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あるスウェーデン人夫妻の休暇

もうすぐ2025年大阪万博が始まるいま、ふとこの作文を思い出した。

  文章教室 課題「休暇」「あるスウェーデン人夫妻の休暇」       

1970年、大阪万博の年の5月、伯父の紹介で鹿児島にやって来た新婚旅行中のスウェーデン人夫妻を、当時暇で、英語も少し話せるということで私が世話することになった。

西駅に降りたったのは金髪で背が高くあごひげのある夫と、対照的に小柄でふっくらした妻、二人は、日本を皮切りに南回りで地球を半周するのだという。まだ外国に行ったことのない私には彼らの存在、することなすことが珍しく、新鮮に思えた。

二人は教師だといっていた。半年もの休みに感心すると、外国を旅して回り見聞を広めることは、教師として役に立つ経験なのだからとのことだ。

彼らは質素な旅人で、ある日、レストランで昼食を私がおごったら、「ご馳走を食べたから、今夜は抜きにしよう。」とニコニコしながら、言うこともあった。また桜島へのフェリーの切符をまとめて買ったら「僕たちの分までなぜあなたが払うのか」と不思議そうに聞かれたこともある。季節はずれの磯の海水浴場で妻の方が泳ぎたいと言い出し、人が来ないように脱衣場の入口で見張っている私に「見ても構わないわよ」と言って、さっさと水着に着替えていたのも忘れられない。

この時から35年、日本もずいぶん変わったけれど休暇という点については、先進国なみになる日ははたしていつかくるのか、疑わしく思う。

2005年5月17日作成

【八木先生評】こういう国の人と比べると、日本人はどうも遊び下手ですね。でもしだいに変わってきてはいるようです。

考えてみると、この万博の真最中に来日したかれらは万博を見ていないし、見る気もないのだった。あの時日本人が万博に熱狂したのは、まだ自由に海外旅行が出来なかったから、というのがあるのかも。実際に半年もの休暇をとれて、それを世界旅行に使える、かれらスウェーデン人から見ると、わざわざ旅先の日本で博覧会を見る必然性がないということかもと、今になって思う。

少しお酒が入った若い夫が遥か彼方を見るような目をして、「想像してごらんなさい。僕らは明日からタイ・ビルマ・インドと旅していくのですよ」と語ったのを思い出す。しかし当時のわたしは外語大を出たものの、九州の田舎の親の家に逼塞していたので、彼のそのことばはあまりにも縁遠いものだった。また、7年後にシリアに行くとは思わなかった。

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