つばさ

平和な日々が楽しい

領土 卓上四季 (北海道新聞)9/24)

2012年09月25日 | Weblog
卓上四季 9/24
領土
東京・銀座の真ん中に他国の領土がある―と聞けば、誰しも驚くだろう。しかも、ここを「領土」と決めた「新政府」は、空き地の寄付などで国土を広げている▼この政府の「首相」は建築家で作家、音楽家などの顔を持つ坂口恭平さん。原発災害で日本政府への不信を高め、現代の経済社会にも根源的な疑問を持つ。土地投機への鋭い批判など、各地にある「○○共和国」とは別次元の運動だ▼銀座の土地は「新政府」の領土第1号。交差点脇の12・5平方メートルで、国と都の間で所有権が定まらず、雑草が伸びるままだった。誰のものでもないなら、大切に使わせてもらおうと考えた▼購入してはいないので土地の所有権はない。ただそれを生かせればいい。その発想の原点はホームレスにある。土地なしでも簡易な家でも長期ローンよりましではないか。財産を持たず金銭的な取引はしなくても、自立し地域住民に役立つ仕事はできる(「独立国家のつくりかた」講談社現代新書)▼領土を持ち国民がいて、外交権を行使する政府があるのが近代国家。自称「新政府」の緩やかな領土観は想定を超えるが、隣国とのぎすぎすをこうまで見せられると、とても爽やかに映る▼尖閣諸島をめぐる日本の主張は、国際的にも通用しよう。では、相手はメンツを捨てて撤退できるか。知恵を絞らねば、国家への根源的疑問を招きかねない。2012・9・24


蝸牛角上(かぎゅうかくじょう)の争い

2012年09月25日 | Weblog
 【産経抄】9月25
カタツムリの左右の角にある、「触」国と「蛮」国は、領土をめぐって対立していた。中国の古典『荘子』にある「蝸牛角上(かぎゅうかくじょう)の争い」の寓話(ぐうわ)だ。唐代の詩人、白楽天は「対酒」という詩で、そんなつまらない争いはやめよう、と呼びかける。
 ▼中国の最高指導部の誰かが詩を引用して、尖閣諸島について笑い飛ばしていたら、さすが大国の風格と、国際社会から称賛の声が上がったろうに。その絶好の機会になるはずだった日中国交正常化40周年の記念式典を中止すると、中国側が伝えてきた。
 ▼やむを得まい。中国政府は先週、反日デモの暴徒化を許し、現地の日本人を恐怖に陥れ、日系企業に莫大(ばくだい)な損害を負わせた。謝罪するどころか、日本側に責任を転嫁し、経済制裁さえちらつかせている。
 ▼尖閣諸島周辺では、きのうも中国の海洋監視船が、日本の領海内に侵入した。いやがらせを続けて両国間の亀裂を広げているのは、中国である。むしろこちらから、式典への参加を拒絶すべきだった。
 ▼そもそも中国との国交40年は、とても「正常」と呼べるものではない。中国が無防備な日本にどんな謀略を仕掛けて、手玉に取ってきたのか。発売中の『別冊正論 日中国交40年』が、豊富な資料を基に暴き出している。
 ▼「富に随(したが)い貧に随い且(しばら)く歓楽せよ」。白楽天の詩は、「金持ちも貧乏人もそれなりに楽しもう」と続く。胡錦濤政権がめざした「和諧社会」のイメージに近い。ただ現実は大違いだ。共同通信によると、貧富の格差拡大や官僚腐敗への不満から各地で起こった抗議活動は、昨年1年で約18万件にも上った。民衆の怒りをそらして、日本への憎悪をあおる姑息(こそく)な手口も、そろそろ限界ではないか。