轟クルマ文化研究所

日本のどこかの片田舎、今日も所長の声が響いています。
「馬鹿モン!あれほど雑誌を鵜呑みにするなと言うとるじゃろ!」

スズキ・ハスラー

2014-03-21 18:21:44 | SUZUKI
助手 「スズキのハスラーですけど、モノ凄い勢いで売れてるみたいですね。」

所長 「そうらしいの。」

助手 「何でも計画台数が5,000台だったのを7,000台に増やして、さらに5月からは1万4,000台にするとか言ってますね。こんなに増産するのってここんトコなかったんじゃないですかね。」

所長 「単に台数が多いのは他にもあるじゃろ、Nボックスとか。ただメーカーの予想を大きく上回ったってコトじゃな。言い換えれば予測の立て方を誤ったってコトじゃ。ま、メーカーにすれば嬉しい誤算じゃろうけどな。」

助手 「これまでも軽のクロスオーバーってありましたけど、あんまり売れてませんでしたよね。」

所長 「じゃな。スズキのKeiはそこそこ売れとったようじゃけど、ハスラーの売れゆきには遠く及ばんじゃろ。」

助手 「ホンダのZやあと毛色は違いますがダイハツのネイキッドなんかは、すぐに販売が終わってしまいましたよね。」

所長 「三菱のekアクティブに至っては2年ちょっとじゃったみたいじゃな。」

助手 「ありましたね。それらのクルマと比べてハスラーの売れっぷりはどこが違うんですか。」

所長 「そりゃ、商品企画の勝利じゃろ。」

助手 「どういうコトですか。」

所長 「正直、クルマ自体は別にどうってコトないんじゃが、見せ方って言うか演出の上手さじゃろうな。」

助手 「演出ですか。」

所長 「そうじゃ。ハスラーってワゴンRをベースに最低地上高を少し上げて、SUVっぽい装飾を施したクルマじゃろ。」

助手 「ですね。」

所長 「さっきの車種とかクロスオーバーを謳うクルマってこれまでもあったし、軽以外のジャンルではクロスオーバーはすでに実績があるワケじゃ。どこのメーカーも軽のクロスオーバーに着手はしとるはずじゃ。」

助手 「それはそうでしょうね。」

所長 「じゃが軽の規格でクロスオーバーっぽいクルマをつくろうとしても、なかなか雰囲気を出せんかったんじゃろうな。スズキの上手いところは色使いなんじゃないかのぉ。」

助手 「色使いですか。」

所長 「そうじゃ。今の主流のクロスオーバーって高級感を出そうとして結構暗い色合いが多いんじゃが、スズキはオレンジやピンク、ブルーなんかのポップなカラーにホワイトルーフを組み合わせてきたじゃろ。」

助手 「確かにあれは目立ちますよね。」

所長 「で、バンパーやフェンダーに黒やグレーを使って、クロスオーバーよりも本格的なクロカン風に仕立てたんじゃ。」

助手 「言われてみれば今の主流の乗用車風のクロスオーバーよりもSUVに近いですよね。」

所長 「仕上げに丸目を基調としたライトでレトロっぽくしたんじゃ。こういう演出をさせればスズキは強いのぉ。ほれっ、ラパンとか未だに他にライバルらしきクルマが見当たらなんじゃろ。」

助手 「言えてますね。ミラココアなんかがありますけど、正直、ライバルと言うには世界観が違いすぎますね。スズキは女性に支持されるツボを押さえてるって感じがしますよね。」

所長 「評論家の記事やクルマ好きの意見、近所の奥様方の評判も上々じゃし、老若男女問わずこのクルマを気に入らんという話を聞いたコトがないわ。」

助手 「でもトヨタのFJクルーザーのパクリとか言われてますけど。」

所長 「ああ、確かに影響は受けとるじゃろうな。」

助手 「影響っていうか、さっき所長が言ったポップなカラーリング、ホワイトルーフ、丸目のヘッドライトみんなFJクルーザーが元ネタでしょ。」

所長 「うーん、確かにそうなんじゃがパクリって言うのとは違うと思うんじゃ。」

助手 「いや、ボクもパクリとは言ってませんよ。そう言われてるって話ですよ。どっちかと言えばオマージュみたいなモンじゃないですか。」

所長 「例えばそれぞれ切り離して見てみるとじゃな、ポップなカラーリングなんてコンパクトカーならなんでもやっとるコトじゃし、ホワイトルーフにしてもここ最近ブームになっとるし、火付け役はラパンじゃろ。ま、元を正せばミニなんかになるんじゃろうけどな。で、丸目のヘッドライトも昔のクルマはみんなそうじゃったじゃろ。じゃからそれらを使ってもなんら問題ないと思うんじゃ。」

