Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

田んぼの脇の大日如来

2024-07-12 23:52:58 | 地域から学ぶ

5月26日撮影

 

 旧武石村上武石の市野瀬の路傍、道ではなく田んぼ側を向いて建っている仏像があった。なんの変哲もない路傍の、それも田んぼに向かって建つ、それも仏像である。よく見てみると智拳印を結んだ大日如来である。なぜ大日如来がここに、という印象であった。ちょうど田植えを終え、水の管理に来られていたお婆さんに謂れを聞いたのだが、「昔からここに」と言われるだけで、その背景は分からなかった。

 大日如来といえば、地域によっては牛の供養で祀るところがあり、その関係なのかとも思うが、大日如来の立派な像の例は珍しく、あくまでも想像の域である。先日来参考にしている『武石村誌 民俗』にも像のことはもちろん、牛供養に関する記述も無い。

 ところで、武石では修験の影響を強く抱く。例えば小寺尾の一心祭である。この祭典行事は上田市の無形文化財に指定されている。一心は小寺尾に生まれた御嶽行者で、この一心行者を偲ふ祭が一心祭である。一心講の信者は関東方面に多く、その数は20万人にも及ぶと、小寺尾にある公民館前の説明板にある。祭りでは上、下小寺尾地区が中心となって行者の火渡りや、剣梯子の刃渡りを見せる。一名を一心霊神祭ともいう。祭りには関東各地から御嶽行者十数名が集まり、民家から集めた薪を井の字形十段に積み、講社長の行孝が火をつけた薪の上で祈靖を行うという。行者による火渡りが済むと一般の人たちも渡るというもので、地域で支えられてきた行事のよう。したがってこの地域が修験者とのかかわりが強い地域と捉える。故にそうした背景が、自然石道祖神に影響しているようにも思え、この大日如来もそうした背景と関わっているのではないかと想像する。


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