平成21年2月8日(日)
丹沢山1,567.1m、竜ヶ馬場1,504m、日高1,461m、塔ノ岳1,490.9m、木ノ又大日1,396m
新大日1,340m、政次郎ノ頭1,209m、行者岳1,171m、烏尾山1,136m、三ノ塔1,205.2
二ノ塔1,135m
1月に大室山と畦ヶ丸に登った。丹沢は遠くて人が多い所だから、なかなか足が向かなかったが、山そのものは気軽に登れて雪も少ないから冬場のハイキングにはちょうど良い。どこからでも、富士山が近く望まれる。これも、ぼくにとっては新鮮だ。ところで、その主峰の丹沢山にはまだ登っていない。丹沢で一番高いのは蛭ヶ岳で、どう見てもこの山が山容からしても主峰の様に見えるが、名前の由来は丹沢山なのだろうから、丹沢山にも登っておきたかった。丹沢山は一昨年、蛭ヶ岳・檜洞丸に登った時に欲張って登ろうとしたが、日の短い時期で果たせなかった。
1週空けて、また丹沢に向かう。ちょっと通い慣れてしまった?この方面。今回は幾分距離も短いが、やはり4時間ちょっと掛かって宮ヶ瀬湖奥の中津川支流塩水川に架かる塩水橋に着いた。土曜は家でのんびり、昼寝もして夜7時頃に出たのだが、やはり12時を回ってしまった。
今回は、塩水橋から天王寺尾根を登って丹沢山・塔ノ岳と回って来ようと思っていた。前回の大室・畦ヶ丸の時は、10~30㌢くらいの積雪があった。その後、大雨が降ったり、ネットの記録レポを見てもあまり雪は無さそう。でも、一応軽アイゼンは持参することにした。
ヤビツ峠に向かう山の中の道路は、夜中なのにぶーぶー走り回る迷惑な車が沢山。この狭いヘアピン道路はそういった連中の遊び場らしい。塩水橋から奥に向かう林道は遮断されて扉が閉まっている。あまり駐車スペースもないが、やや広くなった道路の隅に寄せて停めた。土曜は穏やかな晴天だった。日曜は冬型になってやや風が強まるという予報だが、今のところ風もなく余り寒くはない。直ぐにシュラフに潜って眠った。
6時半にアラームをセットしていたが、鳴らないうちに目が覚めた。夕べは一台も車が無かったのに、目の前には4台も車が停まっている。ぼくが寝ているうちにやってきて、もう出発したのか?車はみな空だった。パンを食べて支度を始めると、また一台やってきて、車の主は早速登る準備をしている。やはり丹沢でも賑やかなこの辺り、オフシーズン?とはいえ、日曜は登る人も少なくないようだった。
7時に出発。先程の人はまだ準備中で、会釈をして先行する。ゲートの脇を抜け、傾斜の急な舗装路を上に向かう。今日持参したのは20年も前に買ったエアリアの丹沢マップ。あの頃、登りもしないのに、一応計画のため買ったままになっていたものだ。書棚の奥の方にあったものを見つけて、そういえば買ったよなあ、と広げてみた。山は変わっていないから充分使えるだろう。このマップには宮ヶ瀬湖はまだ載っていなかったが、現在ダム湖の回りを周回している道路は既に記載されている。宮ヶ瀬ダム建設中と書いてあった。
その古いエアリアに従って、天王寺尾根に登る登山口まで行くのだが、これが結構遠い。20分と書いてあるのに、一生懸命歩いて?25分掛かかりようやく登山口に着いた。先行していた単独のハイカーがいた。出るときにパーカーを着ていたのだが、暑いからここで脱いだ。準備中だった後続の単独ハイカーも直にやってきた。
林道脇の登山口から登り出すが、林業関係の仕事道が交錯し登山道は分かりづらい。何度か間違える。先に登っていったハイカーも間違えて戻ってきたりしていた。杉林の植林を、上に向かう。至るところにシカ避けのネットが張り巡らされている。次第に尾根状になり、道標があるところからは天王寺尾根に乗ったようで、後は快適に登っていく。向かいの本間の頭の稜線が見えてくる。3つ並んだピークが印象的だ。杉の植林はいつのまにかブナ林に変わる。かなりの巨木も見られ、なかなか見事な樹林だ。ヤマガラの声が森に響き、もう春山の気配。
