「大丈夫。大丈夫だからね」
分娩室に入る前、母さんが汗に濡れた髪を撫でながら励ましてくれた。
陣痛の間隔がさらに短くなる。
助産師さんたちがテキパキと準備している。
痛みがさらに増し、さらに長くなる。合間合間に喘ぐように呼吸する。
「子宮口全開、赤ちゃんの頭が見えてきましたよ」
「もっといきんでください!」
赤ちゃんに会いたい。その一心で力を入れる。
痛みが頂点に達する。大きな塊が体を引き裂く。
その感覚が一気に消える。全身の力が抜ける。
「生まれましたよ」
赤ちゃんの声が聴こえる。
こんな声なんだ。赤ちゃんって。
なんだか遠くでサイレンの音を聞いているみたいな、不思議な声。
「かわいい女の子ですよ」
助産師さんがタオルにくるまれた赤ちゃんを見せてくれた。
え?これが赤ちゃん?
しわしわで紫色のおサルさんみたいな嬰児を想像していたのに。
それは、どこからどう見てもマトリョーシカ人形にしか見えなかった。
これがわたしの赤ちゃん?ウソ!ウソよね?
わたしは気を失った。
気がつくと、病院のベッド。枕元に母さんがいた。
「大丈夫、これでいいのよ。母さんも、マトリョーシカから生まれたんだから」
そうか。そうなんだ。
遠くの部屋から、赤ちゃんが元気に歌う声が聞こえた。
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考えていて、タイトルと
大雑把な内容を思いついたんですよ。
「東京マトリョーシカ」っていうお話しです。
でも、途中でやめちゃいました。
それを書こうと思ったきっかけが、
どっかの雑貨屋で売ってた
マトリョミンだったんです。
テルミンとマトリョーシカが合体した
間抜けさが好きでした。
ボクはマトリョミンの存在を今年の夏に知って、YouTubeで片っ端から演奏を見たんですよ。
講堂みたいな所に集まった女性たちがマトリョミンを一斉に演奏する、なんともシュールな演奏を聴いていたら、お腹の中の赤ちゃんが歌っているような気分になって、こんなお話を書いてみました。
なんにしてもテルミンをマトリョーシカに最初に入れた人、発想がスゴイです。