公共事業拡大へ回帰 自公バラマキ再現、財政悪化で財政破綻

2012-12-14 20:24:52 | 2012選挙

公共事業の実質GDP押し上げ効果(乗数効果)の最新の数値は1・07と、20年前(1・33)を下回る

 衆院選で公共事業をめぐり激論が展開されている。東日本大震災を教訓に自民党や公明党が防災対策を理由に大規模投資を主張する一方、民主党などは「バラマキ回帰」と批判する。公示直前に起きた中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故でも分かるように、60~70年代に整備されたインフラの老朽化対策は急務。ただ、単なる公共事業復活に陥れば、財政悪化を加速させる恐れがある。【宇田川恵、工藤昭久】

 「社会インフラの維持は命に関わる問題だ」。4日に開いた道路や橋の老朽化対策を検討する国土交通省の有識者会議。笹子トンネル事故も引き合いに対策充実を訴える声が響いた。国道や市町村道など国や地方が管理する道路の総延長は地球約31周分の126万キロ。橋やトンネルなどの老朽化対策を怠れば、重大な事故につながりかねず、修繕や更新(造り直し)は待ったなしの課題。

 自民党の安倍晋三総裁は5日の街頭演説で「耐用年数が過ぎたトンネルや橋の保全は国民の命を守るために当然」と強調。自民党は10年間で200兆円を防災分野に投じる「国土強靱(きょうじん)化計画」を掲げる。公明党も10年間で100兆円を投資する「防災・減災ニューディール」を打ち出す。

 両党が公共事業拡大に力を入れる背景には、景気後退入りが濃厚となる中、雇用に即効性がある政策を訴え、地方票などを取り込みたい思惑もうかがえる。国の公共事業費は98年度に約15兆円だったが、小泉政権時代に大幅に圧縮。「コンクリートから人へ」が旗印の民主党政権も見直しを進めた結果、12年度当初予算では4・6兆円まで縮小した。

 しかし、笹子トンネル事故を受け、永田町では「老朽インフラの維持管理や更新の必要性が再認識されれば、公共事業縮小の流れは変わる」との見方が浮上。建設業界は「公共事業の重要性への国民の理解が広がってほしい」(大手ゼネコン首脳)と期待する。

 自公の主張に対し、民主党代表の野田佳彦首相は「バラマキ回帰だ」と批判。みんなの党の渡辺喜美代表も「(自公は)建設業界を向いている」と皮肉るが、老朽化対策にはお金がかかるのも事実。実際、10年度の国・地方合わせた公共事業関連費では、老朽化対策分(維持管理3・3兆円と更新0・9兆円)が新設分(3・6兆円)を上回る。国交省は、老朽化インフラをすべて更新するには、今後50年間で190兆円が必要と試算する。

 ただ、12年度末の国の借金は、国内総生産(GDP)のほぼ倍の1000兆円を超える見通し。高齢化で社会保障費が膨らむ中、借金で公共事業を拡大すれば、財政不安が深まる。自公は景気刺激も期待するが、公共事業の実質GDP押し上げ効果(乗数効果)の最新の数値は1・07と、20年前(1・33)を下回る。経済の成熟化で公共事業の経済波及効果は小さくなっている。国交省の老朽化対策会議でも委員から「安全第一だが、すべてのインフラを更新する余裕はない。優先順位の議論が必要だ」との指摘が出ている。



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