娘夫婦が同居した日々

2019年06月10日 18時11分19秒 | 創作欄

2012年1 月 6日 (金曜日)

娘夫婦は東京の北千住のマンションに住んでいたが、子どもが生まれて実家に戻って来て、貴子たちと同居することになった。
半年が経過した頃から、貴子はイライラが募ってきた。
孫娘は夜中によく泣いた。
貴子は熟睡ができずに睡眠不足のまま朝を迎え家事をした。
夫は午前5時30分に起きて、自動車で千葉県市川市内の仕事場へ向かう。
娘の夫は歯科技工士であり、深夜に帰宅する日が続いていた。
娘は、「子育てに精いっぱい」と自分の夫の食事の支度を母親任せにしている。
「私のことを、お手伝いの婆やと思っているのじゃないの!」と貴子は声を荒げた。
「ごめんね、おかあさん、暫く頼むわ」
娘はニヤリと笑って申しわけ程度に首を竦めるだけだ。
睡眠不足が重なったので、貴子は寝室を2階から1階に移した。
そして、2世帯住宅のつもりで、夫と自分だけの食事の支度をした。
娘に甘い夫は、酒を飲んで帰宅すると娘たちの部屋へ顔を出して出て来ない。
そればかりではない、娘の夫の食事の支度までやった。
夫は貴子が結婚した頃は東京・日本橋の料理屋の板前をしていた。
だが、35歳の時に夫は、兄に説得され建設業に転じた。
色々な経緯があって、夫の兄の建設業は借金を重ねた挙句に倒産した。
「いずれ、料理屋を開くという貴方と結婚したのに、兄さんにさんざ利用されるだけ利用されて、放り出されたのね」
貴子は嫌味を並べたが、夫は詫びるわけではない。
不機嫌に黙り込み、朝から酒を飲んで憂さを晴らしていた。
45歳になって貴子は、近所の不動産屋の事務として働きだした。
失業した夫は47歳であった。
「中途半端な年齢なんだ、どこも雇ってくれないな」
夫は職安から帰ると冷蔵庫からビールを取り出して飲んだ。
息子は自動車販売のセールマンとなっていた。
娘は歯科技工士として、歯科医院に勤務していた。
貴子は寝れない夜、過去の忌わしさんなどを思い出した。
「明日は、娘夫婦に家を出てほしい」とハッキリと言おう。
決意をすると、貴子は深い眠りにつくことができた。


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