スズキ・ソリオ

助手　「所長、ずいぶんとご無沙汰でしたけど、お元気でしたか。」

所長　「うーん、そうじゃな。身体はどっこも悪くないんじゃが、なかなか気分がすっきりせんの。」

助手　「まぁ、今の時代、晴ればれしてる人の方が珍しい気がしますけどね。」

所長　「言えとるの。」

助手　「で、久しぶりなんで取り上げたいクルマもたくさんあるんですけど、今回はスズキのソリオでお願いします。」

所長　「いいんじゃないか。」

助手　「ソリオと言えばやっぱりルーミーの話しを出さないワケにはいかないでしょ。」

所長　「まぁ、そうじゃろうな。」

助手　「ソリオをまんまパクって大ヒットですからね。しかも性能的にはソリオに劣ってるというのに。」

所長　「まぁ、それだけソリオの方向性が正しかったってコトじゃけどな。」

助手　「そんな悠長なコトを言ってていいんですか。昨年ルーミーに統合されましたけど、ルーミー・タンクの台数を合わせれば、2017年が3位、18年が2位、19年が4位、20年が6位と、ここ4年の合計ではN-BOXに次いで2位なんですよ。3位、4位がタントとスペーシアなので軽が占める中に割って入ってる唯一の小型車なんですよ。」

所長　「ほぉ、それはなかなか興味深い結果じゃのぉ。」

助手　「だから、そんな呑気なコト言わないでくださいよ。スズキからしたら面目丸潰れなんじゃないですか。」

所長　「いや、N-BOXと、ルーミーにタンク、タントとスペーシアじゃろ。小型車と軽の違いはあるんじゃが、どれもスライドドアのハイトワゴンじゃろ。」

助手　「言われてみればそうですね。」

所長　「世の中、SUV一色のように言われとるが、日本ではまだまだこの手のクルマの方が支持されとるってことじゃろ。」

助手　「ですね。まぁライズやヤリスクロスなんかがよく売れてますから、そのうち割って入ってきそうですけどね。ってなんの話しをしてるんですか。ボクが言いたいのは、ソリオを真似たルーミーがこれだけ売れてるのをスズキはどう思ってるのかってコトですよ。」

所長　「そりゃ、スズキに聞いてみんとわからんわな。ま、自分たちのコンセプトに自信を持っとったじゃろうし、トヨタが売ればよく売れるのもわかっとったじゃろうな。ダイハツ版のトールだとソリオの方が売れとるワケじゃしな。じゃがここまで売れるとは予想しとらんかったんじゃないかのぉ。スズキに限らず当のトヨタもかもしれんが。」

助手　「そうかもしれませんけど、スズキとしては面白くないでしょ。自分たちが考えたクルマを真似たのが市場をかっさらっていったワケですし、ボクならはらわたが煮えくり返るところですよ。」

所長　「そうかのぉ。ワシは案外歓迎しとるような気がするんじゃが。」

助手　「どうして歓迎するんですか。意味がわかりませんよ。」

所長　「ルーミー・タンクが出てソリオの販売はどうなったんじゃ。売れんようになったのか。」

助手　「えっ・・・。えーっとですね。あ、落ちてませんね。というかむしろ売れ行きは良くなってますね。」

所長　「どういうコトじゃと思う。」

助手　「どういうコトでしょうね。さっぱりわかりません。」

所長　「相変わらず進歩のないヤツじゃの。つまりじゃな、市場が拡大したってコトじゃろうが。ソリオ単独だったころは、月に3,000台程度の市場だったのが、ルーミー・タンクが出たコトで1万5,000台から2万台規模にまで膨らんだっていうコトじゃ。」

助手　「5倍以上ってコトですか。」

所長　「そういうコトになるのぉ。それでじゃな、ソリオ単独だったころには選択肢に入れとらんかったモンが、ルーミー・タンクが出たコトで選択肢に入れるようになったってワケじゃ。当然、比較対象としてソリオが選ばれるコトになるじゃろうし、さっきお前が言ってたように動力性能、燃費性能、コストパフォーマンスで勝るソリオを選ぶモンもおるじゃろうな。」

