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民主党の小沢一郎氏の外交観 国連中心主義、ルーツは…

2007-10-18 02:08:27 | 国内政治
 小沢一郎氏の外交観 国連中心主義、ルーツは…
 
 国連の活動に積極的に参加することは武力の行使を含んでも憲法には抵触しない--小沢一郎民主党代表が月刊誌「世界」(岩波書店)11月号に寄せた論文が波紋を広げている。それによると政府がこだわるインド洋上の給油活動はノーだが、政府もためらうアフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)への参加はできるという。小沢氏の国連重視の外交・安全保障観のルーツを探った。【山田道子、田中義宏】

 ◇湾岸戦争の教訓、戦後の憲法観を整理

 「国際平和の維持・回復のために国連が行う実力行使に日本が参加・協力することは『正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求』する日本国民にとって当然のことであり、憲法9条の趣旨に沿ったものだ」。「そのような国連の実力行使に対し日本が参加しても国連の行動の一環であって、日本国の主権発動の性格を有しないものであり、憲法9条が放棄した戦争・武力行使とはまったく異質のものと考えられる」

 これは、1993年2月、自民党総裁直属機関で小沢氏が会長を務めた「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(通称「小沢調査会」)の答申の一節だ。背景には、90年のイラクのクウェート侵攻から91年の湾岸戦争に至る冷戦崩壊後の国際情勢の変化があった。

 当時、日本は初めて「国際貢献」という問題を突きつけられた。自民党幹事長だった小沢氏は「あの戦争は幕末の黒船来航と同じ」「日本はこういう時にこそ国際社会できちんとした役割をシェアする一人前の国家にならなければならないと考えた」と「小沢一郎政権奪取論」(朝日新聞社)で振り返る。小沢氏は野戦病院での医療活動や難民輸送をしようと動いたが、実現しなかった。政府は130億ドルを拠出したものの、国際的には全く感謝されないどころか、「金は出すが汗はかかない」と批判され日本外交のトラウマとなった。

 戦争終結後、ペルシャ湾に掃海艇が派遣されたのを機に長期的な日本の国際貢献のあり方を検討するため設置されたのが小沢調査会だった。答申は「我々の行う憲法解釈はこれまで議論されてこなかった政府解釈の空白を埋めるものだ」としたが、自民党内からも反対意見が出て、最後は小沢氏らの離党で答申は宙に浮いた格好となった。

 その後も小沢氏は著書「日本改造計画」(講談社)などで「国連の平和活動への協力は今の憲法のままでできる」と繰り返し、憲法9条を改正して国連常備軍を創設することも主張している。その流れから、今回の「世界」の論文の趣旨も唐突なものではない。

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 「あの答申の考えは我々二人の共同作品だ」と語るのは、一緒に答申をまとめた平野貞夫元参院議員だ。湾岸戦争時、衆院委員部長だった平野氏は日本の対応を検討するため小沢氏の指示で資料を集めた。そしてまとめあげたリポートが「護憲開国論」だった。

 平野氏によると、答申のポイントは憲法前文の精神を体して9条を読みかえた点。大きな示唆を受けたのが、1946年の憲法制定論議での南原繁貴族院議員や吉田茂首相らの考え、国際法学者の横田喜三郎氏や憲法学者の佐藤功氏の見解などだったという。

 南原氏は9条の問題点として、国連加盟後の国際貢献の妨げになることをあげ、吉田首相は独立の回復が第一だとして明確に答えなかった。横田氏は「国連の強制措置は国際警察活動なので憲法と矛盾しない」、佐藤氏は「国連軍に参加することは9条の理念に合致する」と主張した。つまり「昭和20年代の共通認識が冷戦でゆがめられたのを湾岸戦争を機会に整理し直した」(平野氏)。

 今の状況について平野氏は「憲法に基づいて対応するには小沢理論しかない。第二次世界大戦での日本の悲劇は基本原則がないままズルズルと戦争に突入したことだ。原則なしで事実関係を積み重ねていくことが一番危険だ」と指摘する。

 小沢氏の論文は「世界」10月号で国連本部政務官の川端清隆氏が小沢氏のテロ対策特別措置法の延長反対姿勢に対し、「実効ある代替案を用意する準備と決意があるのか」と疑問を投げかけたことに対する回答だった。民主党事務局長も務めた政治アナリストの伊藤惇夫氏は「政府・与党が特別措置法を積み重ねていいかげんなのに対し、小沢さんは原理原則に基づくきちんとした対応があることを示したかったのでは」と見る。

 しかし実際には、政府・自民党は「国連決議があれば武力行使もいいというのは、わが国が一貫してとってきた考え方と相いれない」(高村正彦外相)とし、民主党内からも「党の決定ではない」との声が上がる。

 「今出すのはどうかという話はあるが、小沢氏の反論と理解していい。党内には個人的意見としておけばいい」と藤井裕久・民主党最高顧問は語る。また小沢氏はISAFに参加するにしても民生安定分野を想定していることを明らかにした。

 「この問題について世論は与党案のほうが安全でお金でカタがつくからいいというのが大勢だ。民主党にとって、これを争点にすること自体がマイナスだった。自民党のステージに乗せられてしまった」と伊藤氏は指摘する。

 日本は戦後、外交の柱として「対米協調」「アジア重視」と並んで「国連中心主義」を位置づけてきた。しかし、今回の小沢氏の発言に伴う与野党の論争は、その柱そのものがいかにあいまいなものであるかをはからずも証明したことになったのではないだろうか。

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 ◇解釈に無理ある--改憲論者の小林節慶応大教授(憲法)

 湾岸戦争で小沢さんと同じような問題意識を持ち、小沢調査会で講演するなど協力したが、「国連の下では武力行使できるという解釈は無理だ」と当時伝えた。

 小沢氏は憲法前文で「平和を維持し、専制と隷従……を除去しようと努めている国際社会において名誉ある地位を占めたい」とうたっているから国連の活動に積極的に参加するとしているが、この憲法は日本が戦争をあきらめれば世界は平和になるという前提で書かれた。つまり日本が非戦非武装を貫くことがここでの「名誉ある地位」だ。

 憲法9条1項で「国権の発動たる戦争」という表現をしているのは、宣戦布告がなくても国家以外の集団による交戦でもすべての「戦争」を否定するためだ。「日本国権」と「国連権」を区別するためではない。小沢さんは国連理想主義だが、現実には世界中央政府のような国連は存在しない。正式な国連軍はなく、実際には多国籍軍だ。そこに各国は自国の決断で自国の旗を立てて参加する。あくまでも国権の発動となる。従って国連による国際安全保障活動でも、日本は憲法上、海外で武力行使はできない。

 民主党はまず小沢氏の論文が個人的見解であることを確認したうえで、むしろアフガニスタンにおける米軍等の軍事活動に不可欠な給油活動こそが違憲であることを明らかにすべきだろう。

(出所:毎日新聞 2007年10月17日 東京夕刊)

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