「イヤ~、山陰が底力を見せたねぇ」と、夫が言う。
「底力」とは、ほめ言葉ではなく「老人力」のように使っているのだ。
朝刊に出ている選挙結果の色分け地図を見ると、日本列島、雪崩を打ったように赤一色。その中で、民主党ゼロの県が見られる。宮崎、高知、福井、そして山陰の鳥取と島根。不思議にもどこも私と何かの関係のある県だ。生地、訪れた土地、現住地。
島根では故竹下登首相の弟亘氏と前幹事長の細田博之氏が . . . 本文を読む
酒、歌、煙草、また女 ----三田の学生時代を唄へる歌 佐藤春夫ヴィッカス・ホールの玄関に咲きまつはつた凌霄花(のうぜんくわ)感傷的でよかつたが今も枯れずに残れりや秋はさやかに晴れわたる品川湾の海のはて自分自身は木柵(もくさく)によりかかりつつ眺めたがひともと銀杏(いてふ)葉は枯れて庭を埋めて散りしけば冬の試験も近づきぬ一句も解けずフランス語若き二十(はたち)のころなれや三年( . . . 本文を読む
1978年 日本 110分 鑑賞@テルサ名画劇場
監督 野村芳太郎 原作 松本清張
出演 緒形拳 岩下志麻 小川真由美
松本清張には、「霧の旗」とか「波の塔」とか詩的で抽象的なタイトルの小説が多いと思っていたら「鬼畜」はグロテスクでむき出しな言葉だ。映画を見る動機としてはタイトルが大きい役割を持つので、そのために、かなり見に行くのをためらった。しかし、普段から鑑賞の機会の少ないこの町で、第 . . . 本文を読む
冷蔵庫が突然うごかなくなった。それに気づいたのは納豆が好きな夫で、冷凍刻み葱が溶けかかっていると言うのだ。そういえば、2、3日前から、アイスノンの枕が十分凍らなかったなあと思い出した。
「何故すぐに言わないんだ」と、夫はパニックに陥る。たかが電気製品が故障するだけのことに、このような過剰反応。「なんて人間が小さいんだ」と、私は心の中で軽蔑した。
この冷蔵庫は11年前、吉祥寺のスーパーで15万円で . . . 本文を読む
SFファンタジー 日本語吹き替え版 2009年 110分 米国 @松江SATY東宝
監督 ショーン・レヴィ 出演 ベン・スティラー エイミー・アダムズ
原題 Night at the Museum Battle of the Smithsonian
博物館の展示物がもし動き出したら・・・という空想から生れた映画。
3年前の「ナイトミュージアムNight at the Museum」の続編 . . . 本文を読む
英国 ドキュメンタリー 55分 2008年 DVD
監督 リーアム・デール
昔の遊び「ダルマさんが転んだ」や「缶けり」では、相手の隙をついて忍び寄るのが面白く、特に「缶けり」では、一蹴で形勢が逆転するのが応えられなかった。鬼のベソをかいた顔には同情をそそられたものだ。圧倒的な支配体制への抵抗の手段、独裁者暗殺計画にはあのワクワク感に通じるものがある。
ヒトラーに対しては、43回の暗殺の企てがな . . . 本文を読む
7月22日の皆既日蝕の日、TV中継で、子どものように純真に、感動を言葉にしている高齢者を見た。私は日蝕自体よりも、このような感受性にむしろ感動した。
中学2年の夏、初めて上京したとき、銀座に連れて行かれたけれど、郷里の繁華街と違うのは、天文館は太い通りが一本なのに、銀座は縦横に多くの道が走っているのと、柳が生えていることぐらいで、後は暑くて埃っぽい町だと思い、別に感心もしなかった。むしろ今の年齢 . . . 本文を読む
2006 米 ドキュメンタリー DVDで鑑賞 監督 リンダ・ハッテンドーフ
実際に見たら、思っていたよりずっと面白かった。
主人公は、米国生まれの日系人、80歳を超えるジミー・ミリキタニだ。日本名は三力谷つとむ。路上生活をしながら絵を売っていたかれと2001年の初め、偶然知り合ったリンダは、彼の希望により、9ヶ月の間彼を撮影したが、そこにあの9.11事件が起きた。相変わらず路上で絵を描くかれは . . . 本文を読む
中国への憧れ、動物への親しみ 孤高の日本画家
橋本関雪(1883-1945)展 島根県立美術館で8月5日から9月14日まで
蒸し暑い中を会場にたどり着いたが、なぜか敷居が高く感じられる。気合をいれるためまず館内カフェで珈琲を飲んだ。ちょうど今日は珈琲が無料になる日なのだ。(詳細は文末)。
いざ中に入ると、すぐにこの画家に親しみを感じた。彼の絵は、言いたいことがハッキリ表現してある。だから、さほ . . . 本文を読む
ヒグラシをはじめて聞いたのは去年の8月のはじめだ。
子連れでやって来た大阪の親戚が、賑やかな談笑のあと帰って行き、義母と私ふたりだけになった。シーンとした昼下がりの茶の間に、突然、甲高く澄んだ音が空から降ってきた。「あれは何の音、虫?鳥?」と独り言に言うと「あれは、ヒグラシ」と義母。
ヒグラシ別名カナカナと言う蝉の一種らしい。今まで詩や文でその名は知っているが、声を聞いたのは初めてだ。姿はいま . . . 本文を読む
こんな川柳があった。「生きるとは死ぬ時までの暇つぶし」
これを見て「何を言うか、この貴重な人生に感謝し、もっと真剣に取り組めっ!」と怒リ出すひとも出て来るかもしれない。
しかし、生まれたと言うことは、気がつくと走る電車に乗っているようなもの。次の駅までは否応無く乗っていなくてはならない。車内で出来ることと言えば、本を読むか、人と喋るかだ。だから自分は本を読むのだ、と20代のころの女友達が言って . . . 本文を読む
花田清輝(1909-1974)
今年は花田清輝の生誕100年に当たる。私にとっては、40年前の友だちを思い出させる懐かしい名前であるが、読んだことはない。そこで立て続けに関係書を読んでみた。その挙句、何か書きたくなった。出来上がったのは、単に「花田清輝を読んだよ!」と叫んでいるだけの文であるが、ともかくアップする。
かれは21歳の時『七』でサンデー毎日の大衆文芸賞を受けて以来、文学・芸術活動に . . . 本文を読む
1976年の夏、私はユースホステルを利用して旅をしていた。永平寺に行くため京福電鉄を待つ、ほんの数時間、福井駅の周辺を歩いているうち、小暗い通りに本屋を見つけた。「百合香書房」の看板を掲げ、三島由紀夫、花田清輝の本が置いてある。そこに大学生らしき客が店主としゃべっていた。その話し方と本の種類から、文学好きだった大学時代の福井出身の友人を思い出した。
かれは私より2歳年下で、高校をサボっては町の図 . . . 本文を読む