つばさ

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名を汚さないよう、いい生き方をした い 天声人語9/24

2012年09月24日 | Weblog
 天声人語9月24日
「大鵬があったのは、柏戸がいたからこそなんだ」。盟友を悼む納谷幸喜(なやこうき)さん(元大鵬)の言葉である。柏鵬時代ならずとも、拮抗(きっこう)する横綱が東西にでんと座らないと大相撲は締まらない▼これで番付が落ち着こう。日馬富士が2場所続けて全勝優勝し、5年ぶりに新横綱が生まれる。結びの一番、朝青龍が去った角界を背負う白鵬を、しかと組み止め、渾身(こんしん)の投げで転がした。心がけている「お客さんが喜ぶ激しい相撲」だった▼68、69、70代と最高位を占めるモンゴル勢。朝青龍が剛なら、白鵬は柔、反射神経に秀でた日馬富士には鋭の字が合う。剛柔を自在に行き来するスピードと、技のキレが身上だろう▼立ち合いは低く、鋭く、コオロギのごとく突きかかる。動きは時に軽業師を思わせ、押し込まれても土俵際で捨て身の大技が出る。向こう気が強く、受けてさばく横綱相撲ではないけれど、すでに28歳、魅力的な取り口を、地位ゆえに改めることはない▼横綱は、大負けが許されぬ重圧の下で心身を削る職である。戦後は平均26歳で昇進し、31歳で引退している。50場所以上の在位は北の湖、千代の富士、大鵬、40場所でも貴乃花、曙、柏戸、輪島、朝青龍が加わるのみだ▼「名を汚さないよう、いい生き方をしたい」。4年前、大関になった日馬富士の言に小欄は大器を予感した。やや晩成となったが、名だたる先達を変に意識することなく、変わらぬ野性味で暴れ続けてほしい。「楽しませる横綱」という生き方もある。
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