言幸 燕 日記

日々感じたことなどを絵やマンガで表現しています。
マンガでくすっと笑って頂けたら幸いです。

「毎日がアルツハイマー」面白かったです

2012年09月23日 | 雑記 【essay】



ちょっと面白い映画を見てきたので、久しぶりの更新です。
タイトルは「毎日がアルツハイマー」。
50代の娘(映画監督)が80代のアルツハイマーの母親を
2年にわたり撮影し、記録したドキュメンタリー作品です。
娘である関口さんは、介護のため29年住んだオーストラリアから単身帰国。
そこから母娘の暮らしが始まります。

深刻な映画かと覚悟して行きましたが(実際テーマは重いのですが)、
一歩引いた視線で、ユーモアも大切にしながら撮っているので
この親子の掛け合いに時々笑わされました。

お母さんはもともとシャキシャキした人だったらしいので、
呆けていても結構会話もでき、愛嬌があって可愛らしく見えます。
介護してる娘さんの明るさや、姪っ子などの子供の存在なども
救いかなと思いました。

全体的に微笑ましく見れるのですが、アルツハイマーの患者さんが
みんながみんなこんな感じではないと思います。
会話が成立しなかったり、暴力的な面が出るなどしたら、
介護者の苦労は並々ならぬものがあると思います。
いろんなことを考えさせられ、身につまされる映画でした。

映画の中では、アルツハイマーを発症してから進行していく様子や、
病気に関する知識、介護する側の苦労や母娘の葛藤なども見れて、
非常に参考になりました。
観客の中でも高齢者の方がチラホラおられ、
実際、私の隣はおばあちゃんの3人組で占められおり、
関心の高さがうかがえます。

大阪では十三(じゅうそう)にある「第七藝術劇場」でやっています。
十三(じゅうそう)自体あまり行くことがなく、
こんなこじんまりした良い映画館があったんだー!と新鮮でした。
少しいかがわしい界隈にあるので、その雑多な下町の雰囲気も楽しみました。
とてもおすすめの映画です。

アルツハイマーの画家が描いた絵

2012年09月07日 | 好きな作家の絵
最近、脳の病気やら死に関する本ばかり読んでいて、
その流れで偶然見つけた絵ですが、久々にガツンときました。
ちょっと、これはすごいな、何も言えんなと思わされた絵です。
こんな圧倒的な力で迫ってくるものに対しては、
ただただ沈黙するのみです。

作者はロンドン在住のウィリアム・ウテルモーレン。
1990年(当時57歳)の時にアルツハイマー病であると診断され、
病と闘いながらも自画像を描き続けたそうです。


1990年の作品(57歳)
アルツハイマーと診断される



1996年の作品(63歳)
この辺りから自分の名前が書けなくなる












1997年の作品(64歳)











1998年の作品(65歳)







1999年の作品(66歳)



2000年の作品(67歳)


私は恥を承知で告白すると、アルツハイマーの患者でも
絵は描けるだろうと思っていました。
彼らはただ何かが(日付・名前・場所)などが覚えられない、あるいは
記憶できないだけであって、もし目の前にリンゴがあれば、
(リンゴと認識できなくても)
その形をなぞることはできるのではないかと思っていました。
(※もちろん病気の程度によると思いますが)

しかし、アルツハイマーの場合、【空間認識力】が低下することがあるらしく、
そうすると、うまく図が描けなかったり、
階段の段差が分からなかったりするそうです。

空間認識ができないというのは、たぶん、奥行き(遠近)や
立体的な(高さ・深さ)などがきちんと掴めない世界・・・。
脳梗塞の本を読んでいたら、空間認識ができなくなると、
世界が平面的に見え、物と物との境目が分かりにくくなるとありました。
例えば、地面に丸い模様があっても、それを穴と認識できないなど。
(凹んでいるいるように見えない、深さが分からない)

そこで想像するのですが、もし空間認識ができない場合、
鏡に映った自分の姿は、本人にどう見えるのでしょうか?

●自分と背景の区別はできるのか?
どこまでが自分で、どこからが背景かという境界の認識はできるのか。

●顔のパーツを見て、目や鼻や口が何を指すのか
分からなくなることもあるのか。

●鏡の中の顔が自分だと分からない場合、それはどういうことなのか。
自分が無くなってしまいそうな気がするけど、無くなる訳ではないのか。
私が自分の名前を忘れ、家族を忘れ、友達を忘れ、故郷を忘れ、
これまでの経験・記憶を一切がっさい綺麗さっぱり忘れても、
わたしはわたしであるのか。
何をもって、わたしはわたしであるのか。
難しくてよく分からない。

これらの自画像の変遷を見ていると、
きっと彼の見ている世界は、私たちが見ているものの見え方とは
大きく異なっているのだろうと思いました。

彼のアルツハイマーという病気の如何に関わらず、
(病気であるがゆえにより一層、という意味ではなく)
私はこの絵が単純に素直に好きです。
最後の絵などは特に。

※ウィリアム・ウテルモーレンについての詳細は、
エリオット・アキラさんという方のブログが分かりやすいです。
画像などはこちらのサイトからお借りしましたm(_ _)m
        ↓
虚無に飲み込まれた画家