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ジェームズ・ボンド最新作「Skyfall」を観てきた。
第一作「Dr. No」から50周年を数える記念作としてはふさわしい出来映えだった。50年の歴史ゆえに何かと制約が多く、22本の旧作と比較される運命が避けられないシリーズ映画にして、まだ新機軸を打ち出せている点は称賛に値すると思う。今回は美術ファンをニヤリとさせる場面があったので紹介しよう。
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まずボンドが新任の若いQから新兵器(といっても指紋認証ワルサーPPKと超小型発信機だけ)を貰ったシーン。これがなんとロンドン・ナショナルギャラリーの展示室で、ターナーの代表作「戦艦テメレール号」を前にしてという設定。この絵は、トラファルガー海戦で活躍した帆船の戦艦が、解体を前にして、テムズ川を蒸気船に曳かれていく姿を描いたもので、映画ではボンドになぞらえられていた。
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Joseph Mallord William Turner「The Fighting Temeraire tugged to her last berth to be broken up」(1838)
帆船はもはや過去の遺物で、産業革命が生んだ蒸気船に取って代わられようとしているように、疲弊した身体と精神に鞭打って死地に赴く諜報員という存在は、21世紀における第二の産業革命ともいえるIT技術の発達した時代にはもはや時代遅れと言わんばかりであった。この「新しきもの」と「古きもの」との葛藤こそがこの映画のテーマなのだった。
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それから、上海浦東の摩天楼の高層階で、暗殺者パトリスが隣のビルで絵を観賞している男を暗殺するシーンがあったが、その絵が日本でも展示されたこともあるモジリアニの大作(モジリアニにしては大作)「扇子を持つ女」だった。
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Amedeo Modigliani「Woman with a Fan」(1919)
このモジリアニの作品、実はパリの市立近代美術館に所蔵されていたのだが、2010年5月にピカソやマティスらの作品とともに盗難にあっている。総額1億ユーロに及ぶ盗難作品はどれもまだ見つかっていない。映画ではこの盗品が中国のブラックマーケットに流れたという設定になっているのだ。
因みにこの高層ビルには「宏海」というLEDサインがつけられていたが、そのような名のビルは浦東にはない。実はロケ地は上海などではなくシティ・オブ・ロンドンにある「プロードゲート・タワー」という地上 161.25m の高層ビルなのであった。
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