生産技術科の一日

設計・製図・加工・制御・・・メカニカルエンジニア達の記録。現在名・・・メカニカルエンジニア科

価値生産方式(25)現場での価値生産

2006年02月01日 | 2005
<プロダクトデザインとワークデザイン>
価値生産を評価するためには、作業の流れや、作業方法が他社のやり方と比較しても優れたものである必要があります。

ある
大手自動車会社の1次下請けで、小物プレスを主体として生産しているK工業の場合、工場を10数年前に移転しました。

そのとき、工場のレイアウトプランニングがプレス機械の業者任せにされ、ランニングの段階で大きな問題が発生しました。

鉄板を一定の厚さと長さで切り、その後プレス機で成型される工程ですが、前工程である鉄板(ロール状)の打ち抜きは、1分間に300個程度の能力を持ちます鉄板は縦横10cm程度の薄い板ですが、第二工程で、これらの板に穴を開けてナットを溶接して製品となります。

第二工程の能力は1分間に10個程度の能力で1,5人作業です、そうなると第一工程の鉄板は溜まるばかりで、作業者が朝2時間ぐらいで、打ち抜き作業を行ない
山のような在庫を第一工程のプレス機械の前に山積みします。

もちろんリードタイムを考えた3日を目処に出荷する数量を予め打ち抜くのですが、その量は膨大であり、プレスの前のパレットは3段積みで2m以上の高さとなり300m2程度のスペースは仕掛在庫(工程内の在庫を言う)で一杯になります。

本来は、鉄板を抜いたら、すぐに加工する連続工程とするのが普通ですが、ここの
会社では中間仕掛かりを作っていました。

そのために、出荷順位を読んで加工計画をたてる流れが、中間仕掛かりの状況で決定される事となり、無駄な作業が発生して、リードタイム(材料仕入れから出荷までの期間)が3日程度必要となりました。

「ためない」、と言うのが生産管理の原則ですが、プロダクトデザインの段階ですでに大きな問題を抱えている工場でした。

こうした状況では、他社との競争力が極端に落ちるために、利益率等にも大きな影響が出ます。

ネック工程は第二工程であり、加工能力が問題となりますが、短絡的に人員を増やして加工能力を上げても、思ったような効果は上がりません。

なぜならば、物の流れが見えないからです、工程が分断される事によって、製品加工に完結性がなくなり、スピードに対する感覚が甘くなり、現状を打開して全体のバランスを常に最適化するというラインの自己組織化が機能しなくなる事が大きな問題となります。

環境に適応するために、アメーバーのように自律調整を行うことが自己組織化の概念ですが、そうした仕組みの確立にはシンプルさと完結性が要求されます。

この内容については次回、もう少し詳しく説明します。