辺見庸氏が「生活と自治」12月号(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会)において、「えっ、なにをコトホげというのか?」という文を寄せている。すっかり左寄りになってきた同誌であるが、この中で辺見氏は「関連する式典の準備に当たっては、このことに思いを致しながら天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位を国民こぞって寿ぐことができるよう、政府として万全の準備を進めていかなければなりません」という首相の言葉を引用して「このことってなんだろう」と展開する。「このこと」とは、文中の「このこと」を指しているのだろうが、ふと、わたしは「寿ぐ」の「こと」と勘違いしてしまった。が、「なにをコトホげというのか」と掲げているから、まったく「寿げ」と「このこと」がリンクしていないこともない。そこで思ったのが「寿げ」と「事(コト)」のことだ。
先ごろコト八日について触れたが、この場合の「コト」は通常「事」があてられる。「事」の意味を探れば当然のことだろう。「事」とは次のように解説されている。
「もの」が一般に具象性をもつのに対して、思考・意識の対象となるものや、現象・行為・性質など抽象的なものをさす語。
1 世の中に起こる、自然または人事の現象。事柄。出来事。
2 大変な事態。重大な出来事。
3 仕事。用件。
4 物事の状態や経過。また、それを中心とした事情。いきさつ。
5㋐行事や儀式。
㋑生命。
㋒言外に了解されている、ある事柄。例のこと。
㋓食事。特に、僧の夜食。
(デジタル大辞泉)
などと解説されており、行事や儀式も「事」である。そしてコトは節目節目を指しているとも言えるのだが、実はこの解説の冒頭に《「言(こと)」と同語源》とも書かれている。では「言」とは何かと引いてみると、やはり《「事 (こと) 」と同語源》とある。そして
1 口に出して言うこと。言葉。現代では多く複合語として用いられる。
2㋐言葉で表現された事柄・内容。
㋑うわさ。評判。
㋒詩歌。特に、和歌。
3 体系としての言語。
(デジタル大辞泉)
などと解説されている。ところが「寿ぐ」の意味を解くと、「言葉で祝福する。祝いの言葉を述べて、幸運を祈る。」とあり、「寿ぐ」は「言祝ぐ」とも書くという。なるほどコトを「言」と解せばコトを「祝ぐ」時とも捉えられる。ようは祝いをする時、節目とも言えるだろうか。とすれば御退位、御即位もまた「言祝ぎ」の時であるというわけだ。コト八日といえば「事八日」と解くのが当たり前だが、「言八日」でも良いのかもしれない。
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