つばさ

平和な日々が楽しい

言の葉は (京都新聞:梵語)9/22

2012年09月22日 | Weblog
[京都新聞 2012年09月22日掲載
梵語より

ハンパない日本語
 若者はのんびりすることを「まったりする」と言うが、60歳以上の人はほとんど使っていない。公表された文化庁の国語世論調査を読むと、話し言葉の揺らぎに驚かされる▼中途半端ではないことを、16~19歳の若者の約7割が「ハンパない」と言うそうだ。「すごい」の意味だが、感嘆としても嫌な感じの表現でも使われる。「やばい」や「チョー」と似ているが、どこがどうすごいのか言わずに済んでしまう便利さがある。文化庁は今回の調査から、変化する日本語の典型に加えた▼言葉の用法は、時代とともに移り変わってゆく。例えば今使った「典型」という言葉は、明治時代初めの辞書では御法度(ごはっと)の同義語として登場する。元はルールの意味だが、やがて英語のモデルの訳語として、「代表例」「お手本」の意味へと変化した▼今回の調査に登場しないが、「ハブる」という90年代に生まれた若者言葉がある。ある生徒を、その他のクラスメート全員で無視する時に使う動詞だ▼村八分が語源とされる。江戸時代の村社会の陰湿さを受け継ぐようで、じめじめした嫌な言葉だ。いじめがなくなれば、きっと死語になるだろう▼言葉は生き物であり、人の暮らしを映す鏡だ。言葉は「言の葉」と書く。社会の豊かさが木の幹となって、言葉の森が緑深く生い茂る。日本語の現状はまさに「ハンパない」。

http://www.kyoto-np.co.jp/info/bongo/20120922_2.html


うどん屋の釜(かま)

2012年09月22日 | Weblog
時鐘(北国新聞)9/22
 彼岸(ひがん)に入って、やっと秋の気配(けはい)が漂(ただよ)ってきた。「暑さ寒さも彼岸まで」を実感するが、それでも油断ならないのが昨今の空模様
沖縄よりも北陸が暑い日が何日もあった。長い夏が居座(いすわ)った揚(あ)げ句(く)、すぐに冬が来そうな予感さえする。居酒屋(いざかや)で「春夏冬」と書かれた木札(きふだ)を時折、見掛ける。異常気象の警告ではない。「二升五合」の字が続き、「秋無(あきな)い(商い)、升升(ますます)半升(はんじょう)(繁盛)」と読ませる楽しい言葉遊びである

きのう、この国のリーダーを選ぶ大事な選挙があった。はた目には消去法(しょうきょほう)の見本のような選挙に見えて正直、「黒犬の尻(しり)」だった。黒犬は尾も黒い。つまり尾も白くない(面白くない)。加えて、政権与党は「植木屋の庭」。やたら木(気)が多い。浮気や移り気の離合集散(りごうしゅうさん)がまだ続くのか

クビがつながった首相は、かっこいい演説をぶった。「うどん屋の釜(かま)」にならないことを願う。店の奥の釜の中は煮(に)えたぎる「湯(ゆ)だけ」。「言うだけ」の政治は、もう、うんざりである

もっとも、政治家に対する過剰な期待も禁物(きんもつ)。たとえ失望しても、「便所の火事」、ヤケクソにはなるまい。

曲(ま)がり真(ま)っすぐですね

2012年09月22日 | Weblog

きょうのコラム「時鐘」 2012年9月25日
 タクシー運転手に道を教えたら、「曲(ま)がり真(ま)っすぐですね」という言葉が返ってきた。道はカーブしているが、脇道(わきみち)にそれたりせずにそのまま進む、という念押し
曲がる・真っすぐの正反対の言葉が仲良くつながり、それで意味が通じる。おかしなようで、「言われてみればその通り」という便利な表現だろう。あいにく、手元の分厚い辞書には載(の)っていない。当地独特の言い回しか、それとも、もはや絶滅(ぜつめつ)寸前なのか

日本語の乱れはけしからん、という文化庁の調査が先ごろ報じられた。二つ返事を「一つ返事」と間違える。「失笑(しっしょう)」「にやける」「うがった見方」も、意味をたがえて使う人が多い。ドキッとした。思い当たるフシが大いにある。わが愛する「曲がり真っすぐ」も、ややこしい言葉として目(め)の敵(かたき)にされるのか

言葉は生きもので、時代を映すという。いま、お国の一大事は、「近いうちに」と「遠くない将来」のどっちが近いのか、という国語の問題だそうな。エライ人たちが日々、解釈(かいしゃく)に挑(いど)んでいる

言葉は勝手に乱れるというより、都合(つごう)よく乱す人が、どうやらいるようである。