映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【映画】あるスキャンダルの覚え書き
2006年 英国 92分 鑑賞 6月10日@OS名画座
監督 リチャード・エアー
出演 ジュディ・デンチ ケイト・ブランシェット
原題 NOTES ON A SCANDAL
【STORY】ロンドン郊外に住むベテラン教師バーバラは、新任の美しい美術教師シーバに心惹かれる。やがて二人は親しくなるが、バーバラがシーバの秘密を握ったことから両者の関係は意外な方向に・・・。
【感想】ホラー映画だとか、「女は怖い!」とか言う声が多いが、私は女性として共感の持てる、丁寧に作られた文芸映画だと思う。幾つかの場面でD.H.ロレンスの「虹」(100年近く前に女性の自立を描いた小説)を思い出した。二人の実力派女優の共演は見ごたえがある。
「醜聞」はふたつある。未成年を性的に虐待した中年の教師と聞くと、おぞましさが先に立つが、その実、画面上に見るシーバ(ケイト)は美しく明るく、誰からも好かれる女性である。ただ、社会的に未経験で理想主義者で、現実の15歳の男性への警戒心が足りなかっただけ。「醜聞」の中身を見ると、そうなのだ、と映画は語る。
もう一つの「醜聞」は、だまし絵のように背景に隠れていて、映画の進行と共に徐々に姿を現す。これが、見ようによってはサスペンスとかホラーといわれる所以だろう。でも、冒頭から見ている限り、バーバラ(ジュディ・デンチ)はどこといって非の打ち所の無い有能な教師で、職業人としても、社会人としても、振る舞いにソツが無い。身だしなみもよく、趣味の良い服を女らしく着こなしている。
彼女の致命的な欠点は、習慣的な孤独のために他人との距離の取り方が下手な点だ。特に年下の金髪女性が相手だと、日頃の自制心や判断力を失い、突然ロマンティックな少女趣味に走る。未経験ゆえの不適切な行動に過ぎないのであり、大いに同情の余地がある。
彼女がとかく批判的に見られるのは、女のくせに頭脳明晰で、意志強固、定年まで独身で働いて来たという、女は男とともに生きるべきという世間常識に反する、少数派であるからに過ぎない・・・いわば、中世の魔女狩りに通じるものがある。ふたりは、一見、両極端な存在であるが、どちらも、女性の生き方に潜む深い孤独を表しているように思う。
バーバラの愛猫の死と、シーバの子供の学芸会とが重なって、ふたりの仲が決裂するシーンは、「ブロークバック・マウンテン」の「離婚のニュースに、勇躍、遠路駆けつけたのに、子供たちとの面会日とかち合って・・・」を思い出させる。振られた男はそのままメキシコの歓楽街まで突っ走るが、女のほうは日記をつけ、お風呂に入るくらいしか無い。シーバの秘密を漏らしたのだって、行き掛かり上のことで、悪意で「罠にかけた」訳ではないように見えるが、私は甘いのだろうか。
多彩な演技力で「カメレオン」といわれるケイト・ブランシェットは、初見だが、聞きしに勝る魅力だと思った。それにシーバのような八方破れの人、知人にいそうな気がする。また、ジュディ・デンチはこれまでは007映画のM以外で見たのは「恋に落ちたシェイクスピア」「眺めのいい部屋」くらいで、さして気にも止めなかったが、この共感を持てる役で、女優として見直した。デイムの称号は伊達じゃない。
監督 リチャード・エアー
出演 ジュディ・デンチ ケイト・ブランシェット
原題 NOTES ON A SCANDAL
【STORY】ロンドン郊外に住むベテラン教師バーバラは、新任の美しい美術教師シーバに心惹かれる。やがて二人は親しくなるが、バーバラがシーバの秘密を握ったことから両者の関係は意外な方向に・・・。
【感想】ホラー映画だとか、「女は怖い!」とか言う声が多いが、私は女性として共感の持てる、丁寧に作られた文芸映画だと思う。幾つかの場面でD.H.ロレンスの「虹」(100年近く前に女性の自立を描いた小説)を思い出した。二人の実力派女優の共演は見ごたえがある。
「醜聞」はふたつある。未成年を性的に虐待した中年の教師と聞くと、おぞましさが先に立つが、その実、画面上に見るシーバ(ケイト)は美しく明るく、誰からも好かれる女性である。ただ、社会的に未経験で理想主義者で、現実の15歳の男性への警戒心が足りなかっただけ。「醜聞」の中身を見ると、そうなのだ、と映画は語る。
もう一つの「醜聞」は、だまし絵のように背景に隠れていて、映画の進行と共に徐々に姿を現す。これが、見ようによってはサスペンスとかホラーといわれる所以だろう。でも、冒頭から見ている限り、バーバラ(ジュディ・デンチ)はどこといって非の打ち所の無い有能な教師で、職業人としても、社会人としても、振る舞いにソツが無い。身だしなみもよく、趣味の良い服を女らしく着こなしている。
彼女の致命的な欠点は、習慣的な孤独のために他人との距離の取り方が下手な点だ。特に年下の金髪女性が相手だと、日頃の自制心や判断力を失い、突然ロマンティックな少女趣味に走る。未経験ゆえの不適切な行動に過ぎないのであり、大いに同情の余地がある。
