今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

三ッ岩岳・窓明山

2006年11月05日 | 山登りの記録 2006
平成18年11月3日(金)
三ッ岩岳2065.0m 窓明山1842.3m 画像リンクhttp://photo.www.infoseek.co.jp/AlbumPage.asp?m=0&key=1650208&un=118647

 三ッ岩岳という同じ名前の山が西上州にもある。どちらも里から見上げた山頂付近に目立つ岩が三つ見えることから付いた名前ということだ。南牧(西上州)の三ッ岩岳は人知れず道もはっきりしない薮山だったが、近年の中高年登山ブーム以降、しっかりした登山道ができ、アカヤシオの山としてその花期には呆れるほど人が押し寄せる山になってしまった。
 
 会津の名峰駒ヶ岳(会津駒)から会津朝日岳に続く山並みは『駒朝日山塊』と呼ばれ、『南会津アルプス』なんていうしょうもない名称が付けられそうになったこともある(奥秩父を東アルプスと名付けようとした方々もいたっけ)。この地域では標高の高い山域だ。両起点の会津駒と会津朝日はポピュラーで人も多いが、中間の丸山岳付近は日本でも有数の秘境といっていい、南会津の核心部なのだった。丸山岳登りたいな~。

 会津駒の直ぐお隣、三ッ岩岳は20数年前に一度登ろうと思ったことがあった。その当時この山は、はっきりした道のない『知られざる名峰』だった。小豆温泉から尾根通しに薄い踏み跡を辿って登った記録を雑誌で読んで、じゃあぼくも登ろうと思ったのだが…。行こうと思った日に朝寝坊をしてしまい、急遽日光の女峰山に予定を変更して、どういうわけかそれっきり、登る機会がその後なかったのだ。会津には良く出かけるが、登った山からこの山を見るに付け、やはりずっと気にはなっていた。
 登らなかった理由の一つは、この山が国体の山岳競技の舞台になり、立派な登山道や避難小屋ができてしまった事もある。おかげで湿原の花期には相当な登山者が入山するらしいということを聞くと、少し足が遠のいてしまったのも事実だった。

 10月は3回山に登れた。この3連休もそこそこお天気が良さそうで、どこに行こうか考えていた。今年はいつまでも気温が高いので、まだアルプスだってオッケーなんだけど…。でも、秋はやっぱり会津でしょう(独断と偏見)。連休でもそんなに人が溢れる事は無さそうだし。そこで、心のどこかに引っかかっていた三ッ岩岳がそうして急遽浮上してきた。この時期なら、静かな山が楽しめそうだ。三ッ岩岳に登り、窓明山を周回するコースを辿ることにした。まあ、このところまた頻繁に登っているとは言え、道のある山ばかりで少し物足りない気持もあるが…何となく登り逃していた山に最近集中しているキライもなきにしもあらず。

 前夜発。会津は遠いけれど、道は空いているし、街らしい街を通らないので時間は掛からない。それでも3連休だから、がらがらという程ではなかった。
 田島・伊南・南郷・舘岩は合併して南会津町になった。それぞれに味があり、雰囲気の違う町や村が一緒くたになってしまう「平成の大合併」はここでも同じ。伊南の小豆温泉(昔は鄙びた湯治温泉、今は窓明の湯と宿泊施設)入口にあるスノーシェッドの所に登山口があり、脇に広い駐車場があった。深夜1時。他に車は一台もなかった。5時半にアラームをセットして冬用のぽかぽかシュラフに潜った(ちょっと暑いかも?)。

 アラームで目覚めるのとほぼ同時。何やら外が騒がしい。シュラフから顔を出すと、駐車場に中型バスが一台停まり、中からぞろぞろとお爺さんお婆さんが出てきた。むむむ。総勢20数名、準備体操なんかを早速全員でしている。ヤレヤレ。まあ、この程度の人数なら仕方ないかな。ぼくが、うぐいすパンをむしゃむしゃ食べていたら、団体さんは早くも出発の雰囲気だ。

 早々に支度をし、6時5分にぼくも出発。直ぐ後ろからぞろぞろと団体さんが繋がって登ってくる。スノーシェッドの上を通り、長い鉄階段を登って黒桧沢沿いの登山道に入る。今、丁度この辺が紅葉の盛りで、見上げる山には木の葉の落ちた木々が既に雪を迎える初冬の雰囲気。とは言え、今朝も気温は高めで寒くはない。登っているうちに暑くなってきて汗でびっしょりになってくる。高く望まれる稜線は三ッ岩岳の頂稜辺りか?

