Tomotubby’s Travel Blog

Tomotubby と Pet の奇妙な旅 Blog。
でもホントに旅 Blog なんだろうか?

辰野登恵子展

2012-10-22 | Henri Matisse 特集
10月22日
辰野登恵子観に国立新美術館へ。広大な美術館に、柴田敏雄との二人展で作品を交互に、時系列でなく展示してあるので、個人的に大好きな辰野の80年代の大作を繰り返して観るのに、美術館を行ったり来たりしていい運動になった。常々思うのだが、出口近くに入口への抜け道をつくって欲しいものだ。
辰野登恵子、90年以降は画面に大きなマッスが、それも二つ、その二つの関係性のようなものが主題になったものが多いことに改めて気づく。そのあたりが私の嗜好に合わないのかもしれない。新作は少し傾向が変わっていて、ポストカードを買った。

川村記念美術館で「マティスの子供たち」を見る体験

2008-05-06 | Henri Matisse 特集
久々のマティス展。DIC創業100周年記念展「マティスとボナール ―地中海の光の中へ―」を観に佐倉の川村記念美術館まで出かけました。「大日本インキ化学工業株式会社」が創業百周年を記念してか、「ディーアイシー株式会社」に社名変更していたことは全く知らなかったです。昔から「ディック」と呼ばれていたんだから「ディック株式会社」でも良かったんじゃないか。と思いますが。「ディック」では、やはり外人受けが悪かったからでしょう。(゜ー゜;)

今回、観客動員が見込めるマティスにボナールを抱き合わせざるを得なかったのは、やはり海外からの作品借用数に限りがあったためでしょう。予想通り、日本国内にあるマティスとボナールが総動員された展覧会になっていました。そうなるとマティスは、自動的に、自分にとって魅力に乏しいニース時代と晩年の作品に偏ってしまいます。副題「地中海の光の中へ」をつけてなんとか体裁を整えた感があります。収穫といえば「モン・タルバンの風景」(1918)、「黄色い帽子」(1929)あたり。ちょうどニース時代の最初と最後に当たる、ニース時代らしからぬ作品でした。

それで、この展覧会を楽しめなかったかというと、さにあらず。

「マティスとボナール」展に至るまでに展示されている常設の川村コレクションが何より素晴らしいのです。以前からこの美術館の目玉だった、抽象表現主義彩色派のマーク・ロスコ「シーグラム壁画」、バーネット・ニューマン「アンナの光」には、それぞれの作品に合わせて常設展示場が新設されていました。ロスコには静謐で落ち着いた部屋、ニューマンには窓から光の差し込む明るい部屋が。

二大巨匠の部屋の後には、彼らを継ぐ世代、モーリス・ルイスとフランク・ステラの巨大な作品が待っています。特にステラは、初期のミニマルアートのようなブラック・ペインティングに始まり、異形カンバスに色彩の溢れる分度器シリーズ、さらにレリーフ作品を経て、90年代の完全な立体作品に至るまで、時代ごとに大きく作風の変わる作品を大きな空間で一覧できる秀逸な展示でした。彼は最近建築をも意識した巨大な黒い作品を作りあげており、それらは最初期の作品ともテイストが似てきていると指摘を受けていますが、この部屋においても、時代を追って円環のように展示された作品を見ていくと、同様の傾向を感じ取れました。

アメリカ抽象表現主義以降の現代絵画を見た後で、彼ら彩色絵画の祖とも言えるマティスの作品を観るのは、とても新鮮な体験でした。「マティスとボナール」展はこの後、神奈川近代美術館へ巡回するそうですが、これから観に行こうという方には、5/25日までに川村記念美術館のコレクションとともに観られることをオススメします。

「青いドレスの女」に会いに行く

2007-11-19 | Henri Matisse 特集
芸術の秋ということで、先日はわざわざ新幹線に乗ってまで篠原有司男を見てきましたが、今度は生涯一マティスファンとしてフィラデルフィアから来日中の「青いドレスの女」に一目会いたくて上野に行ってきました。

憎たらしいほど完璧な彼女は、二年前モスクワからやって来た「金魚」と同じあの場所に架かっていました。個人的には五年ぶりの再会。展示された環境が違うせいか、フィラデルフィアで見たときの記憶と随分印象が違いました。心なしかサイズが大きくなったようにすら感じたのはなぜだろうなぜかしら。上野の都美術館の、陽の射さない暗い部屋より、フィラデルフィア美術館の明るく白い壁に架けられている方が、やはりこの絵は映えるように思えます。鑑賞者に対して、枠にはまった固苦しい鑑賞態度を強制せず、フラットな関係を保つ環境が、この絵に限っては必要なのかもしれません。同時代の他の絵に比べると現代性が際立っているように思えました。

