池が中心です。また蛇口を捻って出てくるのはウドン出汁です。ちなみに愛媛県ではミカンジュースが出ます。
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瀬戸内には芸術祭の会場を周遊する船がありません。島に行っては陸に引き返す、連絡船および高速艇をご利用ください。なおどうしても周遊したい方へはたらいウドンのたらいでどうぞ。快適な海の旅をお約束します。
いい加減分かっているつもりでも、毎回この三カ条を忘れるために、田舎では、難儀をする私です。それでは、香川で一泊後、アートの島、直島にいざと思いきや、香川県側の高松港で、連絡線か高速艇のアクセスどちらかで迷っているうちに、どちらも出航してしまうという味噌っかすぶりを発揮してしまい、次の出航を待っていると日が暮れるので、比較的アクセスの簡単な男木島へ行きました。「♪瀬戸は日暮れて夕凪小凪~ あなたの元へお嫁に行くの~」と、船内に流れる「瀬戸の花嫁」が旅情を誘います。同名の映画で主演した森なんとかさんも、歌を歌っていた小柳何とかさんも「♪愛があるから大丈夫なの~」と歌どおりにはいかないのは皮肉です。
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男木島は地元では鬼が島と呼ばれていた女木島とセットの島で、泳ぎに自信のあるものは、陸地から泳いで渡るような場所です。たらいウドンのたらいが見当たらなかったので、男木島連絡船に乗ると40分の航行でした。出航を見守るのが、今は廃墟のかつての高松港管理事務所。芸術祭期間中は鏡でおめかししてます。大空襲を経験している高松市街地では唯一残る戦前の近代建物です。20年前は、栗林動物園の苔むした門、被災して黒こげのまま戦後も使われた琴平電鉄瓦町駅舎の十角堂など、古い建築物がチラホラ残っていました。
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みじかい船旅の末に見えてきた男木島の町並み。尾道みたいな綺麗で味のある屋根の連なりに期待が高まります。
「瀬戸内海いうて馬鹿にしょったけど、こんなん知らなんだわ!」
白い建物は、男木島の総合案内所となるジャウメ・プレンサ作「男木島の魂」です。外堀を持つ建物で、貝を模した白い屋根はとても綺麗でした。しかし今年の夏は異常な暑さ。世界中の文字を透かし彫りにした屋根からは殺人紫外線が中の我々を照射!おまけに建物の中のうどん屋の店員が島のばーさま連中で、空腹に喘ぐ客を尻目に、ドリフのコントみたいな鈍さ具合はもうアートでした。ようやく出てきた腰の無いソフト麺みたいなウドンを食っていると、足元には船虫が熱でやられて転がってしました。
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男木島は急勾配の島で、アートの展示場となるのは海の航行を見守る山の中腹に立つ、安産の神様の豊玉姫神社の参道となります。海岸からも小さく山の鳥居が見えてとても神聖な感じがします。
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鳥居を潜ってひたすら、石段をあがります。明治以降に作られたという石組みですが、所々崖だったり、石組みがずれていたりで、下駄やサンダルでは歩き回るのは無理です。すごい場所をアート会場にしたな、と呆れつつも、見た事の無い景色、町並みの連続で驚嘆しました。まさに海に浮かぶ迷宮!
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迷路を只管登っていくと、程なくしてパラパラ姿を現す、アート作品。屋外展示の雨の降らない島で井戸水が生活の糧だった頃を偲ばせるインスタレーシュンは面白かったです。景色にもなじんでいるし、穴があけられて、水が滴り落ちる容器も生活感があります。絵画や彫刻しか見た事の無い地元の親族などは理解に苦しんだようですが。
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昔の人は太鼓橋が大好き。意図的なのか、青い一輪車が置いてありました。猛暑でしたが、かすかな海風が複雑な家並みの間をソロリと駆け抜けていきます。
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これといった案内も無い道を右往左往。有料の地図も心もとないもので、スタッフも居るだけで質疑応答は出来ない人が殆どでした。ですので、少し時間に余裕をもって、周囲の町並みを含めてブラブラ見るのがお勧め。
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山の中腹、豊玉姫神社の眺めと境内にあった椅子とゴーヤの蔓で木陰を作った展示。
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こんなに暑くさえなければ楽園のような景色。
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見晴の良い場所にある中西ひろむと中井岳夫合作「空の海と石垣の町」。景色の赤い屋根、小さな小人のお家、家並みの複雑さを視覚化したようでもあり、自由研究課題の巣箱のようであり・・・。作品上部の壁は古い船底の板で不思議な風合いです。
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男木島では誰でもきっと好きな光景に出会えると思います。(君知るやアートの島そのニへ続く)