 最初からがんがん登っているから、後続のグループはもう遙か下で声がするようになった。ブナの巨木が点在する沢から尾根に取り付き、一段上った辺りで幾つか水流がある小沢を横切る。ここが水場で、まろやかな口当たりの良い水が流れていた。見下ろす伊南川沿いの谷は遙かに低く、田代山や帝釈山のある県境稜線の山々がシルエットになり並んでいた。低い山の頭は出ているが、谷や里は雲海に埋まっていた。間もなく尾根沿いの旧道と合流する。最近は余り歩かれていないのか、旧道は薮がちで草に埋もれていた。石の台座にコースを詳細に解説するアルミプレートが付けられた案内板があった。この先にも分岐などの要所にこれが設置してあった。

 尾根沿いの登りは意外に緩く、ブナの巨木の間を縫うように上に向かう。ブナからシラビソに変わる辺りで右手に窓明山が見えてきた。キツツキがこつこつと木の幹を叩く乾いた音が山に響く。風もなく、間もなく冬を迎える山は穏やかで静かだった。足元にはイワカガミのつやつやした葉がずっと続いている。これだけ沢山あれば花が咲く頃は見事だろう。窓明山の下り辺りはイワカガミではなくイワウチワが多かった。道がぬかるんでいる箇所が多くなり、湿原のある稜線が近いことを窺わせる。オオシラビソの巨樹が目立つようになると、南側が広く見渡せる展望の良い場所に出た。ここで初めて休憩。時刻は8時20分。2時間以上登った訳だが、上りの核心部はもう過ぎた様子。大嵐山や枯木山・田代山・帝釈山・台倉高山が遠く高く見えている。山は雲海に頭を出した島か半島の様だった。

 10分程休んでまた登り出すと小さな湿原が現れた。足元に散らばった枯葉は一面の霜で白くなり、霜に白く縁取られた葉が、まるで作られたアクセサリーの様だった。
 緩くオオシラビソの間を登って丸太作りの避難小屋に着いた。ここが窓明山の分岐になっている。

 避難小屋は思っていたよりも随分疲れたものだった。建築後10数年が経過しているので、外観は大分老朽化してきている。中を覗いたが、キレイに片づけられていて、まだ充分快適に利用できそうだ。小屋の前には塩ビパイプからちょろちょろと水が出ている水場もあった。窓明山方面も笹が刈られ問題無さそうな様子を確かめ、休まず頂上に向かう。

 足元はぬかるんで滑り易い所だろうが、今はまだ凍結しているから問題なかった。先に見え始めた頂上下の二つの大きな岩が見えてきたので足取りは軽い。

 緑の笹の海にらくだ色にパッチワークされた割合大きな傾斜湿原に出た。湿原には傾斜した木道が敷かれ、朝霜で白くなって滑りやすい。この湿原辺りの方が頂上よりも眺めが良かった。今まで見えなかった北東方面が開け、会津朝日と丸山岳が見えた。丸山岳は意外に近くに見え、憧れがかき立てられる。おそらく、この付近で最も登頂が困難なのはここだろう。これらの駒朝日山塊の東側、つまりは伊南の里に近い側には昨年登った大博多山や、登れずに敗退した尾白山など1,000~1,400m程の幾重もの山並があり、この地域の山深さを一層印象づける。