本間の頭の3峰が縦に並んで見えるようになると、尾根は広まり、平胆になった。塩水川からの道(堂平分岐)を合わせ、間もなく右手がガレになり見晴らしが良くなる。やや霞んではいるものの、座間や町田方面の街並が遠く、大山が形良く背後に見えてきた。行く手の丹沢山の稜線も近づいてきた。ここまで全く雪はない。見上げる稜線も、らくだ色のカヤトが目に付き、雪は無さそうだ。しかし、登山道は霜と凍結で今は快適に歩けるが、融け出すとぬかるみになりそう。
植生保護の為とかで、防腐処理された木製階段がずっと敷設されている。その保護用歩道新設のための資材が、あちこちに山になっていた。これらはヘリで運ばれてくるようで、運搬時にくるんだネットに巻かれたまま、作業を待っている。丹沢のようなオーバーユースの山では、植生を保護する為というより、既設の登山道そのものを維持する為に階段等の人為的な処理を施す必要があるのだろう。その為に多額の税金が投入されている。事実、その後辿った縦走路は、深くえぐれて表土が失われている所が多く、深い溝状の登山道はぐちゃぐちゃにぬかって酷いものだ。ここまでいくと、いっそ全て人工的な歩道(滑りにくい石畳の道ならベストだろうか?)にしてしまった方が良いくらいに思う。多分その方が歩きやすいし、実際植生保護にもなるだろう。真新しい木製階段も、その上をアイゼンで歩いているらしく、穴だらけになってキズだらけのものも目に付く。これでは余り長持ちしそうもない。幾らもたたないで、また作り直すようだ。
稜線へは敷設された階段の道を登って、10時10分に主稜線分岐に着いた。主稜線は、日陰に申し訳程度の雪があるが、道には全く雪は無い。持参した軽アイゼンは必要なさそう。ダブルのストックも邪魔なのでザックにくくりつけた。
北に意外に近く蛭ヶ岳の頂上が見えている。頂上の小屋が良くわかる。緩く登っていくと、平で広い丹沢山の山頂に10時14分に着いた。普通に登ってきた割には随分コースタイムをオーバーして時間が掛かっている。丹沢山の頂上は裸地が多く、霜が融けて(或いは凍結して融けた?)ぐちゃぐちゃにぬかっている。テーブルやベンチが幾つもあり、南に建て替えたばかりの真新しい『みやま山荘』があった。人は少なく、数人が入れ替わりやってくるが、意外に静か。三角点は西の端、塔ノ岳方面の下り口にあった。『日本百名山・丹沢山』の大きな標識や、みかげ石のモニュメントがある。一等三角点が半分土に埋まっていた。ここからは山頂で唯一の展望があり、正面に富士山が大きい。今日は真っ白な富士山の斜面に、地吹雪らしいものも見えている。
三角点がある山頂で写真を撮った後、ベンチに腰掛けて小休止した。冬型になって風が強まる、という予報だが、風も弱くむしろ暖かい。パーカーなしでも少しも寒くない。コロッケパンを食べて、意外に人が少ない丹沢の主峰を満喫した。確かに、蛭ヶ岳の方が標高も高いし山容も立派で眺めも良い。しかし、この平らで決して眺めも良くない山頂は、のんびりと山にいる気分を満たす様な広場で、これはこれで良い。
10時37分に丹沢山を下る。一下りしたら、西側の眺めが良い稜線歩きがずっと続く。稜線はブナやシナノキなどが疎らに生え、下生えの笹も低い。笹はシカが食べて丈が短くなっているのだろう。「植生保護のため、ルートの外に出ないように」と書かれた看板が沢山ある。そのルートはえぐれて溝になり、ぬかってどろどろの状態。靴はすっかりどろんこになってしまった。
富士山の見事な眺めはずっと目を楽しませる。真下に見える箒杉沢は、土砂が広い河原に堆積しているのか?その色合いといい、コンクリートで固められた様に見える不思議な景観だった。竜ヶ馬場・日高と、同じ様な高低差のない稜線が続いた。竜ヶ馬場11時18分通過、日高11時39分通過。塔ノ岳が直ぐそこに見えてきた。ガレ状の下りから上り返して、11時55分に塔ノ岳山頂着。
