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【映画】愛染かつら(総集編)

1938年 松竹 白黒 1h29 原作 川口松太郎 監督 野村浩将
出演 上原謙 田中絹代 佐分利信 高杉早苗 テルサ名画劇場にて

1938年(昭和13年)と言えば、私にとっては兄が生まれた年で、
五一五事件や二二六事件に続いて、中国での戦争が始まり、日本中にさぞ暗雲たちこめていたかと思えば、こんなすれ違いメロドラマが空前のヒットを飛ばしていたとは。

田中絹代は、華やかさはないが日本古来のつつましく芯の強い女性を演じさせればピッタリの女優。上原謙も正統的二枚目だ。

何よりも♪花も嵐も踏み越えて♪の「旅の夜風」「悲しき子守唄」の二曲は、つい最近まで高槻松竹でのべつに聞いていたので、懐かしくてたまらない。

「事変」と称してその実は戦争が始まっているのに、メロドラマが大当たりし、恋に現を抜かして駆落ちをもくろんだり、肝腎な時はうつむくだけでハキハキものも言えない男性が人気を博していたのか。これは非難しているのではない。むしろ戦争より平和を愛する日本人に頼もしさと親愛の情を感じる。

余談だが、映画評論家の佐藤忠男氏によれば、日本映画の二枚目はここと言う時うなだれるので、額にパラリと髪がかかる。上原謙、森雅之、佐田啓二、みなそうであると。氏はこれからは、そうでなく、欧米映画の主人公のように勇敢に意思表示すべきだと考え、自分から好きな女性に結婚を申し込んで成功したそうだ。一度京王永山の上映会ですれ違った時、あたりに目もくれないで昂然と過ぎて行かれたことで、佐藤氏が愛妻家であろうという日頃の想像が確かめられた。

一方女性像はどうかというと、今も昔も、女性はしっかりしている。特に、ヒロインの職場の看護婦たちが、徒党を組んで?ヒロインを応援する様子は、女学校の運動会か学芸会のようでほほえましい。ちょうどその何年か前に来日している「制服の処女」を思わせる。そして、田中の恋敵になる金持ちの令嬢、今で言うお嬢様(高杉早苗)がよい。昔の彼女等は、「暖流」の高峰三枝子もそうだが、「ノブレス・オブリージュ」と言うのか、誇り高く自立して、同性への思いやりも、行動力もある、現代の女性から見ればヒロインより魅力ある存在だ。まあ、今ほど数も少なく、エリート的な存在だったのだろう(例えば皇族とか旧華族)
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