はなし。

熱々のお茶を好むBooじーちゃ。
沸騰したての熱湯で淹れた煮え下ろしのお茶でさえ、目の前に出されたとたん口へ持って行く。
食道が火傷してはえらいことになるので、飲み込む前におかんさまのストップがかかるのだが。
そうするとまた臍を曲げるんだよなぁ…。


年を取ってくると、熱に対する触覚も鈍ってくるからなのだろうか。
と思っていたのだが。


入れ歯の手入れや入浴を面倒がるのは、認知症の症状の一つであるらしい。
ご多分に漏れず入れ歯の掃除が大っ嫌いなBooじーちゃ。
おかんさまが手助けをしているのだが、それでも面倒がっていい加減にすまそうとするので強制回収。
入れ歯洗浄剤の液に投入。
その間にお茶にしたところ……。


通常より「やや熱め」ぐらいのお茶に。


目の前でシャボン玉がはじけた赤ん坊みたいにビクッとするBooじーちゃ。


見たことのある人ならわかると思うが。
総入れ歯ってぇのは、歯茎だけでなく上顎に至るまで、口の中の粘膜のほとんどを覆っているものである。
そして、Booじーちゃ。は、ほぼ総入れ歯（一本だけ自分の歯がある）。


熱湯に近い温度の茶に平然としていたのは。


どうやら入れ歯のせいで、熱さがわからなかったから、だけのようである。


その後。
「熱いから気をつけてね」と言うと。
それまで平然と飲んでいたお茶でも慌てて吹き冷ましているBooじーちゃ。であった。





歯なしな話。