彼女がとかく批判的に見られるのは、女のくせに頭脳明晰で、意志強固、定年まで独身で働いて来たという、女は男とともに生きるべきという世間常識に反する、少数派であるからに過ぎない・・・いわば、中世の魔女狩りに通じるものがある。ふたりは、一見、両極端な存在であるが、どちらも、女性の生き方に潜む深い孤独を表しているように思う。
バーバラの愛猫の死と、シーバの子供の学芸会とが重なって、ふたりの仲が決裂するシーンは、「ブロークバック・マウンテン」の「離婚のニュースに、勇躍、遠路駆けつけたのに、子供たちとの面会日とかち合って・・・」を思い出させる。振られた男はそのままメキシコの歓楽街まで突っ走るが、女のほうは日記をつけ、お風呂に入るくらいしか無い。シーバの秘密を漏らしたのだって、行き掛かり上のことで、悪意で「罠にかけた」訳ではないように見えるが、私は甘いのだろうか。
多彩な演技力で「カメレオン」といわれるケイト・ブランシェットは、初見だが、聞きしに勝る魅力だと思った。それにシーバのような八方破れの人、知人にいそうな気がする。また、ジュディ・デンチはこれまでは007映画のM以外で見たのは「恋に落ちたシェイクスピア」「眺めのいい部屋」くらいで、さして気にも止めなかったが、この共感を持てる役で、女優として見直した。デイムの称号は伊達じゃない。
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )
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シーバのような女性って案外たくさんいそうですね。
若い男に走るかどうかは別としても、
子育てが落ち着いた頃とか、
幸せで安泰だからこそ物足りなさを感じるとか…
チョット『運命の女』を思い出しました(笑)
ケイト・ブランシェットは『バベル』も良かったです!
殆ど寝てる芝居なのに、感動しました。
ジュディ・デンチは『ショコラ』のお婆ちゃんも印象が深いです。
また宜しくお願いします。
怖い映画だからホラー映画という人々がいるのでしょうか?
私もコレは文芸作だと感じますね。
実話の映画化のようで、実話はもっとドロドロしているようにも思えますが、機会(時間)があれば原作本読んでみたいですね。
そうカメレオン女優と呼ばれているブランシェット映画を是非是非ご覧下さいまし!オーストラリアンにも関わらずハリウッドで引っ張りだこ女優ですから。
「オスカーとルシンダ」「ヴェロニカ・ゲリン」「シッピング・ニュース」とかお勧めですが「エリザベス」からご覧くださいまし。
デンチの称号だてじゃない...同感でございます。
「ヴェロニカ・ゲリン」は美しい若い女性が無防備に危地に飛び込む姿が目に残ってます。あれが彼女だったの・・・「シッピング・ニュース」は原作が「BBM」アニー・プルーなので、読んだことがあります。いつか見るべきですね。「エリザベス」は緊急課題なんですね。この頃オーストラリア出身が各方面に大活躍のような気がします。野球でも阪神のジェフ・ウィリアムズが。これは話題が逸れました。フフフ
昔「その人は女教師」「愛のために死す」という映画が、1968年仏国で実際に起こった裁判を元に1970年に日仏同時に作られたのですが、30歳の女教師と17歳の男子生徒の間で起きた事件でした。こうして見ると昔はまだ、かわいらしいですね。
しかも、心が揺れるという意味で題材も興味深いです。観てないので内容については、倫理感を含めての是非は論じられませんが、人の気持ちの揺れをなかなか推し量れない自分には、こういった作品観て、色んな揺れ方があるんだなぁといった人間勉強しなければなりません(汗)
あ~アニー・ジラルドの「愛のために死す」懐かしいですね~炎の恋♪
もっとも、劇場で見た年齢がアニーさんの相手役の高校生より下だったんで、老けた男子高校生に目が点になった覚えがありますが・・・(笑;)
スキャンダルの方でも、シーバの方がかなりのお咎めをくらっていたようですが・・・
ケイトとデンチの共演は見応えがありました。
ただ、こちらはスコアの流し方が、若干大袈裟過ぎて、ちょっと私の秘かな笑のツボを刺激しちゃったのが何とも。(^^;
あの2人の演技なら、大袈裟な音楽は必要ないのでは?っと思いましたが・・・。
ケイトは美しい上に演技もしっかりしていて「アビエーター」のキャサリン・ヘップバーン、「ギフト」でのマジな転び方・・(笑)なんて番外編的な演技も気に入っております。
「愛のために死す」をご覧でしたか、古きよき時代がよみがえりますねぇ・・・あの相手は17歳でしたが、あごひげなんて生やして、すっかり大人の風格がありましたね。だから、未成年誘拐罪?が、そもそも現実を無視した、時代遅れの法律だったのではないでしょうか。それに、アニー・ジラルドの教師は、ケイト・ブランシェットのシーバとは大違いで、実力のある、立派な教師でしたねぇ・・・「アビエーター」「ギフト」は未見なんで、楽しみがふえましたわ。
ほんと、二人ともなかなかの演技でしたね。
ただ、残念なのは、なぜあのスキャンダルなのか?
という気持ちが残ってしまったことです。
原作はもっとシーバの心の内が描かれていたのかもしれませんが・・
バーバラが主役だから仕方ないのかもしれませんね。
とはいえ、自分のブログでは好評価にしています!
まあ、ケイトのファンということで(笑)