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宇津木薬師の西国三十三番 後編

2022-08-27 23:38:52 | 地域から学ぶ

宇津木薬師の西国三十三番 中編より

 

 残りの13体の観音石仏を紹介する。

 宇津木薬師については、「宇津木薬師の薬師如来」で触れたとおりである。

 『奥三峰の歴史と民俗』(平成6年 長谷村教育委員会)の386ページに次のように記されている。

例祭は四月八日(旧三月八日)で、『木の下陰』にいうとおり「近郡より参詣して群衆す」ることは古い昔からであった。またお盆にも賑わった。「妻のないものは、念力によって授けてやる」と縁起にあるとおり、妻薬師とも呼ばれ、縁結びのご利益があるといわれている。意中の人の年齢を書いた旗を上げたり、石に穴をあけ、水引きなどを通してつるしたりしてお願掛けをし、叶えられると、願ばたき(オハタシ)といってお礼に一晩中お堂におこもりをした。

「お盆にも賑わった」というものの、この盆にさ中に訪れてみたが、今は誰一人として訪れる者はいない。縁結びの後利益があるといって石に穴をあけて願掛けをしたというが、通常みの願掛けは目の病の人が願掛けをする際にする行為。縁結びの意図もあったとは知らなかった。

 

 さて、コントラストよく写真を表せなかったが、上伊那地域振興局のページに、水を吹きかけると像が現れると紹介されていた。なるほど、とも思うが、水を用意していかないとそれは果たせない。いつかやってみようとは思う。

 

「廿一番 丹波 穴穂寺」

かかる世にうまれあふ身のあなうやとおもはでたのめ十声一こゑ

施主高遠町池野屋友右工門

 

「廿二番 摂津国 惣持寺」

おしなべて高きいやしき総持寺の仏のちかひたのまぬはなし

施主高遠 高遠町酒井清兵衛 三日町荻原伊兵衛

 

「廿三番 摂津 勝尾寺」

おもくとも罪にはのりの勝尾寺仏を頼む身こそやすけれ

観恵院 観柔院 勇山利哲信士 瑞岩妙応信女 施主高遠小原氏毋 兼子氏母

 

「廿四番 摂州 中山寺」

野をもすぎ里をもすぎて中山のてらへまゐるものちのよのため

施主杉嶌村四郎左衛門 徳右衛門 太兵衛 武兵衛 孫右衛門 久五郎 長左衛門 弥左衛門

 

「廿五番 播磨国 清水寺」

あはれみやあまねき門はしなじなのなにをかなみにここに清水

十二月廿五日 九月十二日 為両霊 施主高遠町富屋半兵工 霊源妙智大姉 端堂恵心信士 木下又七内

 

「廿六番 播州 法華寺」

春は花なつは橘秋はきくいつもたえせぬ法の花山

施主高遠西村弥市 弥太郎 弥治工門 太平治 竜蔵 伊七 彦右工門 弥五吉

 

「廿七番 播州 書寫山」

はるばると登れば書写の山おろし松のひびきもみのりなる蘭

施主浦村桂左工門 庄兵衛 藤四郎 佐兵衛 并村中

 

「廿八番 丹后 成相寺」

浪の音松のひびきもなりあひの風ふきわたる天のはしだて

観善誦妙信士 施主高遠町広瀬治郎左工門

 

「廿九番 丹后 松尾寺」

其かみは幾世へぬらん便をば千とせをここに松の尾の寺

施主高遠塩屋栄十毋 平松屋平松善之烝

 

「三十番 江州 竹生嶋」

月も日も浪間にうかぶ竹生嶋舟にたからをつむ心せよ

施主高遠増田久作 春日又左工門毋 宮下平兵工 木曾屋平十郎 松田屋又右工門 紀井国屋忠右工門 富士野屋茂兵工 東屋甚平 為先祖代々各霊菩提

 

「卅一番 近江国 長命寺」

や千とせややなぎにながきいのち寺はこぶあゆみのかざし成らむ

施主野口村蟹沢庄蔵 為先祖代々菩提

 

「卅二番 江州 観音寺」

あなたうとみちびきたまへ観音寺とをき国よりはこぶあゆみは

施主市之瀬村琢源智玉大姉

 

「卅三番 美濃国 谷汲山」

万代のちかひをここに頼おく水はこけよりいづる谷汲

今までは親とたのみし笈ずるをぬぎて納る美ののたに久み

施主原新田村りを

 

法恩寺(奥)と宇津木薬師(手前)

 


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