丹沢では、塔ノ岳だけは昔その山頂に立った覚えがあった。その他は記憶が全くない。思い返すと、確かにその他の山も登っていなければ辿れなかった山行があった様に思うが…。その塔ノ岳は、相変わらず賑やかだった。丹沢で一番人が沢山やってくるのは、この塔ノ岳だろう。最もポピュラーな大倉尾根をピストンする人が大半で、その他はヤビツから二ノ塔・三ノ塔を経る表尾根だろうが、大倉尾根の半分以下だろうか。2月というこの時期に、日曜とはいえ、塔ノ岳の山頂は3シーズンのハイキングといういでたちのハイカーで一杯だった。とはいえ、びっしり作られたベンチの1割もそこに座っている人は居ないのだから、ハイシーズンの人出は相当なモノなのだろう。山で人に会わない事の方が多いぼくの場合、そんな山に登る方が異例だけれど…。
方位板や山名標柱に御尊仏がある三角点付近を中心にして、まるで野球場の外野席みたいにベンチが幾重にも放射状に並んでいる光景は異様だ。山小屋の尊仏山荘の中にも、それ程強くはない風を避けて、ハイカーが一杯だった。尊仏山荘の脇には、飼われているようなオスジカが笹を食べていた。「鹿に餌を与えないで下さい」という看板には思わず笑ってしまった。動物園じゃあるまいし…。山で、こういう光景に出会うのは、むしろぼく的には新鮮?な驚きだ。
富士山が正面に良く見える、一番前の席?に陣取って、パンを食べて休憩。風が当たるここは、意外に人気がない。人々はむしろ、反対側の南向きの席でまったりしている。しかし、のんびりとはしていられない、うっかりすると「カメラのシャッターを押して下さい」と声を掛けられてしまうのだ。うかつに引き受けると、人が良いと思われるのか、次々に頼まれる。なるべく、衆人から離れるのが賢明。
12時21分に塔ノ岳から表尾根を下る。ここからはずっと眺めが良い。うねうねと延びる表尾根は、ドーム型で形の良い三ノ塔とヤビツ峠を挟んでずっと下に大山が見下ろせ、霞んだその先は秦野や平塚等の街の向こうに相模湾が見えた。パラグライダーが飛んでいる。
木ノ又小屋がある木ノ又大日を12時47分に通過する。木ノ又小屋は全面コロニアル瓦で外装された、あまり見かけない山小屋。それにしても、この尾根は一段ごと、ほぼ30分間隔で山小屋があるというのも、丹沢ならでは、か?表尾根の道は主稜線にも増してぬかったどろんこ道なのは閉口だった。
12時58分に新大日に下り着く。当初、ここから塩水橋に向けて下ろうと思っていた。見下ろす形にはなるが、先に見える三ノ塔があまりに登りたくなる様な山容だったので、計画を変更して三ノ塔・二ノ塔を経て、富士見山荘から塩水橋に下る事にした。道路歩きが非常に長くなるが、ここから下るのと時間的には1時間くらいしか変わらない様だったので…。新大日は田圃の様にぬかっていた。
新大日を過ぎ、政次郎ノ頭へ下る辺りから見下ろす三ノ塔と大山は両山とも大変形が良い。表尾根を辿っているが、塔ノ岳の盛況に比べると、すれ違う人も疎らで大分静かな山になった。相変わらず風も弱く、動いていると暑いくらいで、陽射しは春そのもの。政次郎ノ頭から行者岳の間は岩場にクサリもある。無くても問題ない程度だが、ここは丹沢だから整備も充分過ぎる程だ。
秦野市山岳協会という団体が建立した御尊仏が刻まれた石碑がある行者岳を13時34分に通過し、方位板がある平らな広場の烏尾山に13時52分に到着。烏尾山荘という山小屋がここにもあり、挨拶してもシカトした無愛想な小屋番が一人いた(お金を落とさない人は姿が見えないようです)。
