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【六五】まだ存在の知られていない銀河

 銀河と舌の立体図を相似機で重ね合わせれば、無数に存在する星々の座標や成分がそれぞれの味蕾に呼応していると分かる。だからこそ我々はこの世界とリンクしているのだし、二つの相似する世界をつなぐ味【七六】をとらえることができる。だが、未知の銀河を口に含むヤシモト顧問にはこの関係性が適応されない。いつかきっと味わい深い銀河を探し出してみせる、と天文台のプロジェクトに座標として参加しはじめたヤシモト顧問は、舌が上顎に張り付くほど口の中が異常に乾くようになった。糖尿病だろうか?と心配になってケーキ屋さんを訪ねたところ、フランス人とイタリア人の味覚間に厳然とそびえ立つモンブランをとても美味しく平らげることができたので、通報を聞きつけた天文学者たちもそのケーキ屋さんに急行し、同じモンブランを食べてみたのだがなぜか遭難してしまい、救助にかけつけた喫茶店に苺のショートケーキを頼んでみたのだが食えた代物ではなく、この一帯が味痴の住人のコロニーであることや、その範囲が拡大しつつあることを知って、ヤシモト顧問の舌はやがて塗り替えられる銀河を遠からず先取りしているという結論を導かざるを得なかった。

リンク元【五四】
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