草むしりしながら

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「見てて」の意味

2024-03-26 15:03:35 | 草むしりの子守歌

「見てて」の意味

 もうすぐ三月も終わりますね。月の中旬に末娘一家が里帰りして来たので、この月はなにかと忙しかったです。

 一家は昨年の九月にも帰省していたので、一歳半になる孫娘は生家のことを覚えておりました。とりわけ猫のハナコのことはよく覚えておりました。

 以前は怖がって触ることができなかったのに、今回はハナコの頭を撫でたり尻尾を触ったりすることができました。また姿が見えないと家中を捜し回ったりしていました。

 一方ハナコもほうも孫のとこをよく覚えており、さっそくお出迎えしてくれました。ただ三月に入っての寒さが堪えたのか元気がなく、申し訳程度に出てくるとすぐに姉の部屋に引きこもってしまいました。

 年のせいでしょうか?今年の冬は何度か姉の部屋で粗相をしたそうです。食欲もなく、それでなくても痩せているのに、ますます痩せ細ってしまいました。

 このまま虹の橋を渡ってしまうのではないかと心配をして、動物病院に連れていきましたが、特に悪い所は無いとのこと。ただこれ以上は痩せさせないようにと言われました。

 ちょうど肛門絞りの時期だったので、そのついでに絞ってもらいました。するとみるみる元気になり、食欲も出てきてしきりにご飯の催促をするようになり、孫のお相手もしてくれるようになりました。

 やれやれと安心したのですが、今度は元気が良すぎて困ったこともしてくれました。

 テーブルの上に飛び乗り、皿の上の料理に口をつけようとするのです。今までそんなこと一度もなかったのですが、ずいぶん行儀が悪くなったものです。孫がいるのではしゃいでしまったのかも知れませんね。

 その上孫は孫でテーブルの上の皿を引っ張り下ろそうとしたりて、冷や汗ものでした。それでなくても総勢六人に食事の用意は大変です。孫はママが、ハナコは夫が見ることになりました。

 夫は気安くその役目を引き受けて、ハナコと炬燵に入れると、スマホを見はじめました。案の定ハナコはすぐに炬燵から出てきて、テーブル上に飛び乗りました。そのたびに夫を呼んで連れていってもらっていたのですが、さすがに三度目にキレました。

「祖父ちゃん、ちゃんとハナ見てよ」

「あれ、また出たのか。おいでハナコ炬燵に入ろう」

「だから炬燵に入れたけじゃすぐ出てくるの。スマホなんか見てないで、ちゃんとハナ見ててよ!」

「そうかい?」

 やっとスマホを見るのをやめました。ところが今度はただハナコを見ているだけです。テーブル上に上がろうとするハナコを見ているだけで、止めよともしません。

「祖父ちゃん『見てて』って言うのはね、ただ見ていればいいのではないのよ!悪さしないように見張っていてね。ていうことなのよ!」

「そうかい?」

 夫は私の言うことなど、はじめから聞いていないのでしょう。今度は孫と一緒に炬燵に入ってご機嫌です。娘は大笑いしながら二人にスマホを向けています。

 おかげで炬燵に入った祖父ちゃんと孫が、ニッコリと笑っているツーショットが撮れました。私はそんな写真一枚もありません。まったく夫ときたら、おいしい所だけ持って行ってしまうのですから……。

 ハナコですか?気がつくとどこにかに行ってしまっていました。きっと呆れたのでしょうね。