助手 「まぁ、それはそうなんですけど、その三つをSUVに組み合わせるとFJクルーザーっぽいクルマになるじゃないですか。やっぱりパクリって言われても仕方がないと思いますけどね。」

所長 「そんなコト言い出したら、世の中のクルマみんな何かのパクリになってしまうんじゃないかのぉ。例えば白いボディカラーのセダンで角目のライトを使ってるとかじゃったら無数に当てはまるクルマが出てくるしの。」

助手 「それは、そうですね。」

所長 「オデッセイが出たあと三菱からシャリオ・グランディスが出て散々パクリとか言われとったんじゃが、そのあとプレサージュやガイア出て、ひとつのクラスとして認識されたら誰も何も言わんようになったじゃろ。それとおんなじなんじゃないかのぉ。多分今後ルーフを塗り分けたクロスオーバーが他社から出てくるじゃろう、そうなると誰も気にせんようになると思うんじゃ。」

助手 「かもしれませんね。」

所長 「ただ、ルーフの塗り分をリアピラーのトコだけ少し下げとるのと、丸目ライトの横にウインカーが付いとるのは、ちとやり過ぎじゃとは思うがの。」

助手 「突っ込んでくれって言ってるような感じですよね。」

所長 「ま、各社このカテゴリーを虎視眈々と狙っとるじゃろうけど、最初にスズキにこれだけのクルマを出されたら、やり難いじゃろうな。」

助手 「ですよねぇ。さっき所長が言ってたようにボディサイズが決まってる軽でクロスオーバーを表現するのって、やり方が似通ってきそうですしね。」

所長 「今度のハスラーもボディの格好はムーヴ・コンテとなんら変わらんし、そのボディを使ってどれだけ演出出来るかが、キモなんじゃろうな。」

助手 「ですね。」

所長 「で、他のメーカーは走破性とか、より本格的な性能を売りにしてくるんじゃろ。誰もそんなの望んどらんのに。」

助手 「でもハスラーも下り坂で速度を制限する機能や、雪道なんかの発進をスムーズにするグリップコントロールが付いてますよ。」

所長 「ま、あるに越したコトはないんじゃろうけど、それが付いとるからハスラーを選ぶモンってどれぐらい居るんじゃ。ほとんどのモンは見た目で選らんどるじゃろ。案外FFの比率も高いんじゃないかのぉ。」

助手 「かもしれませんね。HR-VのFFに乗ってたモノとしてはよぉくわかります。」

所長 「じゃから燃費がいいとか、自動ブレーキが付いとるとかの方がよっぽど有難がられるんじゃろ。」

助手 「ですね。ところで出だしは絶好調のハスラーですけど、このまま売れ続けると思いますか。」

所長 「うーん、どうじゃろうな。しばらくは受注残を掃くのに時間が掛かるじゃろうし、その間にまだまだ受注が増えるじゃろうな。じゃがどっちかって言うと色モノの部類じゃろうし、ワゴンRやタントのように軽のスタンダードになるとは思えんの。」

助手 「ですね。ボクもハスラーいいと思いますけど、街中ハスラーだらけっていうのは想像出来ないですね。」

所長 「気になるのは、ワゴンRへの影響じゃな。今までになかった市場じゃし、他のクルマの市場から流れてくるコトになるんじゃが、その場合、一番割りを喰うのがワゴンRなんじゃないかのぉ。」

助手 「それはそうでしょうね。同じメーカーのクルマですし、既存客の多さも群を抜いてますしね。」

所長 「仮にハスラーが1、2年でピークが去り、販売が下降してきたとするじゃろ。そうなったときワゴンRの販売が元に戻せるのかが気掛かりなんじゃ。」

助手 「また先の話ですね。」

所長 「それでなくてもワゴンRの販売が、他社の強力なクルマの出現で劣勢になっとるじゃろ。これで身内のハスラーに喰われでもしたら、絶対王者のイメージが過去のモノになってしまう気がするんじゃ。」