前にも指摘したと思いますが、この絵においても黒が効果的に使われています。画面に色彩が溢れているせいで気にならないかもしれませんが、黒く塗られた面積は一割以上あるかもしれません。この黒が、派手で落ち着きのない色彩群を制御し、画面を引き締めているように思えます。

それから面白いのが、女性の顔や壁面の絵に線描を用いている以外は、色面の境界の色の塗られていない部分やパレットナイフで削られて現れた素地が輪郭線を代用していることです。マティスは、この方法を用いることで、線で下書きした上に色を塗り重ねていく古典的描出法から自らを解放したわけですが、それは同時に、描き直しが許されない緊張の中に身を置いたことでもありました。妥協することなく何度も習作を重ねることで、このように完璧なバランスを持ち合わせた作品をものにしたわけです。

マティスの「金魚」 これで全部? ~金魚をめぐる旅 その14~

2006-12-16 | Henri Matisse 特集
ここまでほぼ一年、マティスの描いた「金魚」を中心に、脱線しながらも「旅」を続けてきました。当初8点しかない。と思いこんでいた油絵のうち、以下の5点は既に紹介しました。参考までに題名の前にマティスが絵を描いた順番を①、②、③と示しました。


「金魚と彫刻」 1912年 ニューヨーク近代美術館


「金魚」 1912年 プーシキン美術館


「テラスのゾラ」 1912年 プーシキン美術館


「アラブのカフェ」 1913年 エルミタージュ美術館


「金魚とパレット」 1914~1915年 ニューヨーク近代美術館



あとの3枚が、どんな絵か?
というと、まず1912年に描かれた②のニューヨーク近代美術館所蔵作品と同時期に、パリ郊外のイシー・レ・ムリノーのアトリエで描かれた同じモチーフの絵が二枚。三枚のうち最初に描かれたのが、コペンハーゲンにあるもので、この絵はポンピドゥーセンターにおける大回顧展に出展されていたので図録をパチリ。コペンハーゲン国立美術館というと、「緑の筋のあるマティス夫人の肖像」を所有していることで有名です。


①「金魚」 1912年 コペンハーゲン国立美術館

二枚目に描かれたのが、②のニューヨーク近代美術館のもので、三枚目がバーンズ財団所有。この絵は「バーンズ・コレクション展」で日本にも来ています。コレクションゆえに画集ではあまりお目にかかれないのが残念ですが、マティス最重要作の一点だと思います。


③「金魚のいる室内」 1912年 バーンズ・コレクション

そして、⑧のニューヨーク近代美術館のもう一枚と同時期に、サン・ミッシェル河岸のアトリエに移った後に描かれた、パリ・ポンピドゥーセンター所蔵の一点。2年前日本で開催された「マティス展」にも出展されていました。こんなに沢山描かれた「金魚」の中で唯一フランスに留まった作品でもあります。


⑦「金魚鉢のある室内」 1914年 ポンピドゥーセンター



これらのほかに、ニース時代に描かれた同じ構図の2点、さらにメトロポリタン美術館所蔵の絵が見つかり、計11点になりました。


「水槽の前の女」 1921年 バーンズ・コレクション


「水槽の前の女」 1921~23年 The Art Institute of Chicago


「金魚鉢」 1921~22年 メトロポリタン美術館

つづく

マティスの「金魚」 11点目! ~金魚をめぐる旅 その13~

2006-12-15 | Henri Matisse 特集
マティスの「金魚」。さすがに10点で打ち止めかと思っていたら、画集では見たことのない「金魚」の絵がニューヨーク・メトロポリタン美術館に架けられていました。


「金魚鉢」(1921-22年)

画風からしてニース時代の作品のようで、金魚鉢も1921年に描かれた「水槽の前の女」2点と同じものです。構図はエルミタージュ美術館所蔵の大作「赤い食卓」↓にどこか似ています。



気になったので少し調べてみたのですが、2002年 京都市美術館、Bunkamura ザ・ミュージアムを巡回した「メトロポリタン美術館展」でも展示されていた絵でした。

マティスにはまだまだ見たことのない「金魚」があるのかもしれません。
かようにマティスの世界は深遠で、世界は広いのです。

つづく

「マティスを追いかけて」

2006-09-19 | Henri Matisse 特集
朽木ゆり子「フェルメール全点踏破の旅」とジェームズ・モーガン「マティスを追いかけて」という本を二冊買ってきて読み始めました。

どちらも画家の画業・足跡を辿るという内容なのですが、フェルメールの方は、現存する真作が僅か三十数枚しかなく、これらが展示されている欧米の美術館をひとつずつ見て回るという旅。

マティスの方は作品も多いので全部見て回るのは到底無理だろうけど、作者が凄いのは著作業の成功で手にした富も家を捨て去り、画家の人生を追体験する旅に出発するところです。旅行先では絵を習ったり、マティスの描いた風景や室内を描いたりして、その旅は一年間に及びます。

