今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・茅ヶ岳、曲岳、黒富士

2010年06月09日 | 山登りの記録 2010
平成22年6月6日(日)
金ヶ岳1,764m、茅ヶ岳1,703.6m、曲岳1,642.4m、黒富士1,633m、升形山1,650m

 間もなく梅雨に入ろうという時期になっている。今年は梅雨入りが遅れそうだという予報だが、陰湿な梅雨の場合しばらく山に登れなくなることも考えられる。例年だと、梅雨入り間近の晴れは、最高の快晴になることが多いが、今年は普通では無いようだ。2週続けて日曜が雨混じりだった。しばらくぶりの日曜晴れ予報に変わったので、昨年来、一度登っておこうと思っていた茅ヶ岳に向かうことにした。茅ヶ岳だけでは時間が余ってしまうだろうから、直ぐ隣の曲岳と黒富士、もしまだ余裕があれば、太刀岡山まで周回?できればと考えた。南アルプス方面の予定も、幾つかあるのだが…。

 茅ヶ岳は、いわゆるメジャーなハイキングの山だ。200名山とか、深田久弥が事切れた山というオマケ付きで、登る人は多い様だ。ぼくは、この山をいつも奥秩父の稜線から眺めている。奥秩父主稜線から見下ろす甲府盆地方面の眺めに、何時もこの山はちょこんと目立って見えていた。『ニセ八ツ』というありがたくない名前も持っている?中央線を利用して中部山岳を目指していた昔の登山者が、車窓から八ヶ岳に似ているこの山を見間違えるから、ということかららしいが…既にこの名前も死語なのかなあ?イマドキ中央線を利用して登山する人も少ないだろう。

 土曜の夜7時半に家を出て、長野経由で山梨に向かう。今回は、川上村から信州峠を越えて山梨に入った。増富ラジウム鉱泉の分岐を下り、茅ヶ岳の下をぐるりと横切る茅ヶ岳広域農道から、今回の登山口である観音峠まで上り上げた。観音峠に着いたら、午前0時を回ってしまった。茅ヶ岳登山口は、NTTの無線中継アンテナ管理道路口脇にあり、そこから200mくらい先が観音峠で、曲岳登山口があった。茅ヶ岳登山口前の道路脇に、4,5台停められそうな駐車スペースがあった。アラームを5時にセットして、今回から3シーズン用にしたシュラフに潜った。

 5時のアラームが鳴る直前に目が覚めた。霧が巻いて上空は見えないが、晴れていく朝霧だろう。朝霧の向こうは明かるかった。眠くて少しぐずぐずしていたが、5時半近くに起き、パンを食べ、支度をして、5時40分に階段状になった登山口から登り出す。入り口の説明看板によると、このコースは他の茅ヶ岳登山コースに比べると険しいので初心者だけでは入らないように、という注意書きがあった。しばらく藪っぽい道を登っていくと、NTTの大きな無線中継所のアンテナが立っている。そこから急な登りが始まり、一登りすると、その無線中継所が見下ろせる痩せた岩混じりの尾根に出た。

 早朝からツツドリ・ホトトギスといった定番の鳥の鳴き声に混じって、アオバトの何となく熱帯の森を思わせる鳴き声が新緑の森にこだましている。他にもウグイスやホオジロなど森の中は初夏の野鳥達で賑やかだ。うっすらと尾根上部は霧に包まれている。もう、夏の朝を思わせて、急な登りは暑くなって汗をかく。あちこちにミツバツツジが彩を添えている。丁度花期のようだが、少し遅いのだろうか?赤紫の花群を新緑の山の斜面に点々と配置して、この山にこの木が多いことを年に一度アピールしている様な情景だった。

 牙のように尖った岩が上に見えている。簡単な鎖場やナイフリッジの道を過ぎてそこまで登ると、『船首岩』とプレートがあり、少し進んだその船首岩の上からは展望が開けていた。山はみな上部を雲(霧)に隠していてまだ見えない。