助手 「イメージって怖いですよね。一度悪いイメージがついてしまうと挽回するのは大変ですからね。」

所長 「じゃろ。もちろんハスラーがワゴンRの代わりを果たせれば問題ないんじゃろうけど、さっきも言うた通り、軽のスタンダードにはなり得んと思うんじゃ。」

助手 「うーん、難しくてボクにはいい答えが思い浮かびませんね。」

所長 「もちろんじゃ。そんな簡単にいい解決策が見つかるんなら、今ごろどっかのメーカーの重役にでもなっとるわ。」

助手 「確かに。あとハスラーってマニュアルの設定があるのが嬉しいですよね。」

所長 「それなんじゃが、ハスラーって廉価グレード以外に自動ブレーキとかほとんどの安全装備が標準で付くみたいなんじゃ。」

助手 「そうらしいですね。ま、その分価格は高めですけどね。」

所長 「それを考えるとじゃな、マニュアルを選んで運転の楽しさと引き換えに、それらの装備を放棄するのって、結構勇気がいるコトじゃと思えての。」

助手 「勇気ですか。」

所長 「そうじゃ。ワシがマニュアルを買ったとするじゃろ。で、不幸にも事故ったとする。そうなったときに自動ブレーキが付いとったら防げたとか、いらんコトを考えて後悔してしまうと思うんじゃ。結局運転の楽しさって自分の欲望だけのモンじゃろ。そのために自動ブレーキが付かんマニュアルを選ぶのって、ただの我がままに過ぎんのじゃないかのぉ。」

助手 「うーん、それも難しい問題ですね。」

所長 「こんなのがなかった時代なら平気で買えたんじゃがな。」

助手 「・・・・。」


参考資料
スズキ・ハスラー(スズキ株式会社)
トヨタFJクルーザー(轟クルマ文化研究所)
スズキ・アルトラパン(轟クルマ文化研究所)
ダイハツ・ムーヴコンテ(轟クルマ文化研究所)

Yahoo!グループ 轟クルマ文化研究所

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4 コメント

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Unknown (ひでゆき)
2014-03-21 19:44:45
 初売りセールの時に、お店で見ました。

 が、オレンジ&白のクルマの
テールゲートを上げて、塗り分けたトコを見ると
「オレンジが透けてる。(涙)」
比較的見える場所なので、ちょっと残念でした。

 「MTモデル」があることは良かったが
「MT+ターボ」モデルが無いんだよなぁ。(涙)

 廉価グレードの「A」ですが、ど~考えても
「競技ベース車両」にしか思えません。(笑)

 今は売れてるけど、メーカーも長くヒットするとは考えていないんじゃないかな。
その頃には、ワゴンRもモデルチェンジしているでしょうし。
返信する
Unknown (宇垂)
2014-03-24 20:51:17
ひでゆきさん

>テールゲートを上げて、塗り分けたトコを見ると
>「オレンジが透けてる。(涙)」
>比較的見える場所なので、ちょっと残念でした。

あらあら・・・。

>「MTモデル」があることは良かったが
>「MT+ターボ」モデルが無いんだよなぁ。(涙)

MTモデルしか運転できないご高齢向けのモデルなんでしょうね。

> 廉価グレードの「A」ですが、ど~考えても
>「競技ベース車両」にしか思えません。(笑)

競技ベース(笑)面白そうですね。ま、価格を安く見せるためなんでしょうね。

> 今は売れてるけど、メーカーも長くヒットするとは考えていないんじゃないかな。
>その頃には、ワゴンRもモデルチェンジしているでしょうし。

次期ワゴンRで王者に復帰できるんならいいんですが・・・。
返信する
Unknown (いにゅ)
2014-03-25 12:56:13
スズキがこの方向で冒険ができたのは、軽クロカンの王道としてジムニーがあるからではないでしょうか?

「クロスオーバーが欲しい方はハスラーを、本格的なクロカン車が欲しい方はジムニーをどうぞ」と営業できるるわけですから。
返信する
Unknown (宇垂)
2014-03-25 19:43:25
いにゅさん

>スズキがこの方向で冒険ができたのは、軽クロカンの王道としてジムニーがあるからではないでしょうか?

>「クロスオーバーが欲しい方はハスラーを、本格的なクロカン車が欲しい方はジムニーをどうぞ」と営業できるるわけですから。

冒険をしているつもりはないんじゃないでしょうか。
多分、企画段階から手応えは感じていたでしょうから。
ま、実際には期待以上の売れっぷりだったワケですが。
ただ、「ジムニーをつくっているスズキ」っていうイメージが、ハスラー人気の後押しをしたっていうのはあるでしょうけど。
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