乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 21 「いてゝ遊(ゆ)かハ 心かるしとわらハれん 世の方西(ほうさい)を 人ハしらねは」十一丁表 十一丁裏 十二丁表 

2020-06-17 | 在原業平、そして、伊勢物語 と、仮名草子 仁勢物語

 

 

 富田高至 編者

 

 

恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 21 十一丁表 十一丁裏 十二丁表 

 

和泉書院影印業刊 65(第四期)

1998年 初版

1997年 第三

 

十一丁表 

◯をかし男いと かしけおとろへて、米銭もなかりけり、

さるをいな事をならひて、いさなふ物につきん

よの事をへんと思て、出ておとらんと思て、

鉦(カネ)なとをかふて、顎(あご)にかけける、

  いてゝ遊(ゆ)かハ 心かるしとわらハれん

  世の方西(ほうさい)を 人ハしらねは

とよみをきて、出て申ける、此男、かねをたゝき

おとれど、けしう米をくるへきともおほへねハ

何によりてか、かゝらんと、いといたう申て、いづかたに、もと

めらハんと、門/\に行て、とんつはねつおとれ

と、いつくも ほなしこと、くれさりけれハ、帰入て

左右

十一丁裏 

  おもふ米 くれぬなりけり 銭かねを

  あだにつかひて われやすりきる

といひてながめをり

  ひとはいさ わらひやすらむ われがつら

  水ハかりのみ いとゞやせつゝ

此女、いとひたるくありて、念しわひてにや有

けん、飯をたきけり、

  ひたるさを わするゝ米の めしをたに

  一腹くひて へらせすもがな

返し 

  米のめし めしくふとたに 聞ものならハ

  あまりのなくは 汁もすはまし

十二丁表

/″\ありしとて、飯くひて、男

  おとらんと おもふ心の うた念仏

  あるき/\も、申しぬるかな

返し

  なかき日に 立はる脛(スネ)のくたひれハ 

  かふかひなきも なりにける鉦(カネ)

とハいひけれと、をのか欲にて有りけれハ、有徳に

成にけり

 

十一丁表 

◯おかし男いと傾げ衰えて、米銭も無かりけり、

去る追いな事を習いて、いざ のう物につきん、

世の事を変と思て、出出て劣らんと思て、

鉦(カネ)なとを買うて、顎(あご)に掛けける、

  出でて行(遊 ゆ)かば 心軽しと笑われん

  世の方西(ほうさい)を 人は知らねば

と詠みを聞きて、出でて申しける、此男、鉦を叩き

踊れど、異しう(けしう)米を来るべきとも思えねば

何によりてか、かからんと、いといたう申して、何方に、もと

めらはんと、門門に行きて、飛びつ(とんつ)はねつ 踊れ

と、何處もほなし事、くれざりければ、帰入て

十一丁裏 

  思う米 くれぬなりけり 銭かねを

  あだに使いて 我や すりきる

と言いて眺めおり

  人はいざ 笑い安らむ 我が面(つら)

  水は かりのみ いとどやせつつ

此女、いとひたるく有りて、念しわひてにや有

けん、飯を炊きけり、

  饑さ(ひだるさ)を 忘れるる米の 飯をだに

  一腹食いて 減らすもがな

返し 

  米の飯 飯食うとだに 聞くものならば

  あまりのなくは 汁も吸はまし

十二丁表

まだまだ有りしとて、飯食いて、男

  おとらんと 思う心の歌念仏

  歩き歩きも、申しぬるかな

返し

  長き日に 立わる脛(スネ)のくたびれば 

  買うかい無きも 鳴りにける鉦(カネ)

とは言いけれど、おのか欲にて有りければ、有徳に

成にけり

 

かしけ

 痩せて生気なく

いな事

 風変わりな事、奇妙な事

けしう(異しう)

 どうしても、とても

念しわひて

 念じ詫びて

有徳

 金持ち

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

  いてゝ遊(ゆ)かハ 心かるしとわらハれん

  世の方西(ほうさい)を 人ハしらねは

『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す

  出でて去(い)なば 心軽しといひやせん

  世のありさまを 人は知らねば

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

  おもふ米 くれぬなりけり 銭かねを

  あだにつかひて われやすりきる

『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す

  思ふかいなき 世なりけり

  年月を あだにちぎりて 我や住まいし

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

  ひとはいさ わらひやすらむ われがつら

  水ハかりのみ いとゞやせつゝ

『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す

  人はいさ 思ひやすらん 玉かづら

  面影にのみ いとゞみえつゝ

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

  ひたるさを わするゝ米の めしをたに

  一腹くひて へらせすもがな

『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す

  今はとて 忘るゝ草のたねをだに

  人の心に まかせずも哉

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

  米のめし めしくふとたに 聞ものならハ

  あまりのなくは 汁もすはまし

『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す

  忘草 植ふるとだに 聞く物ならば

  思ひけりとは 知りもしなまし

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

  おとらんと おもふ心の うた念仏

  あるき/\も、申しぬるかな

『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す

  わする覧(らん)と 思ふ心の歌がひに

  ありしよりけに 物ぞ悲しき  

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊     

  なかき日に 立はる脛(スネ)のくたひれハ 

  かふかひなきも なりにける鉦(カネ)

『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す

  中空に 立ちゐる雲のあともなく

  身のはかなくも なりにける哉

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« なんとなく …パン焼き | トップ | 恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

在原業平、そして、伊勢物語 と、仮名草子 仁勢物語」カテゴリの最新記事