卓上四季 9/24
領土
東京・銀座の真ん中に他国の領土がある―と聞けば、誰しも驚くだろう。しかも、ここを「領土」と決めた「新政府」は、空き地の寄付などで国土を広げている▼この政府の「首相」は建築家で作家、音楽家などの顔を持つ坂口恭平さん。原発災害で日本政府への不信を高め、現代の経済社会にも根源的な疑問を持つ。土地投機への鋭い批判など、各地にある「○○共和国」とは別次元の運動だ▼銀座の土地は「新政府」の領土第1号。交差点脇の12・5平方メートルで、国と都の間で所有権が定まらず、雑草が伸びるままだった。誰のものでもないなら、大切に使わせてもらおうと考えた▼購入してはいないので土地の所有権はない。ただそれを生かせればいい。その発想の原点はホームレスにある。土地なしでも簡易な家でも長期ローンよりましではないか。財産を持たず金銭的な取引はしなくても、自立し地域住民に役立つ仕事はできる(「独立国家のつくりかた」講談社現代新書)▼領土を持ち国民がいて、外交権を行使する政府があるのが近代国家。自称「新政府」の緩やかな領土観は想定を超えるが、隣国とのぎすぎすをこうまで見せられると、とても爽やかに映る▼尖閣諸島をめぐる日本の主張は、国際的にも通用しよう。では、相手はメンツを捨てて撤退できるか。知恵を絞らねば、国家への根源的疑問を招きかねない。2012・9・24
領土
東京・銀座の真ん中に他国の領土がある―と聞けば、誰しも驚くだろう。しかも、ここを「領土」と決めた「新政府」は、空き地の寄付などで国土を広げている▼この政府の「首相」は建築家で作家、音楽家などの顔を持つ坂口恭平さん。原発災害で日本政府への不信を高め、現代の経済社会にも根源的な疑問を持つ。土地投機への鋭い批判など、各地にある「○○共和国」とは別次元の運動だ▼銀座の土地は「新政府」の領土第1号。交差点脇の12・5平方メートルで、国と都の間で所有権が定まらず、雑草が伸びるままだった。誰のものでもないなら、大切に使わせてもらおうと考えた▼購入してはいないので土地の所有権はない。ただそれを生かせればいい。その発想の原点はホームレスにある。土地なしでも簡易な家でも長期ローンよりましではないか。財産を持たず金銭的な取引はしなくても、自立し地域住民に役立つ仕事はできる(「独立国家のつくりかた」講談社現代新書)▼領土を持ち国民がいて、外交権を行使する政府があるのが近代国家。自称「新政府」の緩やかな領土観は想定を超えるが、隣国とのぎすぎすをこうまで見せられると、とても爽やかに映る▼尖閣諸島をめぐる日本の主張は、国際的にも通用しよう。では、相手はメンツを捨てて撤退できるか。知恵を絞らねば、国家への根源的疑問を招きかねない。2012・9・24