見るだけなら、フェルメールは2000年の春に大阪市立近代美術館に5作品がやってきたように、日本の美術館にもちょくちょく来ているので、気を長くして日本で待ち構えているのも手だけど、マティスの人生追体験となると、一般人には難しいです。マティスファンとしては羨ましい。けど、できそうにない。そういう自分がちょっと悔しいです。

TINTIN と マティス

2006-08-28 | Henri Matisse 特集
ベルギー漫画センター Centre Belge de la Bande Dessinee」の併設の漫画専門店で見つけたロイ・リキテンシュタインの絵葉書。なんと TINTIN とマティスの「ダンス」が描かれているではないですか。リキテンシュタインが「ダンス」をモチーフにした絵を描いていることは前にご紹介しましたが、TINTIN までが描き込まれた絵があったとは知りませんでした。Tomotubby お気に入りのコラボ実現です。


「Tintin Reading」(1995)
背後のドアに何者かが忍び寄り、ナイフを投げているのもご愛嬌です。

「でぶ」のダンス

2006-02-11 | Henri Matisse 特集
今回も旅行から脱線して、懲りずに「でぶ」の話題です。

Ken Weissblum という人の撮った次のような写真がありますが、モデルは、プロポーションの整った女性であるため、「でぶ専」でない男性が見たら(女性でも)ちょっと「どきっ」とするのではないかと思います。それこそがエロスなのでしょう。



では、Leonard Nimoy という人の撮った次の写真はどうでしょう。最近入り浸り気味の「Weekly Teinou 蜂 Woman」という有名サイト(管理人は女性です。念のため。息子さんのブログもあります)で見つけた写真で、実はこれを載せたかっただけなのです。Tomotubby には、巨大乳児の微笑ましいお遊戯に見えてしまいます。



写真の元ネタと思われる Matisse の「ダンス」二種も一緒に載せてみました。この記事は、こう見えてもマティス特集の一環なのです。


Dance(Ⅰ) 1909 The Museum of Modern Art, New York


Dance(Ⅱ) 1909-10 The Hermitage Museum, St. Petersburg

つづく(次回も「ダンス」にこだわります)

なぜか一匹少ない ~金魚をめぐる旅 その9~

2006-01-19 | Henri Matisse 特集
今回はポップ・アート。ロイ・リキテンシュタインの絵です。


リキテンシュタイン「金魚と静物」1972年

この70年代のリキテンシュタインの絵が、大阪・国立国際美術館で1月11日より開催中の「プーシキン美術館展」に展示されているマティスの「金魚」を題材にしているのは一目瞭然。でもよく見ると、マティスの絵に四匹いた金魚は、前にレモンを配したためか、一匹減って三匹になっています。三匹のうち二匹はマティスの絵と同じ位置に描かれ表情までそのままです。









マティス「金魚」

丸テーブルを中心に据えてわざと遠近感をなくしたマティスの絵とは違い、リキテンシュタインは、原色のレモン、水槽、観葉植物を前後に配して、角テーブルと壁は線で区切り、無地の室内を描いています。マティスは「赤いアトリエ」を描いたときに、赤を塗らないで線状に下地をみせることでテーブルと壁を区切ってみせていますが、ちょうどこのやり方の逆といってもいいでしょう。


マティス「赤いアトリエ」

巨大な「赤いアトリエ」は、50年代に活躍した抽象表現主義、中でもマーク・ロスコやバーネット・ニューマンら、フィールド・ペンティングの画家たちに影響を与えたといいます。


マーク・ロスコの作品 二種

リキテンシュタインには、他にもマティスの作品をモチーフにした絵がたくさんあります。例えば「ダンス」をモチーフにした↓のような絵もあります。



つづく

ニース時代の「金魚」をもう一枚発見 ~金魚をめぐる旅 その8~

2005-12-26 | Henri Matisse 特集
モルディブの切手に載せられていたアンリ・マティスのニース時代の一枚「水槽の前の女」(1921~1923)の所在について調べていたら、バーンズ・コレクションの中に、この題名の絵があることを発見しました。製作年は1921年なので、これに間違いない。と思ったのですが、

絵の写真↓を見て唖然。背景は違えども、机、水槽、女性と、同じモチーフをほぼ同じ位置関係に配置して、連作されたまったく別の一枚でした。


「水槽の前の女」1921年

水槽の中で泳ぐ金魚は全く赤くなく、フランス語でいう Poissons Rouge ではなく、まさに金色、英語の goldfish になっています。しかし、机の上の植物か海産物のように見えるものは、いったい何なんでしょう?

切手に載せられていた方の所在も掴むことができました。 The Art Institute of Chicago が1999年に手に入れていました。切手では天地がトリミングされているうえに、色も実物とはかなり違うみたいです。机の下に僅かに見える縦縞は何なんでしょうか?


「水槽の前の女」1921~23年

つづく