飛魚的日乗 (現代詩雑感)

詩のことを中心に書いていきます。

夢のフーガ

2017-01-27 | 

真夜中のピアノ庫のなかを
ことばに吊るされて移動する
喉がいきなり遥か遠くの海に繋がる
窶れたぶらぶらの脚が海までの細い道を感じる
夢の隅でぼんやりとケルアックのことを考える
ハドソン川に無数の薔薇が静かに落ちている
宙づられたテラテラの禿げ頭の僕に並んで
真実はこれにありと叫ぶ影がある
人を愛することなんて単純で簡単だと
ボソボソと呟く影がある
それはたぶん僕の守護天使だと言っている奴だ

夢のなかでは薄くしか息ができない
腕の半分が闇に侵されて消えている
肉の焦げたような匂いがする
何本もの枯れ枝が突き出た額だ
小刻みに肩を揺すりながら歌おうとするが
暗い歌の底に声が引っかかってくぐもる
急激な悪寒が来る
貧しい奴は貧しくしか死ねないという声がする
解っているはずなのに
それでも光が宙を走しるのを見る
みんな見えると思っている
真夜中のピアノの庫の扉が閉まる音がする
僕を吊るしていることばが消えかけている
だんだんに
たぶんニ短調で夢のなかの首が絞まる

※夜中に、「天井桟敷の人々」の映像を観ながら、来たことばを造形してみました。


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