ますますどろんこ、ぬかるみの溝みたいな鞍部から、三ノ塔の登りになる。ここでは数人のハイカーと一緒になる。14時21分に三ノ塔着。広々した素晴らしい展望の山頂だが、ここもぬかるみは酷い。ベンチに腰掛け、カップラーメンを作って食べた。人も余りなくて、気分の良い山頂だ。富士山は逆光ぎみになるが、ここは正に四周が大展望。三ノ塔休憩所と書かれた外観は素敵な小屋が建っている。避難小屋にも使えそうだが、中はうす暗く苔が生えて余り快適そうな空間では無さそうだ。基本的には土間の周囲にベンチがあるという休憩所の作りなので、余程の事でも無ければ泊まりには向かない様だ。
いつまでも居たいような三ノ塔の山頂だったが、まだ先が長い。14時51分に直ぐ下に見える二ノ塔に下る。二ノ塔を14時59分に通過し、ここで眺めが良い尾根は終わり、ぬかった溝の樹林帯を下る。15時22分に林道に出て、15時31分に富士見山荘到着。舗装路は行き交う車も多い。さて、これから2時間近くの道路歩きでいいかげん疲れ切って、17時30分に塩水橋に戻って来た。大分薄暗くなり、停まっている車も一台だけだった。
帰りは宮ヶ瀬から青根に抜け、青根緑の休暇村にある『いやしの湯』で入浴した。ネット情報では、余り芳しいクチコミはなかった。しかし、時間が遅くなったせいか駐車場の車は多かったものの風呂はそれ程人も多くはない。近辺の類似施設の中では、広くてまあまあだ。前回2度入った道志の湯よりは、広いだけこちらの方が良い。すっかり気分も良くなり、帰路についた。
今回の山行で、丹沢も一段落。機会があれば、次は菰釣山や鳥の胸山辺りに登りたい。やはり、というか、東丹沢は人も多い。もちろん、この季節以外では登ろうという気にはならないだろうが…。ともあれ、人が多いのと、登山道のぬかるみを除けば、展望も良く良い山だろう。
丹沢山1,567.1m、竜ヶ馬場1,504m、日高1,461m、塔ノ岳1,490.9m、木ノ又大日1,396m
新大日1,340m、政次郎ノ頭1,209m、行者岳1,171m、烏尾山1,136m、三ノ塔1,205.2
二ノ塔1,135m
1月に大室山と畦ヶ丸に登った。丹沢は遠くて人が多い所だから、なかなか足が向かなかったが、山そのものは気軽に登れて雪も少ないから冬場のハイキングにはちょうど良い。どこからでも、富士山が近く望まれる。これも、ぼくにとっては新鮮だ。ところで、その主峰の丹沢山にはまだ登っていない。丹沢で一番高いのは蛭ヶ岳で、どう見てもこの山が山容からしても主峰の様に見えるが、名前の由来は丹沢山なのだろうから、丹沢山にも登っておきたかった。丹沢山は一昨年、蛭ヶ岳・檜洞丸に登った時に欲張って登ろうとしたが、日の短い時期で果たせなかった。
1週空けて、また丹沢に向かう。ちょっと通い慣れてしまった?この方面。今回は幾分距離も短いが、やはり4時間ちょっと掛かって宮ヶ瀬湖奥の中津川支流塩水川に架かる塩水橋に着いた。土曜は家でのんびり、昼寝もして夜7時頃に出たのだが、やはり12時を回ってしまった。
今回は、塩水橋から天王寺尾根を登って丹沢山・塔ノ岳と回って来ようと思っていた。前回の大室・畦ヶ丸の時は、10~30㌢くらいの積雪があった。その後、大雨が降ったり、ネットの記録レポを見てもあまり雪は無さそう。でも、一応軽アイゼンは持参することにした。
ヤビツ峠に向かう山の中の道路は、夜中なのにぶーぶー走り回る迷惑な車が沢山。この狭いヘアピン道路はそういった連中の遊び場らしい。塩水橋から奥に向かう林道は遮断されて扉が閉まっている。あまり駐車スペースもないが、やや広くなった道路の隅に寄せて停めた。土曜は穏やかな晴天だった。日曜は冬型になってやや風が強まるという予報だが、今のところ風もなく余り寒くはない。直ぐにシュラフに潜って眠った。
6時半にアラームをセットしていたが、鳴らないうちに目が覚めた。夕べは一台も車が無かったのに、目の前には4台も車が停まっている。ぼくが寝ているうちにやってきて、もう出発したのか?車はみな空だった。パンを食べて支度を始めると、また一台やってきて、車の主は早速登る準備をしている。やはり丹沢でも賑やかなこの辺り、オフシーズン?とはいえ、日曜は登る人も少なくないようだった。
