夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

ジャパン・レクイエム:Requiem Japonica(15)

2005-07-16 | tale
 その夜、体調不良により無念の欠席を余儀なくされた仲林の行動をまずは追いたい。小宴が始まる頃合いになるとにわかに腹部の嵐も収まり、外出はかなわぬまでも、親友の活躍ぶりは気になる。悪気はない(そう思うことにしよう)のだが、栄子に電話してみた。  あにはからんやか否かは別として、さすがに練達の栄子、すぐにピンときた。 「いや、今日一緒に晩飯食うことになってて、おれが腹を壊して悪いことをしたなって思 . . . 本文を読む

サティの形をした3つの小品~3 Morceaux en forme de SATYw

2005-07-13 | music
 今回のアイディアはサティ嫌いのyuhotoさんのお蔭です。ありがとうございました。 ①家具売り場  エリック・サティ(1866-1925)は、音楽をコンサートでうやうやしく演奏されるものでなく、家具のような身近で何気ないものにしようと考え、家具の音楽というのを作曲しました。それを画廊で演奏したところ、客は会話をやめて、聴き入ってしまったので、「しゃべり続けて!音楽を聴かないで!」と叫んだとか . . . 本文を読む

ジャパン・レクイエム:Requiem Japonica(14)

2005-07-12 | tale
 さて、宇八にはめずらしく、これだけ周到に打ち合わせをし、手抜かりなく、銘店ながらそう高くもないようなところを欽二に探させるなど努力をしたわけで、これで成果がないのでは神も仏もない。いや、神のご深慮は測りがたいといったところなのか、まず欽二が当日午後になって急激な腹痛、猛烈な下痢に見舞われ、尾籠な話で恐縮だが、「こうやって電話するのさえ……」という有り様になった。まあ、それはそれでけっこうなのか . . . 本文を読む

音楽の中の女性~シューマン「女の愛と生涯」

2005-07-11 | music
 シューマン(1810-56)って人は、一つのジャンルの曲を集中して作曲する傾向があって、特に有名なのがクララ・ヴィーク(1819-96)との結婚にメドが立った1840年の「歌の年」で、「詩人の恋」、「リーダークラウス」、「女の愛と生涯」などを作曲しています。シャミッソーの連作詩による「女の愛と生涯」は8曲からなりますが、CDの解説者の多くはその歌詞に疑問を呈しています。と言うのも、題名からもわ . . . 本文を読む

今日聴いた音楽~ボロディン:オペラ「イーゴリ公」

2005-07-10 | music
 ロシア5人組って、高校の音楽の時間に無理やり暗記させられたんですが、今でもそうなんでしょうか。記憶力も悪いし、当時はクラシック音楽なんてなーんにも関心がなかったので、キュイ、バラキエフ、ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー・コルサコフって言われても、鑑賞のページに「はげ山の一夜」なんていう変なタイトルの曲が載っているムソルグスキー以外は全然覚えられませんでした。  今でもバラキエフは聴いた . . . 本文を読む

ジャパン・レクイエム:Requiem Japonica(13)

2005-07-09 | tale
 こういうふうにお上品な会話を続けて、栄子の監視網をかいくぐりながら、かき氷を3人一緒に食べるくらいまでにはなったが、「懇ろになるにはお月見くらいまではかかるな」との友人の見立てに、宇八としても頷かざるを得なかった。  ところが、思わぬところから救いの手は差し伸べられるもので、栄子が忙しくなってしまったのだ。と言うのも、栄子、達子、光子の三姉妹にはこれまでもちょくちょくあったことなのだが、姉妹ゲ . . . 本文を読む

今日聴いた音楽~マーラー:交響曲第10番(クック補綴版)

