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「幸田文 対話」

      
    「横浜市立図書館」(画像は借りもの)

1997 岩波書店刊 松江市立図書館内で読了

全集には含まれていない雑誌・ラジオ・TVなどでの対談から収録したもの。
いままで何度も言っているが、私は2、3の例外を除いて彼女の書いたものは好きでない。
でもこの対話集は素晴らしい。察するに彼女は会話の方が書くことより得意だったのでは。それは14歳から家事を一手に引き受け、44歳で書き始めるまでは主婦業に没頭し、それだけでなく学校の勉強も嫌いで、全体的に読書量が少なかったことと無関係ではないと思う。父親・幸田露伴譲りの生まれつきの言語能力はあるにしても。

まず対話の相手の名前を一覧するだけで、期待に胸が膨らむ。

幸田文(1904-1990)

★年上の相手 
           (左が相手、右が幸田文の年齢)
志賀直哉  (1883-1971)   73 vs 51
江戸川乱歩(1894-1965)    63 vs 52
徳川夢声 (1894-1971)    63 vs 53
木村伊兵衛(1901-1974)    53 vs 50

★年下の相手

辻嘉一 (1907-1988)    53 vs 56才
山本健吉 (1907-1988)    56 vs 59    
西岡常一 (1908-1995)     65 vs 69
沢村貞子 (1908-1996)     67 vs 71
小堀杏奴 (1909-1998)       41 vs 46          
関口隆克 (1911-1987)    58 vs 65
高橋義孝 (1913-1995)   40 vs 49
田村魚菜 (1914-1991)   48 vs 58
矢口純 (1921-2005)        63 vs 80
辻邦生 (1925-1999)  56 vs 77
美輪明宏 (1935      23 vs 54

23歳の美輪明宏(当時は丸山明宏)との対談では、まずその衣装を細かく描写している。彼の骨太さに「やはり男ね」とたびたび言い、「あなたは女性が好きなのね」という的外れな発言をしている。彼女は芸者置屋で働いたこともあり、女学校時代の経験から女の同性愛は知っているが、男性のそれには無知だったようだ。まあ、当時はまだ、マスメディアでの露出も少なく、一般に人々は知識がなかったのだし、30年以上の年齢差のある若者と対談する勇気はたたえたい。

また、彼女を、文豪の娘だとか江戸前のおしゃべりとか、あれやこれやを意識して硬くなる人と、平気な人に分かれるが、年齢とは関係がないようだ。
江戸川乱歩は彼女よりずっと年上なのに、終始丁寧でよそよそしい態度。
高橋義孝は初めから平気でしゃべりまくっていた。
料理人でも関西の辻嘉一は平気だが、田村魚菜は緊張していた。
小堀杏奴(鴎外の次女)との対談は、父親に可愛がられた杏奴と疎まれた文が好対照をなし、なかなか興味深いものがあった。杏奴のずばりと露伴を批判する発言は、おできにメスを入れるようで、気持がよかったが、文としては痛し痒しだったかも。他人に言われる前に自己分析しておけばいいのだろうが、そこが足りないのである。

幸田文関連の記事は
→「草の花」2008-8-20
→「おとうと」2010-2-14
→「自伝的交友録」2010-01-24
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