7時に出発。先程の人はまだ準備中で、会釈をして先行する。ゲートの脇を抜け、傾斜の急な舗装路を上に向かう。今日持参したのは20年も前に買ったエアリアの丹沢マップ。あの頃、登りもしないのに、一応計画のため買ったままになっていたものだ。書棚の奥の方にあったものを見つけて、そういえば買ったよなあ、と広げてみた。山は変わっていないから充分使えるだろう。このマップには宮ヶ瀬湖はまだ載っていなかったが、現在ダム湖の回りを周回している道路は既に記載されている。宮ヶ瀬ダム建設中と書いてあった。
その古いエアリアに従って、天王寺尾根に登る登山口まで行くのだが、これが結構遠い。20分と書いてあるのに、一生懸命歩いて?25分掛かかりようやく登山口に着いた。先行していた単独のハイカーがいた。出るときにパーカーを着ていたのだが、暑いからここで脱いだ。準備中だった後続の単独ハイカーも直にやってきた。
林道脇の登山口から登り出すが、林業関係の仕事道が交錯し登山道は分かりづらい。何度か間違える。先に登っていったハイカーも間違えて戻ってきたりしていた。杉林の植林を、上に向かう。至るところにシカ避けのネットが張り巡らされている。次第に尾根状になり、道標があるところからは天王寺尾根に乗ったようで、後は快適に登っていく。向かいの本間の頭の稜線が見えてくる。3つ並んだピークが印象的だ。杉の植林はいつのまにかブナ林に変わる。かなりの巨木も見られ、なかなか見事な樹林だ。ヤマガラの声が森に響き、もう春山の気配。
本間の頭の3峰が縦に並んで見えるようになると、尾根は広まり、平胆になった。塩水川からの道(堂平分岐)を合わせ、間もなく右手がガレになり見晴らしが良くなる。やや霞んではいるものの、座間や町田方面の街並が遠く、大山が形良く背後に見えてきた。行く手の丹沢山の稜線も近づいてきた。ここまで全く雪はない。見上げる稜線も、らくだ色のカヤトが目に付き、雪は無さそうだ。しかし、登山道は霜と凍結で今は快適に歩けるが、融け出すとぬかるみになりそう。
植生保護の為とかで、防腐処理された木製階段がずっと敷設されている。その保護用歩道新設のための資材が、あちこちに山になっていた。これらはヘリで運ばれてくるようで、運搬時にくるんだネットに巻かれたまま、作業を待っている。丹沢のようなオーバーユースの山では、植生を保護する為というより、既設の登山道そのものを維持する為に階段等の人為的な処理を施す必要があるのだろう。その為に多額の税金が投入されている。事実、その後辿った縦走路は、深くえぐれて表土が失われている所が多く、深い溝状の登山道はぐちゃぐちゃにぬかって酷いものだ。ここまでいくと、いっそ全て人工的な歩道(滑りにくい石畳の道ならベストだろうか?)にしてしまった方が良いくらいに思う。多分その方が歩きやすいし、実際植生保護にもなるだろう。真新しい木製階段も、その上をアイゼンで歩いているらしく、穴だらけになってキズだらけのものも目に付く。これでは余り長持ちしそうもない。幾らもたたないで、また作り直すようだ。
稜線へは敷設された階段の道を登って、10時10分に主稜線分岐に着いた。主稜線は、日陰に申し訳程度の雪があるが、道には全く雪は無い。持参した軽アイゼンは必要なさそう。ダブルのストックも邪魔なのでザックにくくりつけた。
北に意外に近く蛭ヶ岳の頂上が見えている。頂上の小屋が良くわかる。緩く登っていくと、平で広い丹沢山の山頂に10時14分に着いた。普通に登ってきた割には随分コースタイムをオーバーして時間が掛かっている。丹沢山の頂上は裸地が多く、霜が融けて(或いは凍結して融けた?)ぐちゃぐちゃにぬかっている。テーブルやベンチが幾つもあり、南に建て替えたばかりの真新しい『みやま山荘』があった。人は少なく、数人が入れ替わりやってくるが、意外に静か。三角点は西の端、塔ノ岳方面の下り口にあった。『日本百名山・丹沢山』の大きな標識や、みかげ石のモニュメントがある。一等三角点が半分土に埋まっていた。ここからは山頂で唯一の展望があり、正面に富士山が大きい。今日は真っ白な富士山の斜面に、地吹雪らしいものも見えている。
