つばさ

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蚯蚓(みみず)鳴く 越前若水

2012年09月26日 | Weblog
最低気温が20度を切り、朝夕めっきり…
越前若水
(2012年9月26日)
 最低気温が20度を切り、朝夕めっきり涼しくなった。コオロギたちはここぞとばかり、声を張り上げ連日の大合唱。まさに虫すだく秋である▼そんな虫たちの仲間にミミズがいる…と俳句歳時記は言う。確かに秋の季語に「蚯蚓(みみず)鳴く」があって「秋の夜、ジーッと切れ目なく長く何者とも分かちがたく鳴く」と解説している▼昔はミミズは鳴くと信じられていた。江戸時代の百科事典「和漢三才図会」にも「雨ふるときは先に出で、晴るれば夜鳴く…ゆゑに歌女といふ」とある。「蓑虫(みのむし)鳴く」も秋の季語である▼もちろん、ミミズが実際に鳴くはずもなく、田や畑にすむケラの鳴き声をそう呼んだまで。俳人はそれを承知で空想を楽しんだ。「蚯蚓鳴くかなしき錯誤もちつづけ」山口青邨▼ミミズは弱い動物である。鳥やモグラ、アリの格好の餌食。一方、自らは土を食って有機物を吸収、それを排泄(はいせつ)して肥沃(ひよく)な土壌を作る。哲人アリストテレスは「大地の腸」と評価したという▼さらに進化論を唱えたダーウィンは晩年、ミミズの研究に没頭した。ミミズの糞(ふん)には植物の生長に必要な栄養素が含まれ、ミミズがいなくなれば植物は全滅すると言ったそうだ▼今まさに実りの秋。それがあるのもミミズのおかげ。いにしえの俳人が「蚯蚓鳴く」の季語を作ったのも、地道に生きるミミズに感謝し敬意を表したのかもしれない。