総選挙で民主党が惨敗した。その急激な没落は、政権交代可能な選挙制度や二大政党制のあり方を揺るがす。3年前、高支持率で誕生した政権はなぜ、坂道を転げ落ちたのか。県内の当事者たちに、有権者への懺悔(ざん・げ)の言葉を求めた。1人目は、宮城4区から立候補して落選した前職の石山敬貴さん(43)。
――民主が駄目になったきっかけは何か。
「菅直人首相だ。マニフェストになかった消費増税も環太平洋経済連携協定(TPP)も、知識不足のまま言い出した」
――政権を取った政党は野党時代とは違うことをしなければならない宿命があるのでは。
「マニフェストを実行できなかったことを色々言われるが、財源がないからではなく、やる気がなかったから。党の上の人は不勉強。中長期的ビジョンを持たず、政策を言葉でしか知らない。特に松下政経塾出の人は言葉だけ。だから、野党のばらまき批判に『ごめんなさい』となった」
――消費増税関連法案にもTPPにも反対。今回、惨敗した最大要因は、あなたも関係した党内政争だ。
「執行部は政争になるような消費増税とTPPを打ち出し、党内の批判を抑えて推進するのを『格好いい』と考えた。そのゴタゴタが有権者に批判された」
――執行部は反対派を切る純化路線を採った。
「党内でコミュニケーションがゼロ。根回しが下手。消費増税でも小沢(一郎)さんに電話して『落としどころはどこか』と聞けば良かった。増税を決める時も、学級会みたいにワイワイやって、最後は『政調会長に一任』だった」
――増税法案に県内の民主議員で一人反対した。政党人としておかしい。
「全く悔いはない。何回でも同じ行動をとる」
――今回落選。有権者の反応はどうだったか。
「全くの無視。2009年の政権交代直後は、地元で演説中によく怒られた。そのときは嫌だったが、期待の裏返しだったと思う。ただ、今回も実績を理解してくれた人は本気で応援してくれた。県農協政治連盟から推薦を受けて、『仕事が評価された』と、妻とともに泣けてきた」
――05年の総選挙で、民主の公募に応じて立候補。どこに引かれたのか。
「『人』を重視した点。政権獲得後、高校授業料を無償化したように、子どもを大切にした。地方分権だって進めた」
――今はどうか。
「旧民主は、保守の自民に対抗するリベラルな都市重視の政党だった。それが小泉純一郎首相が現れて対立軸にならなくなった。(旧自由の)小沢さんが民主に加わり、地域を守る政党になって、新たな対立構図になったが、菅首相になって、元の民主に戻った」
――民主は政権交代のためだけの寄せ集め政党だったのでは。
「09年に『選挙で政権交代が可能』の事実を国民が認識した。これで歴史的意義の80%は終わった」
――党の意向に沿わない政策を選挙で訴えるのは、政党を選ぶ小選挙区制では有権者への信義則違反だ。
「覚悟の上でやったから仕方がない。ただ、言わせて欲しい。これほど強固な党議拘束は日本くらいにしかない。これなら、国会議員を半減どころか、執行部数人だけで間に合う。TPPのような重要問題は国民投票を活用していい。問題意識を共有できる」
――地域を必死で回った。一方で相手の自民候補は身内からも「地元にいない」と批判を浴びていた。選挙制度に疑問を感じるか。敗退はつらくないか。
「がんばった議員が評価されない。風に左右されれば政治家は育たない。初出馬の05年は知名度がなくても7万9千票。議員になって3年3カ月、ぶっ倒れながら戦い抜いた今回が5万4千。不思議ですねぇー」
――民主は再生できるか。
「そう願っている。ただ、今回、勝ち残ったのは、TPP賛成派ばかり」
――応援できないか。
「残った議員が納得するかの問題だが、路線は新自由主義的で都会派政党、小さな政治を売りにするといった内容で決まっているのではないか。やっていけばいい。それが明瞭になれば、応援できない。当然」(聞き手・島田博、蔵前勝久)
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