三角点がある山頂で写真を撮った後、ベンチに腰掛けて小休止した。冬型になって風が強まる、という予報だが、風も弱くむしろ暖かい。パーカーなしでも少しも寒くない。コロッケパンを食べて、意外に人が少ない丹沢の主峰を満喫した。確かに、蛭ヶ岳の方が標高も高いし山容も立派で眺めも良い。しかし、この平らで決して眺めも良くない山頂は、のんびりと山にいる気分を満たす様な広場で、これはこれで良い。
10時37分に丹沢山を下る。一下りしたら、西側の眺めが良い稜線歩きがずっと続く。稜線はブナやシナノキなどが疎らに生え、下生えの笹も低い。笹はシカが食べて丈が短くなっているのだろう。「植生保護のため、ルートの外に出ないように」と書かれた看板が沢山ある。そのルートはえぐれて溝になり、ぬかってどろどろの状態。靴はすっかりどろんこになってしまった。
富士山の見事な眺めはずっと目を楽しませる。真下に見える箒杉沢は、土砂が広い河原に堆積しているのか?その色合いといい、コンクリートで固められた様に見える不思議な景観だった。竜ヶ馬場・日高と、同じ様な高低差のない稜線が続いた。竜ヶ馬場11時18分通過、日高11時39分通過。塔ノ岳が直ぐそこに見えてきた。ガレ状の下りから上り返して、11時55分に塔ノ岳山頂着。
丹沢では、塔ノ岳だけは昔その山頂に立った覚えがあった。その他は記憶が全くない。思い返すと、確かにその他の山も登っていなければ辿れなかった山行があった様に思うが…。その塔ノ岳は、相変わらず賑やかだった。丹沢で一番人が沢山やってくるのは、この塔ノ岳だろう。最もポピュラーな大倉尾根をピストンする人が大半で、その他はヤビツから二ノ塔・三ノ塔を経る表尾根だろうが、大倉尾根の半分以下だろうか。2月というこの時期に、日曜とはいえ、塔ノ岳の山頂は3シーズンのハイキングといういでたちのハイカーで一杯だった。とはいえ、びっしり作られたベンチの1割もそこに座っている人は居ないのだから、ハイシーズンの人出は相当なモノなのだろう。山で人に会わない事の方が多いぼくの場合、そんな山に登る方が異例だけれど…。
方位板や山名標柱に御尊仏がある三角点付近を中心にして、まるで野球場の外野席みたいにベンチが幾重にも放射状に並んでいる光景は異様だ。山小屋の尊仏山荘の中にも、それ程強くはない風を避けて、ハイカーが一杯だった。尊仏山荘の脇には、飼われているようなオスジカが笹を食べていた。「鹿に餌を与えないで下さい」という看板には思わず笑ってしまった。動物園じゃあるまいし…。山で、こういう光景に出会うのは、むしろぼく的には新鮮?な驚きだ。
富士山が正面に良く見える、一番前の席?に陣取って、パンを食べて休憩。風が当たるここは、意外に人気がない。人々はむしろ、反対側の南向きの席でまったりしている。しかし、のんびりとはしていられない、うっかりすると「カメラのシャッターを押して下さい」と声を掛けられてしまうのだ。うかつに引き受けると、人が良いと思われるのか、次々に頼まれる。なるべく、衆人から離れるのが賢明。
12時21分に塔ノ岳から表尾根を下る。ここからはずっと眺めが良い。うねうねと延びる表尾根は、ドーム型で形の良い三ノ塔とヤビツ峠を挟んでずっと下に大山が見下ろせ、霞んだその先は秦野や平塚等の街の向こうに相模湾が見えた。パラグライダーが飛んでいる。
木ノ又小屋がある木ノ又大日を12時47分に通過する。木ノ又小屋は全面コロニアル瓦で外装された、あまり見かけない山小屋。それにしても、この尾根は一段ごと、ほぼ30分間隔で山小屋があるというのも、丹沢ならでは、か?表尾根の道は主稜線にも増してぬかったどろんこ道なのは閉口だった。