 船首岩から先も、痩せた岩場や、いくつか鎖やロープが垂れた岩場があった。背びれのような岩脈を絡めて行くと、上からごろごろと落石の音がして、間もなく、もの凄い速さで黒い物体が直ぐ10m程下の斜面を横切って消えた。興奮したようなしゃーしゃーという声を発していた。クマ?イノシシ?一瞬のことで、何だか分からなかった。まあ、あの勢いで去っていったのだから、もうやってこないだろう。多分…ね。色と動きと声からクマのようだったが…。登山口にクマ・イノシシに注意とあった。ここは彼らの縄張りだから居て当たり前、ニアミスも仕方ないだろう。

 痩せた尾根から急な斜面になった。アオバトの声も微かになり、ミョーキンミョーキンというエゾハルゼミの鳴き声も混じるようになった。鳥にセミに、初夏の山は賑やか。

 急な登りが緩んで、茅ヶ岳と金ヶ岳の間の南峰茅ヶ岳分岐に7時14分に着く。登山口から1時間半程、意外に登り甲斐がある。『茅ヶ岳へ40分』の看板があった。まずは最高点の金ヶ岳へ向かう右手(北)の道を辿る。間もなく展望が開けた南峰に出る。と、ずらりと雲海から頭を並べた南アルプスの山々が視界に飛び込んできた。素晴らしい眺め。鳳凰三山の奥に、北岳等の白峰三山が光り、仙丈と甲斐駒が北に連なる。随分雪も消えたようで、真白いのは北岳くらいで、斑な残雪も細くなっている。茅ヶ岳本峰の東に、雪の筋も少なくなった富士山が薄っすら浮かんでいた。

 南峰から一旦急な下りを降り、登り返して金ヶ岳山頂に7時22分に着いた。朝なのに意外に暑くてピッチが上がらず、それでも2時間は掛からず1時間40分程。金ヶ岳山頂は南西の展望は良いものの、北東側は木々に遮られて眺めはない。茅ヶ岳と言った場合、金ヶ岳・南峰・地図上の茅ヶ岳の三山の総称だろうが、この金ヶ岳は最高峰ながら三角点は無かった。展望自体は南峰と金ヶ岳山頂手前のほうが良い。

 まだ誰も居ない金ヶ岳山頂で豆大福を食べ小休止(豆大福は好物です)。荷をまとめたら汗びっしょりのハイカーが南峰方面から一人やってきた。入れ替わりに7時39分に金ヶ岳を下る。イワカガミが足元に咲いている。急な下りを登り返して南峰から茅ヶ岳本峰(といっても、3つのピークで一番低い)に向かう。向かう茅ヶ岳は一度大きく150m程下って、また100m上り返すので結構きつい。鞍部付近で単独ハイカーとすれ違う。最低鞍部付近にきれいに穴が開いた石門がある。ルートはこの穴を潜っていく。岩の北側にはイワカガミがへばりついて咲いていた。

 急な登りでまた汗をかき、8時21分に茅ヶ岳山頂に着いた。山頂には4人ほど休んでいた。皆、大明神の登山口から登って来たようだ。ここも南西方面の展望はあるが、北東方面は見えない。富士山の方角は雲のベールで見えなかった。南アルプスの眺めも少し霞み勝ちになる。あちこち欠けた三角点(多分二等・欠けていて読めない)の他200名山とか山梨100名山とか、例の串団子みたいな山頂標識(山梨や長野の山に沢山ある)など賑やか。風も無く陽が当たっている山頂は暑く感じる。後からまた2人程やってきて、人が多い山頂は居心地も悪く、8時32分に下る。