2005-07-08 | music
 朝比奈隆がブルックナーの第9番第4楽章の補綴版について、ミロのヴィーナスに腕をつけるようなものだという趣旨のことを言っていました。Nicola SamaleとGiuseppe Mazzucaによる補綴をインバルが指揮したCDを聴くと、確かによけいなことをしたものだという気がします。いくら資料的に根拠があっても聴く方として納得できなければ「こんな音楽があの深遠なアダージォの後に来るわけがない」と . . . 本文を読む

ぶっくばとん

2005-07-07 | literature
 今度はぶっくばとんがttkttさん(千紫万紅さんって言ったほうがいいかな?)から渡されました。せっかくのお申しつけですからって言うより、一回ネタが楽できるのでしめしめって感じです。 1.持っている本の冊数  さあ、2、30冊くらいじゃないですか。ほとんど手元にはなくて、辞書の類と小学館バッハ全集の書籍の方くらいです。2列のスライドする本箱が私のテリトリなんですけど、徐々にCDに侵食されて本な . . . 本文を読む

ジャパン・レクイエム:Requiem Japonica(12)

2005-07-06 | tale
 その翌週から毎日曜のミサに宇八が欠かさず出るようになり、あまつさえ欽二も時折はるばる(まあ電車で15分ほどだが)やって来て参加するといった事態は、いかなる神のご加護、ご配剤と言えば良いのか、我々としても戸惑いを感じるところだが、例の美女、時木茉莉(ミサ終了後、栄子の目を盗んですばやく話しかけて名前を訊いたのだが)がいる間だけと言えば、大方の得心が得られるだろうか。  いずれにせよ、真夏の日曜ミ . . . 本文を読む

昔と今のリンク~1974-75年:あの日に帰りたい?

2005-07-05 | review
 74、75年について、政治で言うと田中角栄首相が74年の10月に出た「文藝春秋」の立花隆の「田中角栄研究――その金脈と人脈」をきっかけにして、あっという間にスキャンダルにまみれて、12月には退陣に追い込まれ、三木内閣ができます。逮捕は76年ですが。三木さんって本来、首相になるはずのない小派閥の人だったこともあって、悪いことはしなかったけど、いいこともしない。要はなんもしない、田中さんのアンチテ . . . 本文を読む

レクイエム・ノート~意外な人のレクイエム

2005-07-04 | music
 結局、昨日はタワーレコードに行って、前回以上の衝動買いをしてしまいました。ボーナスが出てすぐの日曜日、渋谷は人がいっぱいで歩きにくくてしょうがない、どうせ大した用もないくせにうじゃうじゃ出てきやがってと思うと苦々しい限り、って自分を棚に上げたことを言ったのは内田百ですので誤解なきようw。くだんのタワレコもけっこう混んでました。ポイント2倍という人のボーナスを掠め取ろうという商法に引かれて集ま . . . 本文を読む

今日聴いた音楽~メンデルスゾーン室内楽全集

2005-07-03 | music
 メンデルスゾーンは、シンフォニーやヴァイオリン・コンチェルトなんかを聴いただけで、スパイスの効いていないシューマンくらいにしか思ってなくてぜんぜん評価してなかったんですが、去年くらいに室内楽全集が安かったのでまとめ買いのときに何気にカートに入れて聴いてみたら、びっくり、不明を恥じました。ブラームスによく似たとても濃厚な情感にあふれた音楽で、ロマン派の室内楽の代表的作曲家って言ってもいいと思いま . . . 本文を読む

ジャパン・レクイエム:Requiem Japonica(11)

2005-07-02 | tale
 店を出て、アパートに戻り、少しでも風を通そうと玄関のドアを開け放つまで、誰も口をきかない。  女の話なんかして、なんだか雰囲気を悪くしてしまったのかなと思った仲林は、話題を変えるように、出された麦茶に口を付けながら言った。 「あれさ、やっぱりイヌかネコにしとけば良かったんだ。毛でも生やかしてさ」  上目遣いの先には、ほとんど売れず、夜逃げの原因となった商品が古ぼけた本棚の上に一つだけ置かれて . . . 本文を読む