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恍惚の人

新潮社 1972 有吉佐和子(1931~1984) 図書館から

50代~60代で読み、これが3回目。また高峰秀子の出る映画はTVで一度、松竹高槻で見て「細部に感動、森繁の好演」と日記に書いている。

(当時は痴呆症といっていた)認知症の老人を介護するお嫁さんの孤軍奮闘。

老人が雨の中で泰山木をうっとりと眺めるシーンが美しく一番印象に残る。ただ、この恍惚という表現、1950年代後半に自分でも使ったおぼえがあるが、「恍惚のブルース」1966とこの小説のせいでごく狭い特別な意味がつきまとうようになったのが残念だ。それはさておき、作家の筆力は素晴らしく長編を一気に読ませる。阿佐ヶ谷ふきんの場所の設定は親しみを感じるし彼女の提起した問題は今も生きている。

自分が年を取ることを繰り返し繰り返し恐れる主人公夫婦(40~50代)。これは著者自身の感想でもあるかもしれない。彼女が53歳の若さで亡くなったことは、その意味ではよかったのか。

ここからは付け足しだが、私自身は、70歳を過ぎて初めて、生きる楽しさを感じるようになった。それ以前、とくに10代と20代は、苦しいことのみが多かった。間もなく後期高齢者のKは、私が残されることを心配して、先に逝くようにと時々言う。だが男女の平均余命を見ても、家族の遺伝から推量しても、私の方が長生きする可能性は高い。それに私は、かれがいなければいないで何とかなるさ、一人残されても大丈夫という根拠のない自信を抱いている。(これがすでに恍惚の人の特徴なのかも?)

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