つばさ

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ふるさと自慢のタネ 時鐘(北国新聞9月9日)

2012年09月09日 | Weblog
時鐘(北国新聞9月9日)

 蓮如(れんにょ)が入ったかもしれない風呂の跡が、京都で見つかった。約600年前の蒸(む)し風呂だという
北陸で盛んに布教(ふきょう)した蓮如は、この地にも足跡(そくせき)を残す。ゆかりの寺に伝わる宝物に加え、「お手植(てう)えの松」や腰掛けの石など、多くの伝承もある。引っ張りだこだった蓮如に勝(まさ)るのが、弘法(こうぼう)大師(だいし)伝説。地面につえを突いて泉を湧(わ)かせ、井戸や池を作った話が当地にも伝わる

武蔵(むさし)坊(ぼう)弁慶(べんけい)も負けてはいない。持ち上げたり、放り投げたりした巨石がたくさんある。この力自慢の男の物語が大半、後世の作り話だと知ったときには驚いた。蓮如や大師と違い、弁慶は史料の乏しい人物だという。安宅(あたか)の関(せき)で義経(よしつね)を打ち据(す)え、雨晴(あまはらし)海岸で主君のために岩を持ち上げたのも、マユツバ

そうであっても、伝説は大切にしたい。雨宿りで弁慶が岩を持ち上げてくれないと、「雨晴」という美しい名前は消える。安宅の関の勧進帳(かんじんちょう)も、主役を失う

中世の風呂跡など歴史資料の数では、京都が群を抜く。だが、わがふるさとには、歴史のヒーローたちにまつわる豊かな伝説が根付いている。自慢のタネの一つだろう。