昨日、日銀が、2%のインフレ目標を採用し、政府とともにその達成に努力することになった。安部総理は、これは、画期的なことと自賛した。しかし、それは、自賛に値することなのだろうか。
ロイター・ニュースは、次のように述べる。
日銀は今回、2014年から期限を定めない資産買い入れ方式を導入することを決定したが、2013年に関しては現行方式を継続するとした。現在の残高目標は2013年12月末までに101兆円であり、13年の増額規模は36兆円となる。だが、今回、日銀が発表した2014年の残高増額ペースは10兆円程度で、それ以降も残高は維持されるとしている。国債の償還などもあり、単純に比べることはできないが、市場では「2014年の緩和度合いは弱まるとの印象を与えてしまう」(シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏)との不安が広がった。
長期国債の買い入れペースも償還などを踏まえると現在は13年上期が1.9兆円、下期が2.5兆円程度と推計されているが、今回決定された14年の買い入れペースは月間2兆円。買い入れは無期限とされているが、緩和強化のイメージには結びつきにくい。
つまり、今年は国債保有残高は、30兆円増やしたが、来年は、10兆円しか増やさないといっているのだ。更なる金融緩和というからには、2%に達するまで、残高の増加ペースを上げていかなければならない。ところが、増加ペースを鈍らせるという。さらに、問題は、今年は始まったばかりといいうのに、何故来年のことをいうのか。レームダックと化した白川総裁の来年の政策を先取りしようという最後っ屁といいていいような内容だ。
安部総理は、この日銀の面従腹背を忘れるべきではないだろう。日銀法改正と改革派総裁の任命で、仇をとるべきだ。幸い、市場の動揺は、現在のところそれほどでもない。それは、日銀がいかに足掻こうとも、すぐに新総裁が任命され、本格的な金融緩和に踏み切るだろうという期待があるからだ。総理がこの期待を裏切ればアベノミクスは、失敗に終わる危険性が増すことになる。
時あたかも、ドイツと韓国が、日銀の独立性を侵害する行為は、通貨安競争を招くと評した。日本のおろかなメディアが大々的に報じている。しかし、ドイツも韓国も、輸出市場で日本の競争相手だ。ドイツは、ユーロ危機による通過下落で、わが世の春を謳歌している。韓国は、通貨操作をやり放題、ウォン安で、日本の日本企業を破綻の淵に追いやっている。この、2国が、日銀の独立性をいうのは詭弁だろう。本音は、日本に復活して欲しくないだけだ。こんなことみ見抜けない日本のメディアは、お粗末だ。日本のやろうとしていることは、アメリカやヨーロッパが既にやっていることに過ぎない。
しかし、国際関係で、自国の不利益ななりそうな事態に対して、即座に牽制球を投げるという両国の態度は、世界標準だ。我が国には、残念ながら、そんな体制も意欲もまったくない。(もともと何が利益かの判断もつかないのだろう。なにせ、自己認識不在の国だ。)ことは、金融政策に留まらない。我が国の対外広報体制には、致命的欠陥がある。早急に改革が必要だろう。
PS: アベノミクスへの批判として国債金利急上昇による財政破綻をいうものが多い。しかし、これは的外れ。そうならないように、日銀が国債を無制限に購入すればいいだけの話だ。