創作 福子の愛と別離 8 )

2024年07月27日 00時16分50秒 | 創作欄

祖母の静は、孫娘の福子からアドレスを求められることも多々あった。

大学同期生の峯田晃との交際と芽生えた恋愛感情などについてであった。
その彼は、東京・九段にある私立女子高校の国語教師であった。
「彼のことは、大学生のころから、好きでだっの。でも彼は真面目過ぎて、しかも吃音で、いつも人前で自分を恥じていたの」福子は同窓会で再開した峯田晃が見違えるような自信に満ちた男となっていたことを話した。
「そうなの」祖母の静は微笑む。
実は、晃は仏教系の宗教の信者となったことで、人間的に一回り大きくなっていたのである。

福子は、晃の変身の要因を知りたくなった。
そして、晃に誘われて参加したのが、彼が信奉する宗教団体の会合の座談会であった。
その座談会では、子ども含めて、お年寄りの人も、若い人も参加して、宗教におけるにおける日常体験を赤裸々に語り合っていた。
その内容は、失敗したことも、悩みも苦労話もあった。
和気あいあいの参加者たちは、皆が誠実な態度で温かかった。
「こんな世界があったの」福子は目を見張った。
祖母の静に誘われた宗教団体の会合とは、雲泥の差であったのだ。
その団体の会合では指導者は威圧的あり、人間の心を縛りつけるような陰鬱な雰囲気に満ちたものであった。
いわゆる霊感商法で信者の心を不安に陥れていたのである。
そして、常に信者たちから金を収奪する詐欺行為までがまかり通っていたのだ。
28歳になっていた福子は、将来の結婚を意識し始めていた。
福子は、自分が合同結婚式で生まれた宗教団体の3世であることを峯田晃には、まだ告げられずにいた。

 

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