落ちこぼれ社会人学生の戯言

当初はMOT取得が目的でしたが、現在は諸事情により中断しています。
本文は趣味の口調です。 ご理解下されば幸いです。

履修:技術者の持つべき倫理とは

2006-05-25 22:53:18 | 大学
今、大学の科目で「技術者倫理」なるものを履修している。
自分自身が技術者の端クレであるため、業務に直結するものとして興味を持ったのが
履修理由だ。

ブ厚い教科書の中に、技術者が倫理面で直面した事例がいくつか紹介されている。

で、実は10年ぐらい前に、その事例の一つをTVで見たことがあった。
教科書には、「シティコープ・タワーの危機」との表題で記載されているものだ。

NYのマンハッタンに建設された当ビルは、革新的な設計で重量の低減を図るなど、建設
当初から話題を呼んでいた。
(教科書には書かれていないが、TVではこの点をかなり詳しく紹介していた)
が、完成して暫く経って、設計技師のルメジャー氏は、ある条件下ではビルが崩壊する
恐れがあることに気付く。

大都会の中心部で高層建築物が崩壊したら、被害はとてつもないものになる。
(現在なら、9.11の実例でも判る通り)
氏は、ビルの欠陥を公表すれば、地位も名誉も何もかも失うことになると悩んだものの、
事実を公表し、対策に乗り出す道を選んだのだった。

迅速な対応のおかげで、実際に被害が生じることは無く、ルメジャー氏は技術者の良心
と誠実さを高く評価された。
(名誉を失うどころか、逆に評価は高まった)


自分の恥を晒すようだが、この番組を見た時、実はルメジャー氏に反感を覚えた。
と言うのも、番組の最後で、氏は「技術者は、この時の自分のように誠実な行動を取らな
ければならない」・・のような意味のことを話していたからだ。
それも得意げに話していたから、「自分がミスったことを棚に上げて、よく言えるな!」
なんて憤りを感じた。

今、日本では「強度偽装事件」が毎日のように報道されている。
ルメジャー氏と姉歯元建築士とでは、過失によるものか、故意なのか・・・・等の違いが
あるから、同一視して論じる事は出来ない。
しかしながら、当事者の周囲(行政やマスコミ)の対応を見るにつけ、日本とアメリカの
文化の違いを目の当たりにしたような気がした。

欧米では、何か事故等が発生すると、「当事者の責任」よりも、これを教訓としてどのよ
うに社会に反映させるかを重視すると言われる。
(アメリカには司法取引なんて制度があるって事実が、それを端的に表しているだろう)
シティコープ・タワーの例でも、NY市当局が重要視したのは「対策」であって、ルメジャー
氏の責任追及ではなかった。
(マスコミも然り)

対して日本では・・・・

・・・・書くだけ野暮なような気がする。
マスコミはヒステリックに騒ぐだけだし、行政はと言えば、なんか「対策」を打ち出したっけ?
なんてお寒い有様だから。
(姉歯元建築士を弁護するつもりは無いが、彼の妻には何か責任があったの? この男の
 妻になったことが悪い! なんてマスコミは言いたいのだろうか?)


こんな偉そうなことを書いているが、ルメジャー氏に反感を覚えたってこと自体、自分も
「ヒステリックに騒ぐ連中の一人」なんだ・・・・ってことだろうな。
最初に頭に浮かんだのが、「責任を取れっ!」なんてことだったのだから。

「技術者倫理」について学ぶに連れて、このシティコープ事件を紹介したTV番組のことが
頭から離れなくなった。

技術者が持つべき倫理について、知識として学ぶことは出来るだろう。
だけど、自分がこれからも技術者として生きて行く為には、単なる「知識」として扱うだけ
では駄目な事態も起こり得る。
それこそ、自分が開発したもので、人命に関わる事態のような・・・・

そんな時、自分はルメジャー氏のような行動を取れるだろうか?
批判をしながら、我が身に降りかかった時には逃げたりするんじゃないだろうか?
事実を公表すれば、生活は破綻し、困窮する確率が高いと判っていても、それでも尚、
自分は誠実な行動を取れるだろうか?

「取れる!」と信じたいが、今言ってもそれは単なる言葉でしかない。
だが、少なくとも「己に問い続ける」ことだけは続けたい。


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2 コメント

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Unknown (通りすがりの者)
2007-12-23 21:39:56
通りすがりの者です。
はっきりと覚えていませんがルメジャー氏は、設計ミスをしたのではなくて現場の判断でボルト(?)を変えてしまった事を知り、もう一度構造計算をした結果16年に1度程度の確立の倒壊の可能性に気がついたのではないのですか?
よって姉歯元建築士と比べる意味は無いかと
返信する
シティコープタワー (tube2a3)
2007-12-23 22:30:29
コメントありがとうございます。

随分前にNHKの特集を見ました。
それによると以下の経過だったようです。

・ルメジャー氏は該当箇所をボルト留めで設計。
・施工後、学生から「このような設計で大丈夫か?」との問い合わせを受ける。
・再検討したルメジャー氏は「ボルト留めであれば問題無し」と判断。
・しかしながら、現場判断で溶接による固定に変更されていた。
・強度を再検討→強度不足だと判断。

ここで、これを公表すべきか逡巡したのでしょう。
ルメジャー氏の故意でこのような結果を生じた訳ではありませんが、施工状況を確認しなかったのか? 強度にそれほど余裕が無かったのか?  学生に指摘されるような設計だったのか? 等々・・後付的な理由で叩かれる可能性はあったんです。
日本のマスコミだったらやりそうですよ。

国民性の違いもありますが、自分が叩かれるかもしれないと覚悟した上で、その情報の公表に踏み切り、災厄を未然に防いだから賞賛されたと考えます。

私は建築関係ではないので、その設計内容については論評できません。
人は誰でもミスをやります。 シティコープタワーの設計について強度余裕はあったのかどうかは専門家の判断に任せますが、否定的に受け取られる可能性を覚悟しての行動ですから、技術者の取るべき行動の好例として今でも語られているのでしょう。


姉歯氏とは逆ですね。 ですから、比較として記事に書きました。


それから、大変申し訳ありませんが「捨てハン」的なHNの使用をご遠慮頂けませんか?
これまで「通りすがり」は何度も使わていますので・・。
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