 湿原からはオオシラビソと笹原が交互に現れ、左手が開けて名前の由来になった三ッ岩を一つずつ巻いていく。一番下の岩は青みがかかった岩質で、その上に上がる踏み跡があり展望台になっていた。その岩の上からは頂上よりも広闊な眺めがある。
 笹原が広がった稜線は前回登った岩菅・烏帽子に似ているが、ここの方が笹丈が高く、歩いていると周囲の見晴らしはあまり良くない。同じ様な小山状のオオシラビソの茂みが幾つもあって頂上とだまされる。湿原の下にあった最後の標識「三ッ岩岳山頂0.95㎞」を見てから、しかしそれはなかなか着かなかった。まだか…と思いながら笹の切り開きを登って行くと、いきなり目の前に壊れかけた「三ッ岩岳山頂」の標識があった。あまりにも突然の到着。

 10時に山頂着。登りはじめて4時間を要した。ほぼコースタイム通りで、意外に時間が掛かった。三ッ岩岳山頂は狭く、ハイマツと笹の一角を切り開いた少し薮っぽい雰囲気の所。南や西に展望があるが、北側は隠れて見えなかった。南に笹が切り開かれて一段降りた所の展望が良かった。この時間は太陽が正面で、南の眺めはまぶしくてほとんどシルエットだ。笹とハイマツの稜線がのびやかに続く西に、会津駒・中門岳があり、手前に大きく南に張り出したコブが大戸沢岳か?笹のカーペットが逆光に光っている。見下ろす下には、この山を紹介するガイドブックで良く見る、例の三ッ岩がアクセントの眺めがあった。笹とハイマツの他、シャクナゲもかなりびっしりと塊を作っていた。花が咲く頃は素晴らしそうだ。

 風もなく、陽射しは暖かく、11月の2,000m峰頂上とは思えない穏やかな日和だった。しかし、この狭い頂上であの団体さん達と一緒では居る所が無い。そのグループは、しかし、まだまだここにやってくる気配もなかった。3連休にして、幸いにも独り占めの山頂を楽しめた。三等三角点に壊れかけた山頂名板と小さな木製標柱(大博多山にも同じものがあったから、これは伊南村で立てたのかな?次の窓明山にもあったし…)30分ほど休んでパンやおむすびを食べ、山頂を後にした。下りだして、小広い湿原まで降りてきたら団体さんが登ってきた。思ったよりもこのグループは足並みが良く、みなさんとてもお元気でした…。

 窓明分岐から一気に下り、正面に低かった窓明山を見上げる鞍部まで降りる。下る途中で湧きだした水量の多い水場もあった。三ッ岩岳と窓明山の鞍部には小さな湿原が広がり、そこには池塘もある。三ッ岩池という名前らしいが、そこまで木道は繋がっていなかった。遠目に見えた池塘は青空を反映して、山上の青い瞳だ。三ッ岩岳よりも一層静かな雰囲気で、ここまで回る人は少ないのだろう。事実この日、この周回コースを辿ったのはぼくだけだったようだ。

 下ってきた三ッ岩岳は大きく高くシルエットになり、全く違った雰囲気の山に見えた。頂上部の三岩がごつごつと角の様で、ここから見た方が三ッ岩岳という名前にふさわしく思う。鞍部から窓明山に登り返す辺りで、北西の展望が初めてあった。越後三山方面が見える、と言っても越後駒と中ノ岳で、その間には八海山ではなく荒沢岳が鋭いピークを立てていた。丸山岳から窓明山に繋がる、高幽山や坪入山の山並みも見晴らせる。これらは直ぐそこに見えるが、簡単には登れない山々だ。

 登り返して家向山分岐から少し進んだ所が笹藪の切り開きで、窓明山の山頂だった。12時12分に到着。南に少し下がった所から眺めがあるが、ここも北面の展望は無かった。やはりここにも、三ッ岩岳と同じ壊れかけた山名標識と、小さな木製標柱と、三等三角点があった。座っていると高い薮で何も見えなくなる。

 一段下がった見晴らし場に店を広げ、ここで湯を沸かし、カップ蕎麦を食べる。誰も居ない静かな山頂を満喫するのだった。これから下っていく家向山やその下の巽沢山にうねうねと尾根が続いていた。伊南の山並みが目の前、向かいに高畑スキー場が低く、その向こうに七ヶ岳と、続く平らな舟ヶ鼻山が見えた。のどかな会津の山々は親しみ易い様相だった。