 再び南峰に登り返し(疲れる)、観音峠へのルートを引き返した。観音峠に戻るまで、5,6人2組のパーティーとすれ違った。船首岩のてっぺんから、次に向かう結構なそそりたちを見せる曲岳を確認する。うっすらと瑞牆山や金峰山など奥秩父主稜線も見えている。10時39分に登山口に戻る、駐車場は5台程車が停まっていた。ここから観音峠まで歩き、曲岳登山口から再び10時49分に登り出す。観音峠の駐車スペースにも5,6台車が停まっていた。

 岩がらみの道を辿って、めまい岩という展望の良い岩から登って来た茅ヶ岳を見上げる。緑が深くなった色合いで、いかにも暑そうな眺め。めまい岩で眩暈を起こしたら、切れた下まで真っ逆さまだ。岩の多い(石灰岩やチャートで茅ヶ岳の火山岩とは違う)道が終わると、一直線に急な登りになる。一箇所また岩場を過ぎ(ここでまた一人年配ハイカーとすれ違う)、山梨100名山の標柱と、三等三角点がひっそりと樹林に囲まれ、眺めのない曲岳山頂に11時31分に着いた。山頂の少し先で南西の眺めが得られる所があり、そこで小休止。誰もいないここでコロッケパンを食べる。黒富士方面は幾つものコブで、どれが黒富士なのか不明?土饅頭みたいな鬼頬山や太刀岡山は直ぐ分かる。

 曲岳から急降下で、しばらくだらだらした上り下りをして、ミズナラやカエデの樹林を進み、12時11分に谷間といった雰囲気の八丁峠に着いた。黒富士方面から引き返してきた家族連れとすれ違う。このグループが峠から東に下る道に降りていった(観音峠と示されている)ので、エアリアには記載のないこの道を帰りは利用しようと思った(当初は太刀岡山周回とも考えたが、今日の暑さと余りに長い帰りの道路歩きを考えたら、今日は黒富士までとこの時決めた)。

 八丁峠を緩く上り返し、コル状の地点からほぼ平坦な道が続く、左手に見えるコブが升形山らしい(これは最後に登ろう)、その先の鞍部状の地点には太刀岡山方面の分岐があった。分岐を過ぎて急な登りになり、わずかで素晴らしく眺めの良い岩場に登り着く。升形山とその向こうに少し遠くなった曲岳の三角ピーク、その向こうに遠くなった茅ヶ岳が見える。東は奥秩父主稜線が高く連なり、北に八ヶ岳が見えた。展望岩の直ぐ上が樹林で眺めが無い黒富士山頂だった。12時37分黒富士着。ここにも山梨100名山の標柱がある。3人の人が休んでいた。直ぐ先に展望台があるが、ここは意外に眺めも良くないし、狭い上に2人連れがお食事中なので早々に退散。山頂手前の眺めの良い展望岩で湯を沸かしてカップラーメンを食べた。しばらく展望岩で眺めを楽しんで大休止。あまりすっきりと晴れては居ないが、今日の中ではここが一番眺めが良かった。

 1時30分に展望岩から下る。もう山にヒトケが無くなった様だ。みんな降りていってしまった。升形山に一登りする。升形山に1時50分着。この山頂は石灰岩の岩頭になっていて、今日登った山頂では一番眺めも良く雰囲気の良い場所だ。もう誰も居なくなった山でしみじみと山の良さを満喫した。ここから奥秩父主稜線との間には、深々とした森林のヒトケの無い山々がかなり沢山連なっている。ここから見る黒富士は岩場が目立ち、反面が岩峰といった感じで烏帽子状に尖っている。その下に鬼頬山が並んでいる。緑濃い森からは、またエゾハルゼミの合唱が聞こえていた。

 2時28分に、今日の最後のピーク升形山の岩頭から下り、八丁峠から東に降りる。直ぐに沢に下り、感じの良い渓流沿いを少しで、『山梨100名山、黒富士登山口』の標識が立つ観音林道に2時52分に降りた。観音林道をてくてくと歩き、斜面崩壊で復旧工事中の場所を通過し、3時23分に観音峠(曲岳登山口)に着いた。停まっていた車は2台になり、その2台も帰り支度の最中。3時39分に茅ヶ岳登山口の駐車地点に戻った。ここも車は3台ほどで、着替えていると、茅ヶ岳の下りですれ違った一団が降りてきて、車の主もみなお帰りだ。