助手　「単独で売るよりもライバルが居た方が分母の数が増えるってコトですか。それに伴って販売台数も伸びる。言われてみればそうですよね。」

所長　「じゃろ。ただいくら分母が増えようと選ばれんようなクルマじゃったら意味がないんじゃがな。」

助手　「それで今回のモデルチェンジで商品力を上げてきたってコトですね。」

所長　「うーん、商品力に関しては先代と比較してそんなに変わっとらんのじゃがな。」

助手　「どういうコトですか。」

所長　「時代に合わせて安全装備を充実させたのと、あとはサイズをちょこっといじってきたぐらいじゃな。」

助手　「じゃあ、ダメじゃないですか。」

所長　「ソリオって先代、先々代からほとんど変わっとらんのじゃ。それだけ初めっからお客の要望を満たしとったってコトなんじゃろうけど。」

助手　「じゃあ、いつまで経ってもトヨタにおいしいところを持っていかれたままじゃないですか。」

所長　「別にトヨタを気にせんでもいいんじゃないか。販売も年々伸びとるワケじゃし。」

助手　「そう言われればそうなんですけど。なんか釈然としないですね。」

所長　「それならスズキも負けじとOEMで拡販するとか。」

助手　「確か三菱でデリカD：2って名前で売ってましたよね、あんまり売れてませんけど。日産、マツダなんかとも商用車の付き合いがありますから可能かもしれませんけど、合わせてもたかがしれてるでしょ。」

所長　「やり方次第じゃと思うんじゃがな。」

助手　「どうやるんですか。」

所長　「例えばじゃけど、最近のSUVブームで日産ラシーンが復活すれば売れるって話しをよく見聞きするんじゃ。」

助手　「ああ、あります、あります。確かにラシーンは今の時代の方が合ってる気がしますよね。」

所長　「ただ、すっかりグローバル企業になった今の日産が、ラシーンの後継なんて出すとは考えられんじゃろ。」

助手　「言えてますね。」

所長　「そこでじゃな、スズキがソリオをベースにしてラシーンをつくれば面白いと思うんじゃ。」

助手　「何を言ってるんですか。できるワケないでしょ。」

所長　「そうかのぉ。BMWがスープラをつくる時代じゃぞ。スズキがラシーンをつくって何が悪いんじゃ。」

助手　「スープラはトヨタがBMWに依頼して、と言うか協業してつくったクルマでしょ。スズキが勝手につくるのとワケが違いますよ。」

所長　「誰が勝手につくると言った。日産がスズキに依頼してOEMでつくるんじゃったら問題ないじゃろ。」

助手　「そういうコトですか。でもそれだったら日産自身でつくった方がいいでしょ。自動車メーカーなんですから。」

所長　「けど日産だったら適当なプラットフォームがないし、採算も取れんじゃろ。」

助手　「スズキだったら取れるというんですか。」

所長　「取れるかどうかはわからんが、案外いけそうな気がするんじゃがな。ソリオのプラットフォームでイグニスやクロスビーをつくっとるし、ラシーンに転用も可能じゃろ。」

助手　「サイズ的には近いかも、ですね。でもラシーンのころとはフォルムがかなり違ってる気がしますけど。」

所長　「まぁ、その辺りはデザイナーの腕の見せどころじゃと思うがな。で、日産とスズキの両店舗で販売すれば、トヨタとダイハツのトールとルーミー、ロッキーとライズのように、国内販売だけでも採算ラインに乗せれるんじゃないかのぉ。」

助手　「うーん。日産のモコはMRワゴンより売れてましたし、確かに面白いかもしれませんね。」

所長　「じゃろ。前から日産とスズキってクルマ同士の相性がいいと思ってたんじゃ。」

助手　「キューブとラパンとか近いモノがありますよね。」

所長　「先に言われてしもうたけど、上手くいけば次はキューブじゃ。」

助手　「キューブの方がいいんじゃないですか、ソリオベースならスライドドアのキューブもつくれますし、日産としてもラインナップ的にほしいと思うんじゃないですか。」

所長　「まぁ、実現は難しいじゃろうけど、やり方次第でまだまだやれるコトはあると思うんじゃ。今のトヨタ一強じゃと面白くないからの。」

助手　「ですね。」


参考資料
スズキ・ソリオ（スズキ株式会社）
スズキ・ソリオバンディット（スズキ株式会社）
スズキ・ソリオ（先代）（轟クルマ文化研究所）
スズキ・ソリオ（先々代）（轟クルマ文化研究所）
ダイハツ・トール（轟クルマ文化研究所）