小さな町の外来者にとって、駅とホテルはどこか懐しい場所です。
外の世界につながっているからでしょうか。
午後2時過ぎ、ホテルで昼食を済ませ、ロビーで休んでいたら、
フロントで問題が起きたようすです。半ズボンにサンダルばきの
若者が、昼食をしに来たのに時間切れだと言われたところです。
どうやら、車で通りかかり、連れが何人かいるようす。
一見したところ、この町の人らしくありません。
「どこか、近く . . . 本文を読む
外出先で不意にパソコンに触りたくなり、松江駅に近いホテルに入りました。 (ここには、10分100円で利用できるパソコンがあると知っているので)ソファに若い女性が(日本人かな?)あぐらをかき(日本人じゃないなぁ)手持のパソコンで作業中です。その周りに西洋人が集まりだしました。しばらくソファの片隅で観察することにしました。(何しろヒマなもので)松江はアイルランド選手団の合宿地で、友好祭を毎年催していま . . . 本文を読む
旗 杉山平一 つきつめたやうな顔をしてあるいて ゐる高等学校の生徒のマントを見るた びに 私は涙のでるやうななつかしさ をおぼえる 私がその時分をすごした のは 裏日本のみづうみに沿つたちひ さな古風な街であつた 秋から冬にか けて よくみづうみをわたつてくる夜 霧に 街はすつぽり包まれてしまつた あの白い霧に黒マントを翻へしなが ら 憑かれたやう . . . 本文を読む
「三四郎」の中で、漱石は、九段の銅像を批判して
「あんな物より、美しい芸者の像でも建てれば」と言っています。
が、当地には美しいかどうかはさておき、芸者の像があるのです。
宍道湖畔にあるこの胸像は「玄丹お加代」の像で、
この面構えからは、女子大の創設者のようですが
1968年の大政奉還後、藩の危機を救った20代半ばの女性(本名・錦織加代)だそうです。
もともと親藩の松江藩は親幕府的だったので . . . 本文を読む
ある日、私たちは理科の時間に松やにを使ってシャボン玉を作りました。
その子は、私たちの先生からシャボン水をもらったと、喜んで私に知らせにきました。
ところが、近所の男の子がそれをひったくり、折角のシャボン水はみんなこぼれてしまったのです。
泣きながら行ってしまったかわいいファデットのために、その夕方、彼女の家にシャボン水を届けてやりました。
その時の嬉しげな様子、自分の愛している少女を喜ばせたとい . . . 本文を読む
小学時代の思い出を、中学生になって作文にしたものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
毎年夏になると、シャボン水売りのおじさんが一びん十円のシャボン水を売って歩きます。子供らが集まってくると、荷物を地面におろして、輪になった針金をシャボン水にひたし、ふーっと吹いてみせます。針金をはなれた、にじ色に光るやわらかな玉が、おじさんのまわりに浮んでは消える光景は、いつまで見てもあきない . . . 本文を読む
週5日デイケア施設に通う義母が一枚の答案を持ち帰って、ニコニコ顔です。
日頃から、戦前の人は漢字能力が高いとは思っていましたが
義務教育しか受けていない、認知症の彼女が、学歴の高い同輩を差し置いて
漢字の読みで満点をとったそうです。
こういう記憶は、彼女の委縮した脳のどこに残されているのでしょう。
義母は大層ごきげんで、私たちにうなぎをご馳走してくれました。
下記がその問題です。一瞬「??」と思 . . . 本文を読む
1961年 日本 白黒 103分 監督 市川崑 脚本 和田夏十
出演 岸恵子 山本富士子 中村玉緒 船越英二 森山加代子 鑑賞@テルサ名画劇場
市川崑が、妻(和田夏十)の脚本で撮る、blackコメディ&サスペンス。
あるTVプロデューサー(船越英二)は、女性と見ると関係したくなる、
優しいのか弱いのかわからない男。いかにも、こんな人いそうだなあ、と言う感じがする。
彼への復讐に燃えるのが関係 . . . 本文を読む
「暮らしの手帖」や朝日新聞の日曜版などでおなじみの影絵画家だ。
義母と我々計3人で宍道湖の見える県立美術館に行った。87歳の彼女だが、
元々、美しいものを見るのが好きなのだ。幸い、まだ自分の足で動けるし。
平日だが大変な人だった。とくに中高齢者が目立つ。
初期の油絵時代から、つい去年のものまでを並べている。
慶応の学生の頃、戦争中で、少女の像などは軟弱だとして没収されたそうだ。
ノイシュバンシ . . . 本文を読む
2008年 日本 110分 監督 宮崎駿 鑑賞@松江SATY東宝
宮崎駿の引退宣言のあとの第一作だ。現場に復帰する気になったのは、
長男・宮崎吾朗の「ゲド戦記」2006年に刺激されたからだろう。
まだまだ自分が腕は上だと言う確信が持て、「父親を殺す」という
挑戦的な内容に、負けてたまるか、と闘志がわいたのだろう。
父親と張り合う息子にゲンナリしたせいか、
これは女性讃美に終始するアニメと言えそ . . . 本文を読む
わが国では、盆と暮、人生の節目節目につきものなのが贈答の習慣だ。
それに一石を投じる文章が「余録」に出ていた。7月23日毎日新聞。
1.「ギフト」の語源は「毒]である。
2.もともと贈り物とは、多かれ少なかれ、恩義をかぶせて贈られた側の自由を束縛する、毒を含んでいる。
まさにその通り。私はめったに、人に物をあげない。よほど追い詰められない限り。
私の例を挙げる。結婚早々からの、姑の贈り物攻勢 . . . 本文を読む
時おり風も吹くので、いつになく気軽に買物に同行したとき。車の窓から見ると、道の両側に百日紅の街路樹が続いている。花の色は赤が大部分だが、たまに白、そして薄いピンクもある。「やはり、サルスベリは赤に限るなぁ」と思いつつ、ふと、じぶんが昔は反対のことを言っていたことを思い出した。中学2年の夏休み、知り合いの若い女性が訪ねて来た。9月から私の中学の音楽の先生になるので、学校までの案内を頼むと。10分あま . . . 本文を読む
日本中で海に面していない県が8つあり、それらの県民は、海に対して大きなコンプレックスを抱いているという。しかし、海に囲まれた県で育ちながら、私のような例もある。
<<<<<<< 海 >>>>>>>
鹿児島育ちの私が泳げないと言うと、信じられないような顔をよくされる。
たしかに、鹿児島は海辺の街で、私の家からも歩いて10分そこそこで . . . 本文を読む
原題 The Little House 1943 文と絵 Virginia Lee Burton
訳 石井桃子 岩波書店 定価 640円+税 2007年刊 初出 1954年
「むかしむかし、ずっといなかの しずかなところに ちいさいおうちが ありました」で始まるこの絵本は、動かない家が主人公なのです。まわりの自然、昼と夜、四季の移り変わりを6枚の絵で丁寧にたどった部分が素敵です。文明の発展と共に . . . 本文を読む