 予定していた?(少し欲張りすぎか…)山を2つばかり残したが、そこそこ長い一日コースだった様で、脚も疲れた。

 帰りは、旧竜王町(現甲斐市)の甲州街道沿いにある名取温泉(旧名竜王健康ランド)という少し怪しげな日帰り温泉に寄る。ビルの温泉で、地中1000mから湧出した源泉掛け流しを謳い文句にしている。しかし、湯はぬるく、ちょっと場末の(道路沿いの)銭湯という雰囲気。客も少なく鉄さび臭い湯だ。ぼく的には、気軽にゆったりと入れたので、まあ満足。ちょっとやっぱり湯がぬるいかなあ。冬だと厳しいかも。時間制限の無い500円は安い(山梨の日帰り温泉はやや値段が高目なのが多い)だろう。

 すっかり気分も良く、登ってきた茅ヶ岳が、すっきりと晴れた空を背景に聳える眺めを楽しみながら帰路に着いた。家には9時半ごろ着いた。
しばらく気になっていた茅ヶ岳に登って、大変満足でした。

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4 コメント

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エアリアにこの山域の地図あるんですね (ノラ)
2010-06-10 21:40:43
あさぎまだらさん こんばんは。長文の記録を読みおわりました。今でも中央線で山登り行く人は一杯いますよ。私も年1回ぐらいは中央線で山登り行きますからね。電車の方が帰りにビールは飲めるし,寝てこれるしでいいですよ。会津も電車で行けるならもっと電車で行きます。残念ながら行けないので。エアリアにこの山域の地図でてるんですか?知りませんでした。茅ゲ岳の降りで見る甲斐駒って好きですね。
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中央線 (あさぎまだら)
2010-06-11 00:24:09
ノラさんこんばんは。
そうなのですか?バスの便が悪くなったので、電車利用は少ないのかと思ってました。見たところでは、電車、バス、タクシーで登ってきている人が少ないのは事実です。中央線の夜行列車や上越線の夜行列車も無くなりましたね。懐かしいです。新宿や上野の駅に週末登山者が溢れてましたよね。でかい荷物(キスリングなど)を積んで通路で寝ていた人が一杯居ました。
茅ヶ岳周辺は、エアリアの奥秩父・金峰山に出てますよ。甲斐駒は摩利支天が目立ちます。何処から見ても存在感がある山ですね。南アルプスのくくりを外しても、甲斐駒はこの地方の名峰ですね。
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茅ゲ岳で甲斐駒を見て登りたいと (ノラ)
2010-06-11 21:29:12
あさぎまだらさん こんばんは。新宿発11時50分だったかの夜行で甲府で降りて甲府駅の待合室で寝袋に入って寝たもんです。でも最後の頃はこの電車酔っ払いが多くて登山客より終電の酔っ払い電車と言った方が良かったです。酔っ払いは四王津辺りまでで大月を過ぎるとガラガラでした。茅ゲ岳から見える摩利支天を眺めて甲斐駒に行ってみたいと思ったのです。今の中央線登山客は大月までの中央線沿線ハイキング客がほとんどです。
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電車利用 (あさぎまだら)
2010-06-11 23:39:27
ノラさん今晩は。
電車で山に行くのも旅気分が味わえて楽しいものです。確かに、車に比べると荷物を背負ってというハンデがあるし、何より駅からバスやタクシー利用だとお金が掛かります。帰りに一風呂浴びるのも制約が多いですね。ぼくは飲まないので、車を運転するのも問題ないのですが、飲む人はそれが制約?ってことにもなりますね。
車だとピストンか周回しか通常は選べないから、縦走する場合は都合が悪いです。
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