 12時40分に窓明山から家向山分岐を下る。三ッ岩岳はいよいよ大きく立派な山容だ。この方角から見る三ッ岩岳は、会津駒のおまけなんかではなく、どっしりとして重厚な独立峰だった。しばらくは眺めの良い笹の下りが続き、シラビソの森になって、直ぐにそれは見事なブナの原生林になった。すっかり葉を落としたブナの森は、明るく楽しい下りだった。

 家向山に登り返し、また下る。家向山は東西に細長い山頂部を持ち、東と西が少し高い緩い双耳峰になっている。三角点は東のピークにあるが、そこへは行けないようにトラロープで通行止めになっていた。家向山から更に下り続け、巽沢山はどこだか分からないうちに通過して、最後は朽ちかけた丸太階段が落葉に埋まった逆落としの急降下になった。つまづいたら真っ逆さまに転げ落ちてしまいそうな程急な下りで、こういう所はストックが有効だった。

 秋の短い陽が少し傾いた国道に飛び出す。そこには「三ッ岩岳山開き」の幟が左右に立てられていたが、逆にここを登り口にした場合、特に何の印もない所だった。少し国道を進むと、そこに『第50回国民体育大会「ふくしま国体」山岳縦走競技コース 三ッ岩岳~窓明山』のコンクリート製標識があって、かつてはここが登山口だったようだ。この旧道入口は今では薮に埋もれ気味になっている。

 朝出発した小豆温泉スノーシェードまでてくてく歩く。10分ほど歩いて3時20分に駐車場に到着した。朝のバスはもうここにはなく、替わりに5台ほど他県ナンバーの車が停まっていた。ぼくが出発した後に入山した人が数人いたようだが、窓明山まで足を伸ばした人は他にはいなかったようだ。

 目の前の小豆温泉「窓明の湯」はパスして、帰りは伊南の古町温泉「赤岩荘」の湯に入る。ここは赤い湯が名物の秘湯ということだが、休日なので地元の人ばかりではない。狭い露天風呂や内湯はのんびりゆったりと言うわけにはいかなかった。石けんがあると言うことがHPに書かれてあったのだが、そこには何もなく、おかげで用意していなかったぼくは石けん無しで済ませるハメに…。でも錆臭い温泉は、何となく効きそうで、いわゆる最近の日帰り温泉施設より温泉らしくて一応満足。

 伊南の小さなスーパーで、この方面に来た時に必ず買って帰る「会津蕎麦」をおみやげに、一路家路に着いたのだった(会津の蕎麦は太打ちで大のお気に入りなのでした)。連休中だが道路の渋滞もなく、日光で夕食を済ませ夜8時には帰宅できた。

 長年登り逃していた三ッ岩岳だったが、幸運にも静かな登山が満喫できて満足だった。特に窓明山と三ッ岩岳の鞍部付近は池塘もあり、清浄な秘境の雰囲気に満ちていた。今年登った山でも前回の烏帽子と同等レベルの素晴らしい山でした。

※参考コースタイム(単純に到着・出発した時間です)
小豆温泉登山口6:05→旧道分岐7:40→避難小屋9:18→10:00三ッ岩岳山頂10:32
→避難小屋11:04→12:12窓明山頂12:37→家向山頂14:00→小豆温泉15:20

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2 コメント

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三岩岳、窓明山 (しぼれ)
2006-11-06 21:04:29
あさぎまだらさんのアルバムの山頂から見下ろす三つ岩のロケーションは大好きで、遠景もはっきり見えて最高です。私たちが以前登ったときは遠景がボケて見えませんでした。
機会を見て未踏の窓明山をセットにまだ見ていない三つ岩からのパノラマを見に再訪したいと思います。
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ラッキーでした (あさぎまだら)
2006-11-06 23:27:18
お天気も良くて。人も少なくて。
本当にほぼ独り占めの山でした。
特に三ッ岩岳と窓明山の間辺りは、人の気配もない静寂境の上、景観も優れていてお奨めのポイントです。

周回しないで下ってしまうのは惜しいと心底思いました。
何時までも心に残る場所になりました。
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