映画「空海」を見る。
この映画は陳凱歌(ちん・がいか、チェン・カイコー)監督作品。この人のデビュー作である「黄色い大地」(1984年)を見たとき、私はそれまでの中国映画にはありえない、新鮮な感動を覚えた。また、彼の自伝的な本(私の紅衛兵時代)も読んでいたので、この30年余にどのような変貌を遂げているのかに興味があった。
週日の郊外のシネコンは、予想どおりガラガラ。観客は10人程度、ほぼ全員が老人だった。夢枕獏原作の映画であるから、空海の事績や自伝を描いた映画と勘違いする人はいないだろうが、結局、空海その人はこの映画のストーリーの狂言回し役に過ぎない。主役は楊貴妃でもない。真の主役は、妖猫たる黒猫なのである。
日本語の映画タイトルは「空海」であるものの、華語(北京語)と英語のタイトルはそれぞれ「妖猫伝」「Legend of the Demon Cat」なのだ。こちらの方が映画の中味を正しく示している。
陳凱歌監督の映像美は、期待していたとおり、実に見事だ。長安の都のCG映像、豪華絢爛の宴、幽玄な幻想世界をきらびやかに表現する。娯楽作品として超一流の映画だと思う。史実を描く映画ではないので、「妖猫伝」として楽しむべきなのだろう。
「空海―KU-KAI―」予告編