つばさ

平和な日々が楽しい

先憂後楽 南風録'南日本新聞)9/19

2012年09月19日 | Weblog

( 9/19 付 )
 「清風明月は買うを用いず」という言葉がある。清らかな風や明るい月は金を出して買う必要がない。めでる心さえあれば、誰でも楽しめるといった意味である。
 中国・唐代の李白の詩が元になっている。こうした故事成語が味わい深いのは「長い歴史の試練に耐え、無数の人々の共感を得て生き残った中国人の霊魂ともいうべきものである」からだろう(合山究著「故事成語」)。
 大器晩成、馬耳東風、青雲の志など、なじみある言葉も元をたどれば中国生まれである。中国が文字の国といわれるゆえんであり、日本文化に与えた影響は大きい。それだけに、過激化する中国国内の暴動は残念でならない。
 沖縄県・尖閣諸島の日本国有化に抗議する反日デモは燎原(りょうげん)の火のごとく広がり、きのうは100都市を上回った。日系スーパーなどが襲撃・略奪の被害に遭い、工場は休業に追い込まれた。臨時休校する日本人学校も出ている。
 中国はここ数年、日本にとって最大の輸出相手国である。鹿児島産の焼酎や農畜産物も食卓に上っているだろう。経済への影響だけでなく、鹿児島市日中友好協会の交流事業も延期された。一刻も早い収束を願うしかない。
 為政者は世の人に先んじて憂え、世の人が楽しんだ後に楽しむ。故事成語にいう「先憂後楽」である。国民の憂いを利用してはいけないと読めるのだが、文字の国に聞いてみたい。