仮名手本胸之鏡 下 16 四丁裏 五丁表
早稲田大学所蔵
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仮名手本胸之鏡 下
山東京伝 作
歌川豊国 画
早稲田大学デジタル図書
通油町(江戸) [蔦屋重三郎]
寛政11 [1799]
黄表紙
仮名手本胸之鏡 下 16 四丁裏 五丁表
下 四丁裏
人ハとかく
義(ぎ)といふ
ものがな
けれバ
ならず
義(ぎ)に
より
てハ、いのちも かろん
ずるが、人のみち
なり、天川やがで
とくゑんのおん
をわすれず
大ぼしにたの
まれて、つま子
をすて、ぎを
まもりて
心をへん
ぜざる人の
たましいハ
きんてつの
ごとくにて、
水にいり、火に
いりてもくだ
けるといふこと
なし
大星が曰(いわく)
「うたが日が生れた
もうじいハ/\、まことに天川やハ
まだその中のあまり、ほうづきの
中のさんごじゆじや
大星の前に鍛冶屋二人の頭には、 疑 の文字
鋏で 魂 の文字を日の中に突っ込み、叩く
下 五丁表
わたくしどものてに有り
ましてハいかやうなかたき
かねでもへさげぬと中
ことはござりませぬが
義(ぎ)ある人のたましいハどの
やうにいたしても、とろけ
ませぬ
鏡の下の文字
おとこ の かゞみ
男之鏡
以上(いじやう)十六面のかゞみハみな
さま御そんじのきやうげんを
おもてとし、よの人、きどあい
らくにてけうみて、さま/″\の
かたちをあらハす、そのどう
りをうらとして、こどもしゆ
にちうしんけうていのあらま
しをしやすなり、かゞみハすなハ
ち人の心にとうぜんもあくも
うつせばうつる、かならずあしきにうつるべからず
仮名手本胸之鏡 下 16 四丁裏 五丁表
下 四丁裏
人は兎角
義と云う
物が無
ければ
ならず、
義(ぎ)に
依り
ては、命も 軽ん
ずるが、人の道
也、天川屋がで
特縁の恩
を忘れず
大星に頼
まれて、妻、子
を捨て、義を
守りて
心を変
ぜざる人の
魂は
金、鉄の
如くにて、
水に入り、火に
入りても砕
けると云う事
無し
大星が曰く
「疑いが生れた
もうじいはじいは、誠に天川屋は
まだその中の余り、ほうづきの
中の珊瑚樹じゃ
大星の前に鍛冶屋二人の頭には、 疑 の文字
鋏で 魂 の文字を日の中に突っ込み、叩く
下 五丁表
私どもの手に有り
ましては、如何様な形、
金でも へ下げぬ 途中
事はござりませぬが
義ある人の魂はどの
様に致しても、とろけ
ませぬ
鏡の下の文字
おとこ の かゞみ
男之鏡
以上(いじょう)十六面の鏡は皆様
御存知の狂言を
表とし、世の人、喜怒哀楽
にて、きょう見て、様々の
形を表す、その道理
を裏として、子供衆
に忠臣協定のあらまし
をしやす也、鏡は即ち
人の心に問う善も悪も
写せば写る、必ず悪しきに写るべからず
さんごじゆ(珊瑚樹)
植物。秋にできる赤い実が珊瑚に似ているとして名付けられた。
人の心にとうぜんもあくも
うつせばうつる、かならずあしきにうつるべからず
人の心に問う善も悪も写せば写る、必ず悪しきに写るべからず
きょう見て
狂言を観て