12時58分に新大日に下り着く。当初、ここから塩水橋に向けて下ろうと思っていた。見下ろす形にはなるが、先に見える三ノ塔があまりに登りたくなる様な山容だったので、計画を変更して三ノ塔・二ノ塔を経て、富士見山荘から塩水橋に下る事にした。道路歩きが非常に長くなるが、ここから下るのと時間的には1時間くらいしか変わらない様だったので…。新大日は田圃の様にぬかっていた。
新大日を過ぎ、政次郎ノ頭へ下る辺りから見下ろす三ノ塔と大山は両山とも大変形が良い。表尾根を辿っているが、塔ノ岳の盛況に比べると、すれ違う人も疎らで大分静かな山になった。相変わらず風も弱く、動いていると暑いくらいで、陽射しは春そのもの。政次郎ノ頭から行者岳の間は岩場にクサリもある。無くても問題ない程度だが、ここは丹沢だから整備も充分過ぎる程だ。
秦野市山岳協会という団体が建立した御尊仏が刻まれた石碑がある行者岳を13時34分に通過し、方位板がある平らな広場の烏尾山に13時52分に到着。烏尾山荘という山小屋がここにもあり、挨拶してもシカトした無愛想な小屋番が一人いた(お金を落とさない人は姿が見えないようです)。
ますますどろんこ、ぬかるみの溝みたいな鞍部から、三ノ塔の登りになる。ここでは数人のハイカーと一緒になる。14時21分に三ノ塔着。広々した素晴らしい展望の山頂だが、ここもぬかるみは酷い。ベンチに腰掛け、カップラーメンを作って食べた。人も余りなくて、気分の良い山頂だ。富士山は逆光ぎみになるが、ここは正に四周が大展望。三ノ塔休憩所と書かれた外観は素敵な小屋が建っている。避難小屋にも使えそうだが、中はうす暗く苔が生えて余り快適そうな空間では無さそうだ。基本的には土間の周囲にベンチがあるという休憩所の作りなので、余程の事でも無ければ泊まりには向かない様だ。
いつまでも居たいような三ノ塔の山頂だったが、まだ先が長い。14時51分に直ぐ下に見える二ノ塔に下る。二ノ塔を14時59分に通過し、ここで眺めが良い尾根は終わり、ぬかった溝の樹林帯を下る。15時22分に林道に出て、15時31分に富士見山荘到着。舗装路は行き交う車も多い。さて、これから2時間近くの道路歩きでいいかげん疲れ切って、17時30分に塩水橋に戻って来た。大分薄暗くなり、停まっている車も一台だけだった。
帰りは宮ヶ瀬から青根に抜け、青根緑の休暇村にある『いやしの湯』で入浴した。ネット情報では、余り芳しいクチコミはなかった。しかし、時間が遅くなったせいか駐車場の車は多かったものの風呂はそれ程人も多くはない。近辺の類似施設の中では、広くてまあまあだ。前回2度入った道志の湯よりは、広いだけこちらの方が良い。すっかり気分も良くなり、帰路についた。
今回の山行で、丹沢も一段落。機会があれば、次は菰釣山や鳥の胸山辺りに登りたい。やはり、というか、東丹沢は人も多い。もちろん、この季節以外では登ろうという気にはならないだろうが…。ともあれ、人が多いのと、登山道のぬかるみを除けば、展望も良く良い山だろう。
菰釣山や鳥の胸山は表尾根に比べるとマイナーですね。将来もこの感じは変わらないのでしょう。菰釣山周辺のブナ林もいいものです。
一昨年に檜洞丸と蛭ヶ岳に登って、今回で3回目の丹沢です。もっとも、30年くらい前の学生の頃クラブで何度も登っているんですが…書いた様に、記憶が余りないんです。唯一、塔ノ岳の山頂は、大倉尾根を何度もボッカ訓練で登ったから、良く憶えてるんですが。
塔ノ岳は昔からいつも人が一杯の山でした。
丹沢山は主峰ですが、案外人気が無いようですね。それにしても、東丹沢はやはり人が多いですね。こんな時期でもハイカーで一杯です。
菰釣や鳥の胸あたりは西丹沢でも辺境?ですから、静かでしょうね。そのうちに、登りたいと思います。
今年は雪が少ないですね。どっさり雪があるところに行こうかな…と、計画中です。